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本とかねことかパンタレイとか

つきあいが長い作家なので、初耳、の要素は少ない。
神宮球場の外野の話とか、借金をして開店したピーターキャットの話とか、
その当時一緒にいたねこの話とか、
欧州を長期滞在しながらこりこりと『ノルウェイの森』を書いた話とか。

職業としての小説家 (Switch library)

村上春樹 / スイッチパブリッシング



作家の歴史と同様に、折々に刻まれたかけらを、
わたしも反芻しながら読みすすめる。

ミコノス撤退とか、蜂のジョルジョと蜂のカルロとか、
ボローニャで食べるはふはふのニョッキとか、
うさぎ亭のコロッケとか、うなぎとかかきフライとか、
ベレンコ中尉もこれでデレンコとか、
「ねえ、パスポートとトラベラーズチェックと帰りの航空券もってきた? 」
とか。
加納マルタと加納クレタとか。虫窪老人とか。
星野青年とか、四国の山道を疾走するロードスターとか。

国文科だったわたしのクラスメイトは、ほとんどだれも春樹を読んでなくて
(個人的な経験です。うそみたいですがほんとの話)

『ああ、あのひと売れてるよね』

程度のシニカルな反応。
そして、その当時すでにどっさりとあった単行本を
貸してくれたのは英文科生だったなあ、とか。

『ねじまき鳥クロニクル』が、
いまのところ文庫まで待つことのできた最後の作品。
(以降はほぼ単行本即買い)

文庫本の発売を、ものすごくうずうずと待ったこと。
確か新聞の切りぬきをお財布に入れたんじゃなかったかな、
そして、文庫版発売当時、私は広島に住んでいたのですが、
紀伊国屋書店で購入した後、
うっかりビルの屋上庭園で読みはじめてしまいました。
そしてまったく止めることができなくなりました。その大変さと至福。
(さっさと一階まで降りれば、電停は目の前で、
まっすぐ家に帰れるのに!!)
それすらもどかしくて、とにかくひたすら夢中でした。
でもいまはちょっと読みかえせないかな。

そんな無数の経験があることはとてもうれしいことで、
そして心のどこかがほんの少しだけさみしい。
まさかこんな装丁の本が出てしまうなんて。

似ているわけではまったくないのだけれど、
庄野先生のゆっくりした変化(あるいは深化)を思い出す。
繰り返し語られる日々。純化が進んでゆくかんじ。
そぎ落とされて、透徹してゆくそのさまを、
一冊ごとに感じながら、心待ちにしていた日々。
祈りながら期待していた。
どうかどうか、次の新刊も無事に読むことができますように。
そう思った日々。

連休中にゃんは本当によく寝ていました。
寝て、起きて、あくびとのびをして、なでろと甘えて
なですぎと怒って、ちゅーるをねだって、
無言で水入れの前にたたずみ、ただ佇み、私を促す。
悠然と新しい水を飲む。ちいさく赤い舌のかわいらしさ。

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(・・・・・・・(お水))

ころんころん転がって、おなかを触らせる。
白いフカフカのおなか。やわらかさとやさしさと、強さ。
こんな弱いところを存分にさらしても大丈夫という、気持ちの強さ。、

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あくびとのびをしてから、ベッドに戻る。
静々と、ふかふかの羽根布団に身を沈める。秋。
窓の外を、ひらひらとたよりなく飛ぶちょうちょ。
それを見つめる翠のひとみ。

いつもお昼間は自分が座っている椅子に、
私が座っているのが解せぬ、と文句を言う。

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(そして椅子を取り返すの図。「まったく油断も隙もないんだから!」)

この小さな愛らしいからだのなかを、
ニンゲンの5倍の速度で時間が過ぎてゆくのかと思うと、
そのとどめようのなさに気が遠くなる。

まだねこ初心者だったころ、本当に眠るので。
あまりに眠るので、眠りつづけるので、
いくらねことはいえあんまりではないか、
と、
もしかしてとんでもないおばあちゃんなのでは、
あるいは
どこか具合が悪いのではないか、と、悶々とした日々。

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このかけがえのなさをどうすればいいのか。
ねこ風邪キャリアのちこはときどき
『くちゅん』というし、吐き戻しくせもある。
でも、体重だってまだまだ5キロはあるし、
毎日トイレは健やか。

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(健やか~♪)

それでもいつもどこか不安なのは、
いつもいつでも圧倒的に幸福なのとおなじことで
怖れる必要はないのだ、と思う。
ただ忘れてはならないことなのだ、とも、思う。

要は、あれです。連休が終わってしまったことを
(そして予定がはかばかしくなかったことを)
嘆いているのです。パンタレイ。そして、それすらも一日遅れ。

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(横向きですが。シッターさんがiphoneで撮影してくださいました。
うまく向きを変えられないのはちこぼんのせいです。トホホ。)

「ばっかもーん!!」

※否定しているわけではなく、
エピソードが一冊にまとまったことはありがたいことでもあります。

by chico_book | 2015-09-25 02:09 | | Comments(0)

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