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ラストイヤーラストデイの思い出

2016年になりました。今年もよろしくお願いいたします(深々)

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さとこちゃんのお衣装のような、あるいはハラシロ姉妹のおなかのような、
うっすら紅のさしたような色あい。
季節はまったく違いますが、大好きな花なので。

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光と影のドラマティック。

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レンブラントとかカラヴァッジォぽい? ぽくない?
……ねこが枕にしているのはティッシュの箱だとしても!!


私は簡単な人間なので、バロックとかロココとか、
わかりやすくきれいで、ドヤ感のある絵画が好きです。
日本にもよく来てくれるし、ありがたく素直に鑑賞に行きますが、
スノッブを承知で言えば、
『本来その作品が存在するロケーションで観るのがベスト』
だと思っているので、出来れば現地で観たいものです。
(もちろんなかなか簡単ではありませんが)

たとえば、フェルメールの『真珠の耳飾の少女』は、
マウリッツハイス王立美術館で観ました。
こぢんまりした静かな建物は、もと貴族の邸宅ということで
美しい調度品、優雅な壁や天井の装飾にみっしりと
静かに(けれど雄弁に)存在する作品たち。

窓の外はオランダの明るい薄曇りの空、
隣接した池の水面には白鳥。

身土不二、ではないけれど、ここにいることは
オランダ絵画たちにとって幸せなことなのだろうなあと、
しみじみと思うことができました。

(同じオランダで、ライデンの国立民族学博物館には
アジアの美術品・民具・工芸品、とりわけ日本の品物がたいへん多いので、
その点では矛盾した発言になるでしょうか)
けれどオンリーワンの美術品ではなく、一般に流通していた品物を
コレクションするという行為が、当時世界の海に乗り出していたオランダが、
アジア世界と縁づくつながりにしたように思えるのは
オランダを、ひいきしすぎでしょうか。どうかな。

この映画を大みそかに観たのですが、
この百合の写真と猫の写真をながめているうちに、
そんなことを思い出しました。

『黄金のアデーレ 名画の帰還』 公式サイト



ベイスドオントゥルーストーリー。
感動の実話モノかな、と、ゆるゆるっと観に行きましたら、
とんでもなかった。

以下、そこそこネタバレなので畳みます。





戦争によって不当に奪われた幸福な生活の記憶、
そこからサヴァイヴした自分自身(置き去りにした家族や友人)、
いまはLAに住むひとりの老女・マリアの思いと、
知り合いの息子に過ぎない、
スクールボーイとさえ言われる若くてちょっとグダグダ、
弱腰で駆け出しの弁護士・ランディが
オーストリア政府を相手にクリムトの肖像画の
返還要求を突きつける。

うーむ、素晴らしかったです。

ヘレン・ミレン演ずる主人公マリアが、初対面の弁護士に供するのは
手製の『アプフェル・シュトゥルーデル』。もうここでテンション上がります。
くいしんぼう。
ランディ自身も、ナチスを逃れてアメリカに亡命してきた
作曲家・シェーンベルグの孫であるのですが、
最初はマリアの思いを全く理解することができない。
ただ、高額な絵画の訴訟というだけで、取り組みはじめるのです。

回想シーンで描かれるオーストリアでの生活、
(幸福な日々があっという間に瓦解してゆく)
とりもどしたいという強い願いと心細い不安に、
そう、自分の気持ちに振り回されるのは、
マリアもランディも同じ。
そのシンクロあるいは不協和音の具合、
お互いのタイミングのずれがそれでも絡まりあって
結果につながってゆく、そのバランスがたいへん見事です。

戦争もので法廷もの。歴史ものとしての要素も濃く、
国際裁判の流れは本当に興味深いのですが、
なによりもていねいに描かれているのは
ナチスのオーストリア併合の流れが大変丁寧に描かれ、
どんなふうに損なわていったか。
そしてそれが、消えることのない歴史の脈絡として
どれだけくっきり刻みこまれているのかということ。

この肖像画が、
『巨匠クリムト作の素晴らしい美術品』
として、ナチスを受け入れた歴史を
持つウィーンの美術館ではなく、
『米国に亡命して(東欧系ユダヤ人のルーツを持つエスティ・ローダー所有の)
ノイエギャラリーに収められる』
ことが、どれだけマリアにとって重要な意味を持つのか。

ヘレン・ミレン大好きな女優さんなので、がっつり観れてうれしい。
『クイーン』は時々見返したくなる作品。
コーギーちゃんたち、宮殿、女王が自らハンドルを持って運転する
スコットランドの緑ゆたかなのに荒涼とした風景がすばらしくて。



悲しみに、さまざまに交錯する思いにそっとココロを寄せるということ。

過去との向き合い方についても、大変示唆に富んだ作品です。
一年の最後に、観ることにしてよかった。
ありがとうジャック&ベティ。いつもありがとう。
(『バレエボーイズ』を観に行った流れではしごした作品です)
(『バレエボーイズ』もよかったです。
つくりこんでないドキュメンタリーの、さらっとした距離感が絶妙)

by chico_book | 2016-01-02 20:33 | 日々 | Comments(0)

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