サイレンスの強さ優しさ呪わしさ

映画を観たのは3月の頭で、もうずいぶん前のこと。
紅海感もずいぶん少なくなってはいるのですが、
なにしろ原作を再読したくなって図書館にリクエスト。
みなさん考えることは同じようで、リクエストは100人待ち。
ようやく手元に届きました。


読みはじめるとひと息。

小学校高学年で北杜夫に傾倒して、そのつながりで遠藤周作へ、
教会学校にかよっていた流れもあって
中学生時代に読んだ(はず)の『沈黙』。

映画を観ている途中で、そうそう、キチジロー、聞き覚えがあるわ、とか、
モキチ、そうそうモキチ、北杜夫由来でちょっとどきどきしたっけ、
なんて思い出していました。



当時のわたしの嗜好は、あくまで北杜夫>>>遠藤周作だった記憶なので、
文体の馴染みの良さに、そう感じる自分にびっくりしました。
過不足なく淡々とつづられる文章。
静かに語られる悲劇と苦悩、しずかな激情。圧倒的。

映画も大変素晴らしかったのですが、原作が本当にそのままで、
しかも小説と映画と言う作品の特性にしっかりと根差した
深みがたっぷりある、双方ともに
「余りあるすばらしさ」
でした。
両方そろって、それぞれの違いと特徴が引きたつ印象。

井上奉行・イッセイ尾形の底知れぬ恐ろしさ
通詞役の浅野忠信のつかみどころのないかんじ、
とてもよかったです。
窪塚洋介のキチジローの圧倒的などうしようもなさ。
そしてそのリアルさ。
日本人作家による小説で描かれる日本人のなんとも
把握できない不気味さをスコセッシ監督が
こんなにも的確に圧倒的に描くなんて、と、
途方にくれながら劇場を出たのを覚えています。

福岡在住時代に、天草にドライブに行って温泉に入って、
その帰り島原にはフェリーで渡りました。
海に迫る半島とたくさんの島々、すこし荒れ気味の海を
ほんのりと思い出します。
それぞれに隔絶された、海と向き合う入り江に刻まれた
ひっそりした集落にまだらにさしていた光の筋の印象。

惜しむらくはロケ地が(ほぼ)台湾なのだそうで。
現代の日本では難しかったのかな。

162分と長い作品ですが、ほんとうに観てよかった。
そして読むことにしてよかった。

次は『海と毒薬』を読もうかな。
ティーンエイジの自分ともう一度出会う読書。
こういう幸福があることを知ったのは最近のこと。

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鎌倉カトリック雪ノ下教会。
団葛の桜ごしのたたずまいがうつくしかった。
ワタクシの育った(じつにちいさな)街も、
お寺と教会と神社が仲良く並んでいることを思い出しました。

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春の終わりの夕闇に浮かぶ桜。

はかなく散ってしまうけれど、また来年律儀に咲く、
と、
のんきに信じてもいいのだろう。断言するほどの強さはないけれど。
そう思えるのも、幸福。



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by chico_book | 2017-04-16 20:26 | | Comments(2)

Commented by momokissa at 2017-04-29 22:18
スコセッシ、私はあまり馴染みがなかったけど実力があるんですね。
良い映画にしてくれてありがとうとお礼を言いたい気分です。
見てないのに。

話は飛びますが
ちこぼんさんブログで知ったこうの史代さんの
「この世界の片隅に」はフィンランドにも来る気がする。楽しみだな。
Commented by chico_book at 2017-04-30 21:36
スコセッシ監督、あんまり縁がないんですよねわたしも。
ディカプリオとやたら組んでるイメージがあるのですが。

『最後の誘惑』を見た時はまだ10代だったので
先輩に
「オウ、キリストちゃんがおイタする映画観たのか」
と言われてうろたえてしまった記憶あり。失笑。
いま見てみると、またかんじが違うのかな。

私は絵心ないニンゲンですが
(そして絵心ある人にむやみに憧れているわけですが)
スコセッシ監督ってなんというか
「似顔絵ダマシイ」
が刺激されます。ふふふ。
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