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はったおされて痛気持ちいいけどやっぱり痛い

そういえば、最近映画観てないなあ。ちょっとさみしいかも。
と言う訳で、何も考えずにふらっと行くことにしました。
『セッション』 公式サイト



◎海外版予告編です

2月ころ、アカデミー賞関係の報道で話題になっていたような記憶。
なんだか怖そうな映画だなあ、やめといたほうがいいかなあ、
と思いつつも、おずおずと。

以下ネタバレあるので畳みます。

ただ、その前に、
迷ってはいるものの、背中押してほしい系の方にはおすすめします。
気がすすまない方は、自重するのもたいせつな選択肢。

とにかく異常なパワーのある作品なので、
ひとによって(あるいはタイミングによって)
当たりにも、ダメージにもなると思う。
なるたけ評判を聞かずに見るのが吉ではないかという印象。

結構話題の作品なのかな。
じっさい私が観た回も満員でした。





4/17公開。私は日曜日(4/26)に鑑賞。
公開したての作品だということすらわかっておらず、
ほぼ何も知らない状態で観ることができました。
これはとても幸運だったと思います。

と言う訳なので(畳んではいるけれど)、
なるたけなるたけネタバレの内容は控えめにしてみようと思います。

何しろ2か月前に(アカデミー賞関連の報道で)英語版予告をちらっと見ただけ。
しかもありがたいことに(わたしの英語力では)よくわかりませんでした。
なにやらハードな音楽映画らしい、というくらいかな。
いくぶん睡眠不足+日々の疲労もたまっているなか、
よく知らないジャンルの重たい作品だったら、寝ちゃうかなあ、
しんどいかなあと思いながらの鑑賞。

いやすごかったです。

すごくえぐくて、素晴らしかった。感動はしてません。たぶん。
でもぎりぎりと刻み込まれた何かがある。

たしかに、教師と生徒のガチンコぶつかりあいの映画なのですが、
『師弟モノ・カタルシス映画』『感動作』
ではないと、思います。
鑑賞してからネット検索をしたのですが、
そういう評判のようで、少々とまどいました。

主人公も教師も、かなり問題がある人間です。
そのあたりが、気安く干渉させてくれないというか、
感情移入を妨げています、そこがとてもいい。

めっちゃひどい。めっちゃひどい人間が、つくりだす音のうつくしさ。
そしてその、唯一の美点さえも、復讐の道具にするひとたち。

ぎりぎりとせめぎ合う、師と弟子。
そこに愛情があるようには思えない。
憎しみしかないのかもしれない。
それでも、認め合うことはできる。つうじることはできる。
その相手としか、たどりつけない場所がある。

『ヒカルの碁』の神の一手、あるいは
『ピンポン』(実写映画版)のクライマックス
(対ドラゴン(中村獅童)戦)を連想する。
・・・・・・こう書くといかにも爽快なかんじがするのですが
まったくそんなことないのがすごいと思います。
どこかで認め合う関係にはなっただろうけど、
憎しみは消えていないだろう。そこがすごくいい。
すごくリアル。

たとえば私はフィギュアスケートファンですが、
選手の人格に興味はあっても
(だって面白い人多すぎる、いろんな意味で)
それを評価に混ぜ込まないように、いつも気をつけています。
(小塚くんとさとこちゃんファンに言われても説得力ないよね、
と、友人に言われてますが(笑)あくまで演技スタイルが好き)
ただこれは、もともとモータースポーツファン(motoGP)なので
免疫があるのかもしれません。
なにしろモータスポーツと言えば
『一番速いやつがいちばん偉い! はい王様! 以上!! 』
の世界だもんね。
しかもツールの性能にも左右されるというあたりの要素もある。
一番速いやつがいちばんいいマシンを手に入れる。
それでは(一番ではない)自分は何を武器にして、
勝負してゆくのか?? というおもしろさ。

監督は28才、本作が長編デビュー作で、
自らの実体験を基にしたということです。
その作品がいきなりアカデミー賞作品賞にノミネートされた、
ということに、一瞬驚きますが、
実に実に若々しい作品でもあるので、納得できてしまいます。

全体の整合性とか、物語のトーンとかを、シンバルよろしくぶん投げて
絞り込んでるあたりの近視眼な雄叫びは、じつにじつに若者らしい。
そのあたりの乱調ぶりが、不思議な効果をあげています。良作。
ひとによっては後味が悪いでしょうけど。

早熟の天才映画作家と言えばこのかたがいましたね。



19歳で手掛けた初監督作品がカンヌで上映されたグザヴィエ・ドラン。
疾走感と先鋭化された表現がなんとも見事。
(多少)なげっぱなしでも構わない、これを見ろ!! 
と、鼻先にたたきつけられることの快感。

若々しさ、痛々しさ、
鋭利な刃物でつけられた、ぱっくりあいた深い傷が
みるみる回復していくのを早回しで観るような感覚。
若者をこんなふうにみることができるなんて、年をとるのも悪くない。


※本作は
「無名の才能を見出した師が、理不尽ながら唯一無二の方法で
弟子を開花させた」
物語ではないと思います。
宗像コーチ>岡ひろみ、あるいは、月影先生>マヤ的に
『輝きを見出した』のではないと思う。
その場にいたメンバーの中で、同じようにしごいて扱って、
ついてこれる人間が主人公だけだったということではないかと。
それこそが選ばれた証ということなのかどうか。
とにかく、自分の中のなにかに照らし合わせて、
闇雲に語りたくなる作品だと思います。
それこそ作品の持つ力なのだろうなとも。

※「音楽(ジャズ)をカリカチュアライズした問題作」
「根性論のスパルタを賛美している」
という批判もあるようです。それも納得。
ただ、それを根拠にこの作品の魅力が損なわれるとは思いません。

by chico_book | 2015-04-28 02:01 | 映画 | Comments(0)

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