濃厚な季節にがっつりまんが

ようやくでました『あかぼし俳句帖』!

あかぼし俳句帖 1 (ビッグコミックス)

有間 しのぶ / 小学館


まとめて読むことのできるありがたさうれしさ。

有間しのぶさんは、独特の筆致で、
ひととひとの間を丁寧に描く作家さんです。
軽みと、清潔なエロスと、ひりつくように乾いた熱情を、
これ以上ないほど鮮やかに見せてくれる作家さん。
独特の軽さと切りこみの深さ、切れ味の鮮やかさ、ほんとうにみごと。
(ただのファン)

モンキー・パトロール vol.1 (祥伝社コミック文庫 あ 3-1)

有間 しのぶ / 祥伝社



そんな有間さんが俳句をされているという。さもありなん。
短いフォーマットにあますことなく世界を落とし込んで見せる技は、
彼女の四コマまんがと地続きに思えます。隅々までクリアな情景が見えるよう。
そんな有間さんが『原作』とクレジットされる作品がこちら。

冴えない独身中年サラリーマン・明星啓吾(あかぼし・けいご)さんが、
ふとしたきっかけで、俳句と小料理屋で知り合った女性・スイさんに
魅かれ、興味を深めてゆく物語。
実はスイさんこと水村翠さんは、大御所ではないものの、
俳句雑誌に特集を組まれる程力のある俳人なのです。

適当に17文字ひねればいいんでしょ、と、
(かつて、宣伝部で名コピーをばんばん作っていた)
あかぼしさんが、スイさんと俳句の世界に少しずつ踏み込んでいきます。

面白かったです。
作画の方のことをよく存じ上げないし、
なにより有間さんの味のある絵とせりふ回しは不可分のあじわいだと
思っていたので『原作・有間しのぶ』作品という位置づけに
いくばくかの不安があったのですが、実によく合っている。
正直驚きました。

作画の奥山直さんは、有間さんより癖のない絵柄で
(もちろん私は、有間さんの癖も含めて味わい深いと思うし、
大好きなのですが)
かえって素直に馴染めるように思います。
特に『俳句入門』としての色合いも強い作品なので、
俳句結社での句会のでやや年齢高めのかたが集まったり
あるいは
『句の解釈・説明』『俳句のきまりごとや歴史』
などの説明・お勉強シーンでは、わかりやすさが際立ちます。
有間さんの絵ではこうはいかないかもしれない。

なにしろ、有間さんの描く中高年と言えば、
んの人生をぐつぐつと煮詰めてしょってるような
業の深さがさらりと顔をのぞかせるのですから。
と言う訳で、奥山さんの絵は、有間さんと異なる「軽さ」が、
たいへん良い効果です。なんとも青年誌らしい軽やかさ。

その女、ジルバ 1 (ビッグコミックス)

有間 しのぶ / 小学館



有間しのぶの真骨頂(これも青年誌ですけども、さておき)
どんな人間でも濃厚な業を背負って軽やかに生きている。

見よう見まねで17文字をひねり出してみるあかぼしさん。
出来た『作品』を前にうんうん唸ります。
『どうして俺の作品は俳句っぽくないんだろう』
という問いがきちんと展開されています。

俳句に関して、私も何冊か入門じみた本を読みましたが、
このポイントはほんとうにわかりにくい。
どうして自分は俳句を読むのか。
この句を詠んだ人は何を伝えたかったのか。
響く作品と、そうでない作品の違いはどこにあるのか。

まんが作品なので、
イメージを絵や効果で補う部分はもちろんあります。
でもそれだけではないわかりやすさ。

たとえばドラマ仕立ての入門書の場合、
登場する初心者キャラは、たいてい『読むひとの共感を得やすい』
描かれ方をしています。
でも章立てごとの
「目標:第五章ではこの課題をクリアしよう」
に引っ張られてか、いつしか置き去りになってしまうこともしばしば。

本作のように『入門書でないまんが作品』の利点は、
『理解できないところ・納得いかないところを
繰り返して読むのが不自然でない』
ということがあるように思います。いいなあ。
届いても届かなくても、すぐにわからなくとも、
自分のペースでゆるゆる読みかえして咀嚼できる。

句会でたくさんの人が詠んだたくさんの句を
お互いに評価しあうシーンも、活字だけではわかりにくいかもしれません。
キャラクターそれぞれの造形で、イメージと情報を
補足しているからこそ、やすやすと把握できるのだと思います。
まるで自分がその場にいるみたい。お見事。
すこしずつ変化してゆく人間模様も、
あかぼしさんの俳句への姿勢や
取り組みが変化してゆくのも気になるなあ。
続刊がたのしみです。ほんとうにたのしみ。

他に、気になっていて衝動買いしたコミックス。

ふしぎの国のバード 1巻 (ビームコミックス)

佐々 大河 / KADOKAWA/エンターブレイン



『イトウの恋』を読んだことがあるので、気になって。

イトウの恋 (講談社文庫)

中島 京子 / 講談社



(『イトウの恋』、実はアーネスト・サトウの話だと勘違いして手を出した大ばか者)

明治11年・開国後間もない日本を、ただひとりの通訳とともに
旅をした『女性冒険家』イザべラ・バードと、通訳伊藤鶴吉の旅の話。

当時48歳であるイザべラ・バードさんと、
はたちそこそこの日本の青年のふたり旅。
ちょっとどきどきしてしまうではないですか!!(コラ)

…と言う訳なので、この漫画においてバード女史が
「たいへん若々しい金髪美女」キャラクターとして
描かれていることは、気にしない方向で!
明治初頭の日本の様子が生き生きと描かれています。
基本的にひとはいいのだけれど、
あまりお行儀という意味ではよろしくなかったりもする、
まったく理解できない異文化そのものの日本と
日本人の中を(通訳はいますが)単身旅するバードさん。
そのゆるい異文化の衝突と、理解と、戸惑いといった
もろもろがはつらつと詰め込まれています。

江戸しぐさ的な
『日本人のココロクバリ・思いやり&おもてなし』ばんざい!
ではない日本人のおおらかな姿。
そのただなかを、ヴィクトリア朝の価値観のまま、
それでも興味津々で旅を続けてるバードさんとイトの道中。
まだ始まったばかりですが、みずみずしくイキオイのある一巻でした。
このまま続いてほしい。

おかざき真里さんまさかの歴史もの。最澄と空海の物語。

阿・吽 1 (ビッグコミックススペシャル)

おかざき 真里 / 小学館



この方のみえないものをつぶさに写し取ろうとするような
執拗とさえいえる美しい絵柄、表現はなんとまあ
歴史・宗教ものにふさわしいことか。

しかも、平安初期の仏教、森羅万象のみならず、
言葉と感情、あらゆるすべてが不可分な濃厚さ
まがまがしさ、怖ろしいものでありながら透徹した明るさ、
渾然一体となった世界が重厚かつ華麗に展開される、
魅力ある作品です。うーん手を出してみてよかった。

ほかに、まだコミックスになっていないようですが
東村アキコさんの『雪花の虎』もたのしみです。
※リンク先は小学館のサイトです→

こちらも歴史もの。上杉謙信が主人公なのだとか。
東村さんは「女性性」に興味がある作家さんだと思っているので、
そういう人が描く戦国には興味があります。

f0257756_1495090.jpg


鎌倉は鶴岡八幡宮の(確か)の、牡丹。
季節感だいなしだけど、淡いいろの花をここにおいてみたくて。

f0257756_145584.jpg


まだうちに来て日が浅いころのちこ。メモリアルシリーズ。
あんまり見た目は変わってないのだけれど、
この夏とにかく甘えん坊になりました。

f0257756_1524227.jpg


どことなく横須賀に似ている(気がする)九州の海。
横須賀と言っても、港ではなく、ひっそりした静かな場所だけど。
東に向いた海で、背中に高くない山があるせいかも。
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by chico_book | 2015-08-05 01:53 | まんが | Comments(2)
Commented by conatsu_cafe at 2015-08-11 14:29
『あかぼし俳句帖」ちこぼんさんの記事を拝見して、急いで本屋さんへ
買いに行きました。いちおう新刊コーナーにあったのですが、全然平積み
ではなく、残り1冊って、うっ、売れているんですかね。ほんと、これで
しばらくはビックコミックオリジナル(でしたっけ?)の立ち読みからの
解放というか。丁寧に描かれていますね。スイさん、いいな。勉強になります。

ちょこっと昔のちこにゃんちゃん、真摯な表情が志摩稲子だなーって。
少し、気を張っていたのかな?なぜか甘えん坊になる今年の夏の猫。
まりちゃんはとにかくわたしの枕元で寝ていて、なんだろ、このうれしさ、
優しさ、いじらしさ。少しお留守番が多かったので、必死になっているのかも
しれないですね。かわいいですよね。もう、思いっきり甘えさせてあげましょう。
そして自分も、自分のふがいなさをまりちゃんにポツポツと聞いてもらったり
してます。お互いサマーですね。

↑のキャメロン、ほんと付き合いがいいというか、微笑ましいくらいですね。
芸術とかそういうことより、ちょっぴしゲーセワなことに関わってしまう人のよさみたいな。
なんかホッとするなあ。
Commented by chico_book at 2015-08-13 07:07
『あかぼし俳句帖』、私も『新刊平積』ではなくて
『出版社ごと』の棚で発見しました。
そこでは棚差しではなく、かろうじて平積みでしたけど。
ちょ、ちょっと地味な作品ではありますよね……
と思いつつ、応援気分でいっぱいです。

まんが形式の入門書って、こんなにわかりやすいのか、と
つくづく思っています。明星さんがバレンタインの句を
ひねってるあたりとか、文章だったらサクサク読み飛ばしちゃう。
(私がもっと丁寧に読めばいいのかも(-_-;))
とにかく続きがたのしみです。
この夏の課題図書だったので、安心しました。

古いちこ写真、解約した携帯に入っていたのですが、
いま調べてみたらそこまで古くはありませんでした。
2012年3月。
私がひと月ほど入院して
戻ってきた後の日付でございました。
ちょっともの言いたげなのは、
そのせいかもしれません。

牡丹の花の色合いと、
ちこの鼻から胸元にかけての毛色の、
白からほんのり桃色がかったところが
よく似ているような気がして、
偶然ですが並べてみてよかった。

お互いサマーで、夏がゆっくり過ぎてゆきますね。
今日は久々の雨のようで、ちょっとほっとしています。

そして全然知らなかった映画なのに!!
いまや気になってしまってそわそわしています(馬鹿)
近くのツタヤにあるかなあ??
いっしょにスピルバーグの『リンカーン』借りるべきかな、
なんて(笑)
いやあ、キャメロン、もう大好き!!
『この役柄に説得力のあるルックスをキープしつつも全力』
って、なんてかっこいいの!!


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ねことか本とかまんがとか、と言いつつ映画にじわじわ圧される幸福


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