遠い日の花火のうつくしさ

漫画家さんで、エッセイと、ストーリーものと、
両方の達人と言う方はめずらしい気がします。
(吉野朔実さんはその稀有な例かもしれません)
本や映画のレビューと言うテーマ以外の、
周囲のひとの描き方について特にそう思えます。

巻末おまけのような短いものと違い、あるていどのボリュームになる
作品は難易度があがるようです。
舌足らずになったり、過剰になったり、距離感がむつかしかったり。
あるいはエッセイの名手のかたの、創作がなんだかピリッとしなかったり
もどかしかったり。でもこれはまんがに限らないかな。

たとえば山下さんのこの作品は大変面白いのですが

数寄です! 1

山下 和美 / 集英社



『数寄屋造りの家を建てる』
と言うテーマのつよさありき、のように思います。
たぶん気遣いの方なのではないか、
ご家族やご友人についての描写に配慮あるいは
苦慮が感じられるようで、このあたりのバランスはなかなかむつかしい。

かわかみじゅんこさんは両分野に置いて、
間違いなく第一級のかたです。
どちらにおいても、独特のするっと引いた、乾いた風合い。
熱意はあるけれど湿度のないところ。
じぶんのラインを明確に持っているところ。大好きな作家さんです。

日曜日はマルシェでボンボン 3

かわかみ じゅんこ / 集英社



世界は甘くてやるせなく、ときにシビアで絶望に充ちていて総じてやさしい。
そのバランスの妙。ほんとに『絶妙』としか言えない。職人の技です。

『パリパリ伝説 9』

パリパリ伝説 9 (フィールコミックス)

かわかみ じゅんこ / 祥伝社



パリパリ伝説の新刊を迷わず購入。
ストーリーものの連載をはじめたので、こちらが不定期になり
ページ数が短い回もあるとのこと。少し残念に思いましたが、安定の面白さ。
フランス生活10年を超え(赤子ちゃんも10才に!! )
パリ市内から郊外へと引越しをしたかわかみさん。

村での生活の様子、生き生きと描かれるフランスの人々、
パートナーであるフィリップさんゆかりのかたとの交流も、
生活の地味な楽しさも豊かさも迷いも不満も、丁寧に淡々と描かれます。

いつもどおりのパリパリ。
もしかしてかわかみさんってねこっぽいのかもしれない。
この場合の「ねこっぽい」とは、
『悪いことを忘れないけれど恨まない。
常に事象に対して一定の距離を持ち淡々と充実した日々を生きている』
と言う意味合いですが。

購入するまんがのタイトルを増やさないように日々心がけているので、
しばらく悩みました。かわかみさんの新作新刊。

『中学聖日記』

中学聖日記 1 (フィールコミックス)

かわかみ じゅんこ / 祥伝社



以下アマゾンさんの紹介文。

中学生男子×担任女教師

「ぼくのこと嫌いにならないでください」

黒岩晶、14歳。
〝恋心〟を未だ知らずの中学3年生。
ここ最近、彼が目で追ってしまうのは
新担任・末永聖、25歳。
清純な雰囲気の女教師で、
遠恋中の婚約者がいるという噂。
聖へのモヤモヤが恋だと気づかずに、
ひっぱたいたり、キスを迫ったり、抱きしめたり…。
遠恋中の婚約者がいる聖は彼がアクションを起こすたびに戸惑い、
心掻き乱され、でも突き放せない。

そして夏。
聖への気持ちに自覚が芽生えた頃、
2人にとって運命の夏休みが始まるーーーー。

じれったいほどにときめく、
11歳差の純情年の差ラブストーリー。


すっかり恋とか愛とかいう気持ちと縁遠くなり、
友愛だけが大切だなあと思う、さいきんのわたし。
むしろ、
愛は消えても親切は残る、
と言う言葉がしみじみと実感できるココロの頃合いのワタクシ。
(あまり年齢で云々するべきではないのですが、どちらかと言うと
末永先生の親世代の方が近いのでむべなるかな、ということかも)
なので、こんなみずみずしいあまあましいにがくるしそうな
恋心のようなものを描いた物語にはいってゆけるのかしら、
と、不安になりながら購入。

すばらしかったです。
わたしにとって恋は既にして遠い日の花火でありますが
その美しさはいま目の前にありありと思い浮かべる頃ができる。

恋と名付けていいのかわからない感情の揺れ。とまどい。まどい。
その引き出し、開けたらあかんやつや!
わかっていても開けずにはいられない。
ふいっと指先に力を込めてしまうときの、まどい、ためらい、ふんぎり、
あらゆるこころの感触。 

遠い異国で、フランス生活で、よくこんなに鮮やかに
日本の中途半端な地方都市の、中学3年生の閉塞感や
移動手段が自転車しかないもどかしさ、
夏休みに入ったばかりの暑苦しさ、重たい湿度のある空気、
やりばのない気持ち、職員室で散らばる書類や
同級生女子の暴力的でどうしようもないコイゴコロなどなど
描けるものだなあ。心底感銘を受けました
かわかみさんのなかに、それらすべては鮮やかに
今ここにあるものとして保存されているものなのかしら。
作家さんの資質と言うものについて深々と考えてしまいました。

みずみずしく鮮やか。なんと8月に早くも第二巻が出るようです!!

中学聖日記 2 (フィールコミックス FCswing)

かわかみ じゅんこ / 祥伝社



FEEL YOUNG は、たまにこういうスマッシュヒットが出る雑誌。
(モンパト黄金世代とよびたい派)
最近は雑誌の購入はしていなかったので、嬉しい不意打ちでした。



長塚京三さんカッコよかったよな……と、懐かしさ半分の
軽い気持ちでみてみたら、
田中裕子さんのあまりの美貌にびっくり。


ところで知らないうちに完結していたこちら(5/6発売でした…トホホ)

その娘、武蔵(3)<完> (KCx)

田中 相 / 講談社



予想外に短い作品になった印象。
きりっとまとまっていることを期待していそいそと探します。いまから。

そして早くも新連載が始まっていました(既に6月のお話ですが)
第一話はこちらで読めます。面白い!!!
先の読めない設定、見たことのない世界をこんなに
クリアに目の当たりにして
ワクワクどきどきできるよろこびを存分に味わいました。

奇妙な世界の奇妙さをそのままにていねいにわかりやすく描かれる
作家さん。すごくたのしみです。
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by chico_book | 2016-07-31 11:02 | まんが | Comments(0)

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