自分との格闘を優雅に拾いあげる17文字

少し遅くなりましたが11/30に発売された2巻の感想です。
「あかぼし俳句帖 2巻」

あかぼし俳句帖(2) (ビッグコミックス)

有間しのぶ / 小学館


1巻の感想はこちら

ネタばれあるので畳みます。




かつて会社のコピーライティングでブイブイ言わせていたものの、
(つまりことばの扱いに関してはちょっと自信あり)
いまは閑職に甘んじている明星啓吾(定年まであと5年)が、
偶然行きつけの小料理屋で知りあった美女、水村翠(スイ)さん。
実は新進気鋭の俳人でもあるスイさんとの縁で、
俳句に興味を持ちはじめてゆく…というのがこれまでのあらすじ。

1巻で、誘われるままにスイさんの参加している句会に参加、
ビギナーながらも評価されて浮き足だって喜ぶ明星さん。
2巻ではその続きが、やはりていねいに描かれます。

みんなにほめられて、ビギナーズラックと知りつつも、
嬉しくなって舞い上がる明星さん。
明星さんの(最初は下心にまみれた動機ではじまったことなのに)
結果に対する無邪気なよろこび、
そしてそこにあらわれる、創作の壁。二作目という高い壁。

出来るはずのことができない。
なにをやっても駄目な気がする。
所詮自分は駄目な人間なんだと思う。そうとしか思えない。
その情けなさ、逃げ出したくなるようなみじめさ、
とてもよくわかります。

たとえば私も、このブログをはじめるときに思いました。
すぐに飽きちゃうんじゃないかな、とか、
書くことなんてないんじゃないか、とか、
私が何を発信するんだっていうのか、
まんがや映画や本の感想なんて生意気で荒れちゃうかも(こわい)、とか、
毎日毎日誰ひとり来なかったらさすがにちょっと寂しいかもしれない、
などなど。

でもちこのかわいらしさには(絶対の)自信がありまして、
そこに勇気づけられたし、導かれました。
なによりちこのかわいい写真を
見ることのできる場所があるなんて(わたし自身が)
嬉しいからそれでいいや、という思いではじめました。
いろいろなうれしい偶然が重なって、
なんとかここまで続けることができているし、
たのしい交流も少しずつ深まって、
ああ、壁を越えてよかったなあ、
なんてしみじみ思うことの多い今日この頃なので、
よけいにココロに沁みたのかも(・・・・・・話が逸れました)

何かそういう、小さな引っ掛かりが
あればそれで自分を支えていける。
ただそれだけのこと、でもその困難さ。

明星さんも、ささやかな偶然に励まされ、
ちっちゃな勇気でその壁を乗りこえるのですが、
その先にはまた壁。
まさに壁を越えたらさらに壁。あれ、どこかで聞いたような??(笑)

でも実際、大なり小なり人生というのはそういうものかもしれません。
ハニューシカのような大きい壁はわかりやすいけれど、
私の前にももちろんあるし、もしかしたら最近やたらと
昂っているちこの前にも。

えっちらおっちらよたよたと、
それでもなんとか進む明星さんですが、
そこをさらにまたどーんと落とされることになります。
しかも今度の相手はいわゆるひょうひょうとした
ノマドワーカーなかんじ、若くて身軽でエリートっぽい、
泥臭さのまるでない『好青年』。もちろん俳人としても優秀。
おまけにほんのり恋敵風味。
がっつりスイッチはいる明星さん、以下続刊!!うわー。

わかりやすい配置と展開が、陳腐でも退屈でもなく
わくわくしてしまうのは、
作中での俳句への取り組み方が実にていねいで
俳句同人の仲間たちのそれぞれが魅力的であること、
そのバランスのよさのおかげだと思います。いい作品です。

たとえば私はバブルを知っててもいい世代ではありますが、
実際には、世の中に出たころには終わっていたというところ。
ちょっと上の、バブルでゴーゴゴー!! なひとたちとも、
完全氷河期のみなさんとも、ちょっと違う端境期なかんじ。

熱狂の後片付けを引き受けざるを得ないニンゲンの
「夢のあとの平坦な日常をいかに生き抜くか」
「一度折れたところからどうやって再構築してゆくか」
という視点で読む、この作品が実はすごく好きな時期がありました。

銀魂 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

空知 英秋 / 集英社



(デジタルコミックスにはモノクロ版があるんですね)

自分の人生の再構築、セカンドシーズンへの視点。
いわゆる『人生の楽園』的な悠々自適さとも、
敗者の美学に酔うのでも、
競争社会からの抜けた者勝ちな『上から目線』とも違う、ひそやかさと充実。
実際の生活で、皆がそれぞれ自分なりに
経験していることなのかもしれません。

「俳句のいいとこ怖いところは、
一句詠んだら次に行かないといけないところです」


俳句の先生の言葉が重くのしかかります。でも明るい。
それは目指している方向似、光を感じるからかもしれない。
あるいは目指す先ではなく、
自分の中にある矢印が光を放っているのかもしれないけれど。

自分でもつかめない、
自分の中にあるのにたぶん確かに存在する何かを
なんとか、言葉に、あるいは形にしようとする格闘。

最近のフィギュアを見ていると、私の大好きな
『ヒカルの碁』の伊角さんの言葉を思い出します。
たぶんもうこの言葉はずっと好きでいると思う。
「おまえの強さは認めても、おまえにかなわないと思ったことはない」
「オレはオレだ、自信を失ったわけじゃない。オレの碁がオレをささえている」

ヒカルの碁 16 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ほったゆみ / 集英社



自分を超えることのできるのは自分だけ、
というハニューシカさんのことばが身に沁みる年末。
いよいよ全日本です。
(さすがにこの1ヶ月の間に三連発はないと思う。
あるかもしれないけれど、なくてもびっくりしない。と、小声で自分に言い聞かせ)

あ、スイさん自身の年ごろの独身女性としての
仕事と私生活と俳句とのバランスについても、
さらりと、だけどしっかりと描写されています。
絵柄も含めて、つくづくバランスのよい作品です。

最後はフィギュアとのマーブルになりました。
巻末によると、続きは2016年春ごろとのこと。
たのしみの多い年末です。ありがたや。
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by chico_book | 2015-12-24 00:16 | まんが | Comments(3)
Commented by Linda at 2015-12-25 22:07 x
ビギナーズラックに二作目の壁、そして恋敵…と
聞いてるだけでも気になる内容!

ちこぼんさんのおっしゃるように、ていねいな描写や
魅力的な仲間達などは惹き込まれる上で重要ですよね。

先日とある病院を見学に行ったとき、説明してくれた
若い女性が「間違いがいっぱい出てくるから気持ち悪くて医療関係のドラマや映画は一切見ない。職業病ね」
と笑っていました。

ヒカルの碁かな。私の父が小学校の碁クラブの顧問を
してたとき、漫画のおかげで人気と聞いて
なんだか嬉しくなったことがあります。

ちこにゃんと もふもふ温かい年末をお過ごしください。
Commented by Linda at 2015-12-25 22:31 x
追伸
ブログについては私も時折考え、いまだ方向性が定まっていません。
ちこぼんさんのブログは名が体を示して
それに沿った記事で、すごく読みやすい
語りかけるような口調で素晴らしいなぁと思います。

村上春樹さんがブログやらないよと公言してるのを
かっこいいなと思ったり(流されやすい私)...、
でもブログを媒介として交流できたを媒介としてご縁はかえがえのない宝物です。
Commented by chico_book at 2015-12-27 04:18
Lindaさんこんにちはー。
実際に俳句を詠む方からすると、
また違った感想なのかな、とも思うのですが、
入門まんがとして、
とても工夫されていて面白いのです。
句会の様子とか吟行とか、どうなんだろ??

ドラマや映画の内容に違和感があるのは、
日本に限らないんですねえ。やっぱりそうなんだー!
興味深い情報ありがとうございます(ぺこ)

偶然ですね! 
私の父も(半分お遊びですが)
中学生に囲碁を指導していて、
「なんだかまんがの影響で急に大人気になった」
と言っていた時期があります。
「おばけが碁を教えるまんがだって??」
と、まったくのきょとん顔で言っておりました。

市ヶ谷の日本棋院の幽玄の間で、
名人のまねっこ写真を記念撮影したりして、
子供たちに見せていた様子。
『まんがに出てきた場所だ!!』
って大興奮してたよ、と自慢してました。、
たのしそうだったからまあいいか。
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ねことか本とかまんがとか、と言いつつ映画にじわじわ圧される幸福


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