2013年 06月 17日 ( 1 )

こころの底が暖かくなる

トンネルを越えると雪国で、夜の底は白くなるそうですが、こころの底に届くような本たち。

雲のうえ: 一号から五号

北九州市にぎわいづくり懇話会 / 西日本新聞社



大好き!! 「雲のうえ」が単行本になりました!! 
就航したばかりのスターフライヤーの機内で入手したので、
てっきり機内誌だとばっかり思っていたら、実は北九州の情報誌だったんですね・・・。

以下amazonより引用
全国津々浦々で手本にされた“日本で最も美しい"フリーマガジン。
「雲のうえ」は2006年に福岡県北九州市で 北九州市を発行人として創刊された無料情報誌。
「えっ?行政が出してるの?」と誰もが驚いたデザイン・写真・構成の美しさ、妙。
市井の人々のたくましさと笑い、ペーソスを、「紙」に見事に内包させ
「全国の紙好き、雑誌好き」を大いに喜ばせました。ファン待望の合本化。


いやあこれはうれしかった。本屋で見かけて即買い。
牧野伊三夫氏が北九州出身だと言うことも、新鮮な驚き。そしてゆっくりうれしくなる。

北九州と言う、いい意味でこぢんまりとして、
それでいてそれぞれの地域が特色豊かでかつ独立性の高い街を
その多様性を多様なままに伝えています。
ちょっとひなびたようなところも、そのままに。
やみくもなほっこりあったか路線ではなく、地に足がついている、そんな印象。
ふるさと礼賛でなく、地域のありのままを活写している、
水平な視線が印象的なフリーマガジン。
うれしいこともさみしいことも、みんな同じ距離でそこにある。
少し庄野潤三氏の著作に似てるかな。

ちなみにスターフライヤーのかっこよさはまさに異常。
飛行機業界にあるまじき黒と白のコントラストの強い機体に、全面革張りのシート。
プラスいくらの有料シート、ではなく総ての座席にそれをやってしまうかっこよさ。

最近は黒と赤のコラボ、と言うことでスターフライヤーと京急@赤い電車の
利用キャンペーンもやっていて、横浜駅でスターフライヤーのポスターもよく見かけます。
うれしいです。オラわくわくすっぞ。

しかしなんとファンクラブまであったとは・・・・驚きました。すごいじゃん。
http://kumonoue-fanclub.net/


梨木香歩は最近になって読むようになった、と言いましたが、実は翻訳者としての作品に接していました。

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

クレア・キップス / 文藝春秋


しかも『西の魔女が死んだ』と『夏の庭』を混同していた模様。なんてこった。
それ作者からして違う・・・。

と言うわけで、気を取り直してみる。

鳥と雲と薬草袋

梨木 香歩 / 新潮社



地名をめぐるエッセイ、と言うよりは随筆集、と呼びたくなる端正な本。
手にとってみて、購入の動機はやはり関西以西の地名が多く見られたから。
それもそのはず、西日本新聞に連載された作品の書籍化でした。
私にとってそれは郷愁でもあり、恐怖でもある。
知っている土地を、知らない人のことばで確認するのは、少し怖い。
その場所を、いま私が知らないときは、もっと怖い。
違いを、確認するすべがないから。
それでも、好奇心を押さえられずに購入。静かで、硬質ないたわりに充ちている作品。
きれいな冷たい小石の、モザイクのかけらのような。
それを手の中に入れていると、だんだん温まってくるような。

いろいろな感情を喚起させられるのは、やはり昔なじみで、
いまは馴染みの地名が多いからかもしれない。。

(大分の山間部にある)「牧ノ戸峠」の地名には、
小学生のころのバス遠足や子ども会の行事でのドライブ休憩で、
いまここで私だけが、それこそ道端の小石のように置き忘れていかれたらどうしようと、
(もちろんそんなことはありえないのですが)
闇雲に不安になった心持を思い出す。
そしてそんな気持ちは、私の旅の原点と言うか、
アイスランドで味わった、存分に満喫したくて満喫できたことがうれしかった
明るい身軽な迷い道と言うか、かすかな喪失願望みたいなものとも結びつくことに気づく。

北九州の「戸畑」には、学生のころ『七人の侍』のリバイバル上映を見に、
心細い思いで、バスの終点で渡し場まで行って、
船に乗って対岸に渡ったときの心細さがよみがえる。

そして横浜市戸塚区の「小雀」には、神奈川に引越すことになったときに
ひっくり返した地図ではじめてみつけた『小雀公園』の、
その名前のあまりのかわいらしさに小躍りした記憶が。とうに本人も忘れていた記憶が。

著述の内容とは直接関係ない感慨も多いけど、それでよいと思います。
そういう心への響き方・共鳴のしかたもあると思う。

ペコロスの母に会いに行く

岡野 雄一 / 西日本新聞社



認知症の母をめぐるあたたかい物語。映画化・ドラマ化もされる様子。
amazonなどでは概ね高評価。
しかし私はいまひとつ受け止め切れませんでした。
むつかしいテーマに、きちんと向き合っている作者の姿勢はすばらしいのですが、
私の中にこの作品を評価する機軸がきちんと存在しないと言うことだと思う。
そういうむつかしさ。
生半可に口にするべきではないと言う気がするし。

家族の問題は、それぞれの家族ごとに個別の色彩があって、
正解は基本ないので、
ないにもかかわらず理想はあるので、ほんとうにむつかしい。
でも『ツレウツ』の例に倣うわけでないけれど、
こういう切り口の作品が出てくること事態は悪いことではないと思う。
これもみかたのひとつということで。
(しかしやはり男性の母親への視線にちょっと九州男児的郷愁要素があるので
そこは点を辛めにしたい。コラ鉄也! というかリリーフランキーと言うか まっさんというか。
忘れたころにでてくるんだよね。
まあこの作品に関しては必須な要素ではあり、充分に効果的ではありますが、
うーん、またもこれですか、と言う思いは否めない)

じゃあなんでココに取り上げたのか、と言うと、この三冊は総て西日本新聞社からみなんですね。

『雲のうえ』の発行元は北九州市ですが、単行本は西日本新聞社刊。
『鳥と雲と薬草袋』は連載が西日本新聞で、新潮社刊。
『ペコロスの母に会いに行く』は地元長崎で話題になっていた自費製作本を、
西日本新聞社が単行本化したものだそうです。

と言うわけでまあ、がんばってるなあ、やるじゃん、と
応援のような郷愁のような万感の思いをこめて(ちょっといいすぎ)とりあげてみました。
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by chico_book | 2013-06-17 02:11 | | Comments(0)