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ずっと見ていたい綺麗な空のような

こなつさんがおすすめされていた
『恋は雨上がりのように』3巻までを読みました。
(6巻まで刊行されているようなので、頓珍漢な感想かもしません)

公式の作品紹介はこちら→


こなつさんありがとう!!
自分ひとりでは見つけられなかった作品です。

(おそらくは)順調に過ごしてきた学生生活あるいは人生を、
予想外の出来事により立ちどまることになった主人公の女子高生・
あきらが恋に落ちたのは、バイト先のファミレスの店長。
それもおそらくは予想外のできごと。

ここに描かれているのは、
かなうような恋ではなく、届くような想いではなく
それでもそこにあるなにかをたいせつにすること
押し殺すことなく走り出すことなく

そっと見守って、でも目をそらさずに、
まるで発掘か何かのように、そおっとそおっと、
たいせつに確実に指先で掘りあてる、そんなイメージが重なってゆきます。
あるいはそれは、恋のなんたるかを知らない若者が、
ひとつずつ確認しているういういしさなのかもしれませんが。

繊細でみずみずしくていつまでもみていたいような
心の動きが描かれます。
実際にはかなり切実でひりつくような熱情が活写されているので、
優しいばかりではないのですが、そのひりつきさえも、
膝小僧に残ったかさぶたのあとの様になんだかいとおしく思えてしまう。
単に私が年寄りじみた読み方をしているだけかもしれませんが。どうかな??

あきらちゃんの瞳の輝き
みずみずしい髪のつや
すんなりとのびた手足

白黒の画面からも、内側から発光しているような
輝きが伝わってきます。なんとうつくしい十代。

ああ、お化粧っ気なんてなくても桃の実のように、
うぶ毛さえ輝くほおだろうな、とか、
細く涼しげで清潔なうなじなんだろうな、とか、
まぶたのうえがつやつやしているんだろうな、とか、
あんまり描写するとちょっと(私が)アレなかんじになるような(自覚あり)
そんなさりげなさ。ほかのことばが見つからないほど。

そんなふうにたいへん魅力的な女の子なのですが
魅力的すぎて、まぶしすぎて直視できない気持ちと、
あまりにも『対象外』なので堂々と向きあえる気持ち、
その両方を持ってあきらちゃんを見つめて、見守ってしまいます。
たぶん店長よりの視点ですねどうしたって。

ぐうぜん踊場で雨宿りをしてしまったふたりがならんで外を見ている。
窓の外にはつやつやの新緑がきらきらの水滴をたくさんまとっている。
輝く空気と光の粒を黙って一緒に眺めている。
雨はやんでしまったから、この場所にいる理由はもうないのに
「じゃあね」
と立ち去りがたくて、沈黙を守っているようなイメージが離れません。
一巻の冒頭から。とても不思議。
作中では、少しずつですがあきらちゃんのコイゴコロは育っているというのに。
私の大好きな、八百屋お七の様な凶暴な少女の純愛要素もたっぷりあるのに、
どこか静かなのは踊り場にいるからなのか、とも思う。


特急列車乗っちゃってー
ネバーランドに連れてってー
いっさいがっさい うばってよ!! っていう純愛と凶暴。
恋と言う名の大嵐。

最初から終わりを想定して見守っている(読んでいる)
なんて、
かわいそうだからあきらちゃんには知られないように、
そんなふうな
すこしばかりのうしろろめたさを抱いてしまいました。
なんとなく。

ほんのいっときの、若さゆえの気の迷い、
と言ってもいいような言うしかないような
いやいやそんな言葉ではとてももったいなくてまとめられないような、
そんな心の動きをていねいに描いています。とてもみずみずしい作品。

スピリッツの公式HPをみると、作者の眉月じゅんさんは
『趣味:手芸』
『好きなタイプは小林薫』
とあるので、おそらくは女性作家さんかと。

あきらちゃんが魅力的なのに性的になりすぎず、
透明感と清潔な生命力に充ちているのは
そのあたりのさじ加減かもしれません。いいにゃー。
そしてこういう作品の場合、男性側の抑制も大変重要です。
重要です!!(力説)

もし彼女が、不幸な挫折を経験していなければ
いまこの場所にはいない訳です。

そう思うと、たまさか自分のもとに現れた
うつくしくめずらしい鳥、を、見守るような気持ではないか、と、
うんうん唸りながら真剣に
店長(46歳バツイチ)の気持ちを忖度してしまう訳ですが。

でも最近、そういうリーディングを(この場合はREADではなくLEADで)
みごとに揺さぶってくれた作品に出合って幸福で幸運で
まだふわふわしているほど。

ありがとうありがとうもう一気にぶん投げられるの大好きです。

おまけ)
ただ、あきらちゃんのスカートは短すぎますよ!!
あきらちゃんだけではありませんが。
そして誇張でもなんでもなく、横浜の女子高生のリアルではあります。うむむ。
九州で見かける制服女学生の皆さんは、
膝チョイうえくらいの長さが多くて、なんだかほっとします。
生活指導の先生のようですねワタクシ。

そして店長のイメージになんとなく後藤隊長が被るのでした。
あんな飄々とはしていないし、あくまでふつうのおじさんだけれども。
安直かしら。

by chico_book | 2017-01-18 01:40 | まんが | Comments(0)

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