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140字が長いといわれるご時世に長文を書く理由

※タイトルからして長いですね(てへ)

わたしのブログがだんだら長ったらしい理由のひとつに、
本来関係なさそうなものが『有機的につながるさまを記録したい』というのがあります。
それも、出来るだけ正確に。おお、なんだかえらそうやね。
ちょっと頭の片隅をかすめるような、それだけのようなささやかな直感や連想を、
忘れず、見逃さずにつなぎとめたいという思いがあるのです。
なによりそういうながれがたのしいと、信じているのだと思います。まったく個人的な確信ですが。

わたしには、人生の中で決定的に本好きになった瞬間と言うのがいくつかあります。
その中のひとつが『小5の時に行った進学塾の夏合宿』。いわゆる『中学受験対策』の塾の企画です。
中学受験なんてものにまったく縁のない土地柄なのに、どうして紛れ込んでしまったのかと言うと、
たぶんふらっとかかってきた営業電話に、お調子者の母親がほいほいのっかったというだけではないかと思います。いまとなってはもう、正確な理由などわからないのですが。
なにしろ、高校にしても学年のほぼ半分は同じ学校に行っていたというくらい、のんきな土地柄でしたから。
もしかして、当時から(家族の中で唯一旅行好きだった)私を持て余していたのかもしれません。
小学3年生の時も4年生の時も、ひとり旅に出されてたもんなあ。
(行先は親戚のところでしたが、私以外の家族は誰もどこにも行ってなかった)
ともあれ、小5・小6の夏休みに、霧島と佐世保に一週間ほどの泊まり込み勉強合宿に参加したのです。

実は私はこの事実そのものをころっと忘れていたのですが、数年前たまたま霧島をドライブする機会がありまして、
なんだかこの風景見覚えがある…?? と、それをきっかけにゆるゆると思い出したのです。
忘れるものなんだなあ。そして思い出すものなんだなあ。
それ以来、夏になると思いだします。30年も忘れてたのにね。
ちなみに私の同学年からは他にふたりが参加。その、私を含めた3人とも特別賢かったわけではなく、
単に好奇心旺盛というかお調子者というかそういうカテゴリー。
ともあれ、田舎の小学校でたんぼの用水路に落ちたり石仏に登ったり、
本を読みながら歩いて帰ったりしていた子供がいきなり『偏差値』という価値観と
バリバリの進学塾の講師に触れるわけです。これはしっかりカルチャーショックでした。
朝ラジオ体操して、一日10時間勉強して、最終日にはキャンプファイヤー。
なんだか時代を感じます。さすがにハチマキはまかなかったと思う。
それにしても中学受験するわけでもないのになんでまたわざわざ。
しかしおかげで、ひとりで飛行機乗ったり
知らない街を地図頼りに歩いたりすることにまったく抵抗のない子供になりましたが。

じつはうまれてはじめて『ユニットバス』を見たのもこのとき。
家族旅行にも行かなかったので、ホテルに泊まったのもはじめてかもしれない。
まったく使い方がわからずおののきましたが、都会っ子さん
(福岡・北九州在住の、生活圏内に『中学受験』があり、ふだんからこの塾に通ってる皆さんです)たちに
優しく教えてもらいました。うれしかったなあ。私の福岡へのあこがれの種はここかもしれない。
そして、そこので都会の子どもたちと一週間みっちりふれあって、何を学んだかと言うと
面白いまんがとかオンナノコトークとか、大きい本屋さんや雑貨やさんのお話でした。
なーんにもかわんない。いまと。
とにかく、まったく勉強と関係のないことをぎっしり吸収して自宅に帰る羽目になるわけでして、
まあ親としてはがっかりにもほどがあったものと思われます。
それにしてはなんで2年も続けていったんだろう。これももう永遠の謎ですが、さておき。

それまで学校のテストしか知らずにほてほて生きていた私ですが、
こういう「受験対策」合宿では当然教科書とは無縁の問題ががんがん出ます。
何しろ一日10時間なので、試験問題をわんさか解きまくるわけですが、そこの国語の問題で、
私はある文章に触れました。そしてものすごい衝撃を受けました。
なにこれ、おもしろい。むちゃくちゃ面白い。
問題文なのでとうぜん『この時作者はどう思いましたか』とか『傍線部分は何を指しますか』
みたいな質問があったのだと思います。
しかし、そんなことはどうでもいい。たぶん私は完全に興奮しきっていたと思います。
早く、早く、早くこの文章の続きが読みたい!!!

その作品がこちら。『どくとるマンボウ航海記』。

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

北 杜夫 / 新潮社



おそらく私はこの時まで「現代生きている作家の小説」をちゃんと読んだことがなかったのだと思います。
いわゆる児童向けの小説か、あるいはこどもむけの古典しか知らなかった。
それはそれでもちろん十二分に面白かったし、たのしい世界だった。でもこの作品はまるで違う。
北杜夫氏のエッセイに存在する、コミカルな軽快さの中にある淡々とした深さ、
静まりかえった冷たさに底知れなさが同居した、なんともいえない上品さ。
当時の私は、斎藤茂吉も、なだいなだもトーマス・マンのことも何も知らなかった。
ただ突然、私の人生に降ってわいたこの世界に夢中になりました。

合宿が終わってから、小学生のお小遣いですこしずつ少しずつ新潮文庫をあつめました。
『夜と霧』にたどりついたのも『夜と霧の隅で』から。
もっともこのふたつはさすがに小学生の手には負えず、実際に読んだのはずっと後年になってからですが。
そこから作家ネットワークで、遠藤周作や佐藤愛子も読むようになりました。
遠藤周作に関しては、教会学校からのつながりもあるかもしれませんが。

夜と霧 新版

ヴィクトール・E・フランクル / みすず書房



夜と霧の隅で (新潮文庫)

北 杜夫 / 新潮社



そのあと、中学生の時には『楡家の人びと』に夢中になりました。
江國さんの『抱擁、あるいはライスに塩を』を読んだときに何となく連想したのもこの作品。

楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)

北 杜夫 / 新潮社


・アマゾンレビュー全件星5つ!!(7件だけど)

抱擁、あるいはライスには塩を

江國 香織 / 集英社



奇妙な家族の奇妙な年代記は、おとぎ話のようでもある。
しかしふりかえってみればひとは、それぞれ皆どこか風変わりな一面を持っており、
そこに落とし込まれた不思議のなかのささやかなリアルのひとつひとつが、
小説世界を身近なものにしてくれる。

そこから長々とした時間を経て、庄野潤三や村上春樹にたどりついたりして
現在のあれやこれやに至るわけです。

山田さんの鈴虫 (文春文庫)

庄野 潤三 / 文藝春秋


・タイトルがいまの時期にふさわしい気がするので、あえてこの作品を。

若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)

村上 春樹 / 文藝春秋


・若くない読者が読んでも存分に面白いです。
むしろ春樹が苦手な人に読んでほしいくらいだけど、文体はまあ春樹なので
そこが苦手だと厳しいかも。


夏が終わるこの季節になると自分の人生の扉をひとつ開けた時のことを、まざまざと思いだすのです。
人生の中に眠っていた金鉱脈を掘り当てたときの、身震いするようなよろこび、
そのあざやかさが胸に迫ってきます。
そして、思い出す記憶のある幸福についても。
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by chico_book | 2014-08-31 17:57 | ねこ | Comments(8)

これから観たい映画・2014年秋

ちょっと気合の入った記事が続いたので、軽めのメモというかおぼえがき記事。

これから観たい映画。
なんだかやたらに数があって、わからなくなったのでまとめてみます。

イーダ



予告ナレーションにまさかの多部未華子。
独特の硬さとか暗さ、たどたどしさが戸惑いの雰囲気が出ていていいと思う。

渋谷のシアター・イメージフォーラムにて上映中。
サイトによると終了未定、9/5までは確実に上映、とのこと。
そのうち横浜のジャック&ベティに来るようですが時期未定。
ジャック&べティは、うちから(比較的)近いので出来ればこちらで観たいのですが、
こちらの映画館は(いろんな映画を上映するために)
基本2週間上映なので、タイミングを合わせるのが結構難しいので、悩ましい。

フランシス・ハ



こちらもジャック&ベティで10/4から。都内では、ユーロスペースで9/13より公開。
最近重め・しっかりめのドキュメンタリーをみることが多いので
こういう雰囲気の映画を久しぶりに観たい。たのしみ。
主題歌がデヴィット・ボウイの『モダン・ラブ』の映画、ということで
私が連想するのは映画『汚れた血』。この疾走感。



この映画のジュリエット・ビノシュがあまりにも美しくて、
いまだに彼女にそのイメージをかぶせてみてしまう(この動画には出ていませんが)

プロミスト・ランド



これもジャック&ベティで10/4から。
ガス・ヴァン・サント監督の名をはじめて知ったのは『マイ・プライベート・アイダホ』で、
マット・デイモンとえいえば『グッド・ウィル・ハンティング』、と言う訳で
二重に追悼に充ちたイメージ。ご冥福をお祈りします。



このころからキアヌ・リーヴスの声とかしゃべり方が好き。

私のなかで、ロビン・ウイリアムズと言えば一番は『フィッシャー・キング』かな。



夜の公園で、裸でぴょんぴょん飛び跳ねてたシーンと、タイトルロゴが大好き。

クイーン・オブ・ベルサイユ


この手の映画も大好き・・・!!
都内ではすでに上映中、ジャック&ベティでは公開時期未定という悩ましい展開。
でも、目標の『映画は月2本まで』を考慮するとちょうどいいかもしれない。

NO



むちゃくちゃ面白そう!!
8/30より有楽町ヒューマントラストシネマで、9/13からはやっぱりジャック&ベティで。
主演は、スペイン語系の映画にはいつも出ている感のある(いいすぎ)ガエル・ガルシア・ベルナル。

お出かけが多いと、この方がそこはかとなくご機嫌を損ねます。
ほんっとーに、そこはかとなく。まさに目にはさやかに見えねども。

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(むす)

機嫌をとってなでさせていただくよろこび。ふわふわのあごのかわいらしいちいささ。
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しずかに、ぐ・・・ぐ・・・と、ヨロコビの声。めろめろ(私が)。

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(油断してんじゃないわよ)、という、無言の視線。ゆるされてなんかいない感じ。

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がーう。
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by chico_book | 2014-08-27 07:45 | 映画 | Comments(3)

タイムカプセルを思いがけず開ける

◎『あしたのジョー、の時代展』の続きです。前回はこちら

練馬区中村橋ははじめて行く場所。
横浜からだと、東横>メトロ副都心>西武池袋と、結構遠い場所になるわけですが、
去年の春からはじまったまさかの直通運転の為・乗り換えなしでたどりつきます。
渋谷と池袋駅での乗り換えが苦手だった私には、なんともありがたい。

・・・が、しかしこれが正直よくわからない。
東急で『大倉山』(横浜市港北区)と『大岡山』(東京都大田区)を
間違えた経験があるだけに。かなりびくびく、何度も確認しながら電車に揺られます。
(副都心線から先は、東武東上線と西武有楽町線・西武池袋線と
2社乗り入れがあるので本当に不安)
ちなみに赤羽(東京都北区)と赤羽橋(東京都港区)もかなりの鬼門。
それでもここは、もう覚えたので大丈夫。

中央線に乗っていても思うのですが、山手線から西の
『関東平野』を実感するだだっ広さ、私はついつい不安になります。何となく。
そんなに高くない山や、みかん山というような、
なだらかな丘が身近にあるような場所での生活が長かったせいかな。
なので横浜や小田急線のような丘陵地帯は怖くありません。
特に怖気づくのが新宿以西の中央線。中央線最強。
高架で見はらしがいいうえに、一直線に、ひたすら西へ西へ運ばれてゆくあの感じ。
見渡す限り建物にみっしりと埋め尽くされた平野、
すきまなくり囲みつくされてる感じ、とでもいえばいいのか。
それでも実際に街を歩くと、武蔵野っぽい風情は好きなのですが、
どうにも高架で見晴らすというのが何か、感覚的に怖い。

ねこのかくれんぼ上手は有名ですが、小動物のなかには、
『広い場所が苦手』な種類がいるようです。
曰く、身を隠すところがなくて不安になるのだそう。すごくよくわかる。
たとえば、モルモットなどが代表のようです。

※音がでます


ちなみに、スイスではモルモットに対して、「ひとりっ子禁止法」が施行されているそうです。
モルは社会性のある動物なので、ひとりだと寂しがってしまうというのがその理由。びっくり。
しかし、モルちゃんと暮らし始めるときはいっしょでも、
いなくなるのはいっしょとは言えません。
二匹のモルが一匹になったら、新しい子をお迎えする、
そのシステムでは『モルモット』無限ループが発生してしまう…!!
これを避けるためにる為に、なんとモルモットレンタルサービスがあるそうです!!(驚愕)
リンクはこちら。すごいなあスイス。
たしかにこの動画でも、やたらすみっこにみんなでくっついていますね。かわいい。

・・・・・・話がそれました。さておき。

練馬区立美術館は、西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。
標識どおりに歩いていくと、ほどなく到着。大きな公園の中にある、静かな建物です。

一階と二階に展示があるので、ゆっくりと回ります。
見どころがとにかく多く、読み込んでしまう資料が多いので、
結構時間をかけて鑑賞しました。

まんがの生原稿の美しさ、迫力もさることながら
『あしたのジョー展』でなく、『あしたのジョー、の時代展』ということで、
当時の世相を反映した展示が盛りだくさん。ものすごい情報量。
CMやポスターなどのほかにも、力石徹の告別式の祭壇も再現・設置され、
当時の資料がふんだんに展示されています。
まさに知っているような知らないような世界。みっしり読み込んでしまう。



兄が読んでいた『すすめ! パイレーツ』(週刊少年ジャンプ連載、1977-1980)を、
むちゃくちゃ面白いギャグマンガ、として私は当時読んでいました。
そしてその中に登場する無数の世相を切り取った細かいねたの源流がここにある!! 
なんというタイムカプセル! そうか、これだ! 
子供の私が訳も分からずゲラゲラ笑ってたのって、ここから来てるんだ!!
というような情報が、あらゆる角度からみしみしつながるわけです。
自分でも知らなかったような、(ミッシング)ピースがはまりまくる快感。

たとえば、『『ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900』に行ったときには、
そこから70-80年代の少女漫画家さんたちが、どれだけ美しいもの素晴らしいものに心ふるわせ、
そこからよきものをくみとって作品に反映させてくれたかが伝わって身震いしました。
はじめて見る絵でも、ああ、この世界、わたし知っている、と思わせてくれる、地続きな何か。
対象にひたすら寄り添おうという気持ち。
心魅かれて身動きが取れなくなる、その中のナニカをつかみ取りたくてたまらない情熱、切なさ、
そしてつかみきれないもどかしさ。

そんなこと、身震いするようなゆたかなモザイクが、ものすごくつまっています。
時代を知るというのは生半可なことではないのだなあと思える。
知っている人には懐かしく、うっすらのひとには(私のような)感慨を、
知らないひとには新鮮で興味深くおもえるのではないかしら。
素晴らしい展示です。
こぢんまりした美術館ですが、濃厚に圧縮された素晴らしい内容です。
しかもこれで500円なんてちょっとありえない。絶賛お勧めします。
9/21までなので、わたしも出来ればもう一度行きたいくらい。
ほかにも行きたいイベントが多い時期なのでちょっと厳しいけれども。

※最終回の内容がわかる動画です。ネタバレ避けたい方はご注意ください。


のりちゃんのあのシーンも、がっつり原画展示あり。
(この動画にはありません。原作を読んでる方には、これで伝わると思います。
私の脳内では猿山くんで再生されますが)
一見おとなしい、ごくふつうの女の子が腹をくくった時の怖ろしさとか容赦のなさ。まじこわい。

にしても葉子さんと千尋(『千と千尋の神隠し』のヒロイン)は、
2大
『うっかり夢のような男の人にめぐりあってしまったせいで
今後の人生を(その運命に)支配されてしまいそうでえらいこっちゃこれからたいへんね女子』
でございます。私の中で。
『レオン』のマチルダは、そんな運命を織りこんで、
自分なりにこなしていけそうだけど、このふたりは結構支配されそうな気がする。
(と、架空のキャラクターの今後を無駄に心配してしまう訳ですが)

そして、私のなかで寺山修司からの流れと言えば、何といってもこれ。
少女革命ウテナ

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by chico_book | 2014-08-21 04:18 | イベント | Comments(2)

穴埋めは地道で愉しい作業

70年代から80年代にかけて、子供時代を過ごしました。
九州の小さな町で、それこそ出島から世界を垣間見るように、少ない情報にすがりついて読みふけり、
ひたすら思いを馳せておりました。と言うと少し大げさすぎるかも。
でも現代のような情報の洪水のさなかからふりかえると、
そんな気分になるのです。

もちろん新聞もふつうに存在したけれど、テレビは民放2局しかなく、
しかもNHK至上主義の家庭でチャンネル権は親にしかない、基本的には『見ることが悪』な存在。
しかしそう主張し続けた、いまや後期高齢者の親世代が朝から晩までテレビ漬けなのに
なんともはや、な感慨がないわけでもなく。


とりあえず本を読むことは推奨されたので、ひたすら文字情報にすがる子供時代でありました。
図書館に行くために学校に行くような。
毎日ランドセルしょったまま、読みながら歩いて帰っていた。危ない。
そして(田舎で、まわりじゅうすべて知り合い)ご近所の皆さんに軒並み怒られてました。
ていうか、怒られてもやめてなかったのね。
ネットなんて当然ない。なにしろ、電話にカバーがかかって「お電話様でござい」と、
玄関に鎮座ましましていた時代の話でございます。ザ!昭和!!

町中に本屋は1軒かろうじてあるだけ。
それ以外に、菓子パンやアイスクリームや日用品やお豆腐に混ざって妙にピーキーな雑誌を、
スポーツ新聞と同じスタンドに刺して売っている『文具屋』があったりして
(コンビニじゃないよ! おばあちゃんがうつらうつらしながら店番をしているようなお店)
またそういう雑誌を何故かがっちりつかむ子供でございました。なんだろうこのエピソード。

アニメックの頃…―編集長(ま)奮闘記

小牧 雅伸 / エヌティティ出版


(って言ってもアニメ雑誌なんですけど。照。でもこれは、評論色が強い雑誌でございました。
つくづくなんでスポーツ新聞の横に一冊だけ置かれていたのか謎)

そんな中でかすかに漏れ聞こえてくる『東京』のおはなし。
私の住んでいた地区は、古い城下町の中では比較的『新興』に属する住宅地で、
まあ要するにちょっと前までただの野原だった場所です。
当然まわりには空地はどかどかありました。
そこにいわゆる『夢のマイホーム』を建てる人々が移住して来たわけです。
うちもそのなかのひとくみな訳です。
ということはつまり、比較的世代の近い家庭が集まります。
しかも現代と違って、子供の数がやたらと多い時代の20代-30代の『核家族』。
当然、その地区においては短期間に子供激増現象が起きます。
ある意味今どきの豊洲みたいなものかしら。全然規模は違うけど。
そして現在は高齢者だらけになっております。ある意味自然な流れ。

そんな訳で、私が小学生だったころ、少し上の近所のお兄さんお姉さんたちは
高校を卒業すると大学に進学するわけです。
そしてそれはその地区においては、ほぼ自動的に家を離れることを意味します。
理由は簡単。ほとんど通える大学がないから。
選択肢としてそもそも「自宅通学」が存在しないので、みんなためらいなく首都圏に行きます。
その世代がたまたまなのか、あるいはそういう人たちのエピソードが印象に残ってるだけなのか、
首都圏のいわゆる、誰でも名前を知ってるような『有名大学』に進学する人が結構多かった。
あるいは、そういう大学に行くようなひとでなければ、あえて進学しなかったのかもしれないけれど。
ちなみに、わたしらの世代になるとそんな人は激減します。まあそんなもんです。

いまでもそういう部分はあると思いますが、『締め付けの多い』』『相互監視の行き届いた』
田舎の町からいきなり高度成長期ど真ん中の大都会・トーキョーに行くわけで、
かなり激しい『デビウ』ぶりを披露するかたもいらっしゃいます。むべなるかな。
私がおぼえているのは、近所のお兄さん(リンボウ先生の学校に進学)の
『大学1年の夏はじめての帰郷』をそこのうちのおばあさまがお迎えにゆく日のこと。
たかだか4キロ先の駅までのお迎えに、何故か私もついていったのです。
(ほんとに不思議だけど、そういうことは日常だった。
たぶん単に車でドライブというのが非日常で、それを近所で共有するのは
ごくごく普通の感覚で、イベントだったんだと思う。
それだけ近所づきあいが濃厚だったとも思いますが)

そこで駅に降り立ったお兄さんは
長髪・よれよれのジーンズ・派手なジャケット(と言っても、確かグレンチェックとかそういうレベル)・スポーツバッグ
といういでたちに、おばあさまはものすごいショックを受けてくずおれんばかりになったのです…。ひょええ。私がびっくりして支えたので、すごくはっきり覚えています。
それこそうわごとのようにつぶやかれて。

「あれは、あれはうちの○○かえ? うそじゃろ、うそじゃわ」

と言う訳で、いかにトーキョーが魔都で怖ろしくて(無垢な)田舎もんを食い物にするか、
なんというおそろしさよ、という話で、ひと夏みっちりもりあがりつづけました。
盛ってないよ。お兄さんはいたたまれなかったでしょうなあ。

そういう環境だったので、その時代のトーキョーや、サブカルチャーのことはよくわかっていません。
知っている部分もないわけではないけれど、マーブルで、その落差が大きいだけに逆にややこしい。
たとえばソースは当時兄が読んでいた『少年ジャンプ』だったり、
毎年夏に帰郷して来る世田谷や多摩地区に住むいとこたちだったり、
無理やり電波を探し当ててこそこそ聞いていたラジオだったり、
ごくまれに見かけるカウンターっぽい雑誌だったり、NHK教育が頑張った『YOU』だったりしたわけですが。

しかしなんとも歯抜けな情報が多い。例えば寺山修司を(はっきりと)知ったのははたちを過ぎてからだし、
村上春樹も橋本治も大学に入ってから知りました(そして結構たいへんなことになった)
ついでに鴻上さんにもはまりました。
ライブ感がいのちの演劇というのは、いちばん地方に届きにくい分野だったのではないかと思います。

こうしてみると、どんだけ文化鎖国だったんだ、という気もしますね。
しかし高校生の時に(身近かな中での都会・県庁所在地(笑)にあった、あこがれの地)
『パルコブックセンター』で小野二郎氏の『ベーコンエッグの背景』という本を購入して
えらく感銘を受けたりもしています。

ベーコン・エッグの背景 (犀の本)

小野 二郎 / 晶文社


まさかの晶文社。たぶん人生初の晶文社。

要は現役感のあるものにはハードルが高い環境だったのかもしれない。
それでもコバルトやソノラマなど、人気のレーベルは、クラスの誰かが買っていて
回ってきてましたが。高校生には高かったのかな、現役作家の新刊。

そんなわけで、単語だけは知っていてもまるでわからないこの時代のトーキョー。
村上春樹も故・天野祐吉も橋本治も、(このならびでは)ぐっと新しくなって
内田樹も折に触れ話題にするこの時代。
ついで言うと、ワタクシは岡崎京子ファンでもあります。
吉野朔実も演劇に関して大変造詣が深いようにお見受けします。
本橋先生なんて、主人公がアングラ劇団の主宰者で、確か新宿でゲリラ公演とか
やっちゃうお話だったようなな記憶が(しかも美男で富豪の息子。この辺はまあ少女漫画なんで)
松苗あけみも、吉田秋生も、もう、言い出したらきりがない!! 
というわけで、70年代から80年代への流れ、というものに大変興味があるわけです。

もちろんこの映画で70年代というものにぐっと興味を持っている、ということも後押し。
映画『革命の子どもたち』感想が乗っている記事はこちら

そんなこんなで勢いづいて、こちらに行ってまいりました。

練馬区立美術館『あしたのジョー、の時代展

もちろん原作のファンでもあります。
でもこれも、きちんと読んだのはずいぶん遅くなってからのことですが。

すっかり長くなったので続きます。
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by chico_book | 2014-08-18 02:10 | イベント | Comments(0)

おら、わくわくがとまんねえ!!

6年前の旅を思い出しながら、1年前のドラマに思いを馳せてみる、夏の夜。

***アイスランドの旅の続きです***

ものすごくざっくりした地図しか見られませんでしたが、こちらであっているはずです。
この時点ではまた不安。不安交じりにとぼとぼ歩いております。
だんだん不安をたのしめるようになってきたのも、このころ。
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少し離れたところに、ようやく何かの会場らしい光景が。しかしまだ自信は持てない。
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・・・・・・サッカー?なにかの駐車場かな?

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この皆さんの目的は同じでしょうか。だと思いたい。思いたいけど心細い。

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ほんとに「外国からも人がわんさかきているイベント会場」なんでしょうかこれ。逆に微笑ましいというか。
そして私の気持ちも、この広々とした公園があまりに気持ちいいので、
もう違うなら違ってもいいよね、というか。
でも確実に、ポツンポツンと人影は増えております。
しかもちょっとそわそわワクワク感を持ち合わせている人に見えるけど、気のせい?

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だって空もこんなで気持ちいいし。北の短い夏。
旅の最後の日に、満喫できること自体ものすごく幸せ。

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あ、でも、これはそれっぽい。ようやく確信に近い何かが。

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と、テントを通りすぎるとですね!!

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わああ!! 
やっぱりここだったんだ…!! ライブは本当にあるんだ…(感動)。
そして何でしょうか、この会場。素晴らしいリラックスぶり。

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これがこのイベントの公式ロゴなのかな。準備中ずうっと写っていました。

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思い思いにごろんごろんしてみんなで開演を待ちます。
わくわくとリラックスの混在。素晴らしい時間。
真ん中あたりにいるスーツの人は、関係者さんかな??

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少しずつ会場が埋まってゆくので、私もあわててごろん。スペースのあるうちに。
紫外線を親の仇のように嫌う日本人女子にあるまじき無頓着ぶり。

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でもいいの。いま思い出しても楽しくなるこの空。
どなたかちょっとフレームinされているところも、味があってよし。
でも邪魔だったかも。ごめんなさい(今更)
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by chico_book | 2014-08-17 21:38 | | Comments(0)

私を幸せへといざなう本

本の出費に関して、きりがないことと、置き場所がなかなかたいへんなのと相まって、
最近は随分と身を慎んでおり、控えめな人生を歩んでいる昨今ですが(当社比)、そんななかの衝動買い。

『へぐりさんちは猫の家』

へぐりさんちは猫の家

廣瀬 慶二 / 幻冬舎



ねこの本・住宅の本はもういい加減やめないときりないよね、と考えているときに出会ったこの本。
帯には
『猫15匹、犬5匹、人間3人の大家族。みんなで、しあわせに暮らしています』
即決で衝動買い。一撃。そして、いい本でした。見逃さなかった自分が素直にうれしい。

著者の廣瀬慶二氏の肩書は『一級建築士・一級愛玩動物使用管理士』。
いわゆる建築家さんが、徹頭徹尾真剣に、一切の迷いなく作り上げた
ねこの為の家の紹介と、その記録。
明るく素敵な写真、簡潔かつ温かい言葉で説明される『ねこの為の家』、それはつまり
ねこのためのその空間や配慮や設備など。
ニンゲンの為の住宅の情報はとても少なく、その鮮明さ明快さに
心打たれることしきり。そしてなにより、とてもとても参考になります。

もちろんこんな素敵な一戸建てを、わたしがねこの(ちこの)為に建てることも、
アイデアを具体的に(いまの住居に)活かすことも、全然現実的ではありません
(ここで不甲斐ない私は空を見てしまいますが、さておき)。

たとえばなぜねこは(ちこは)壁で爪とぎをしてしまうのか、
それをふせぐにはどうすればよいのか、
あるいはキャットツリーの本来あるべき姿、など、大変興味深い内容がてんこ盛り。
ちこにゃんのおたぬき様対策として、キャットツリーを導入するべきか否か、
ずうっと悩んでいた私にとって、すばらしい一冊となりました。ありがとう。

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「ぅぅなん」

いきもの同士が共生するということ。
あきらめずに粘り強く、『どうすればいいか』にむきあい続けることの大切さ、
そう思わせてくれる存在、その深みにむきあいたいと思わずにいられない愛おしさ、
そのようにいとしい存在がいることのかけがえのなさ。
大切なこともノウハウも、ずっしりぎっしり詰まっている。
そしてなにより読んでいて楽しい、良作です。興味のある方はぜひぜひ。

なお『犬5匹なのに、ねこの話ばっかりやん! 』とお思いの方も
いらっしゃるかもしれませんが、こちらのおうちのワンちゃんたちは日中、
ご家族の方と一緒に出勤されるとのこと。
必然的に、この本ではずうっとおうちにいて数も多いねこさんの話が中心になった様子。

この本のほかに、著者の広瀬さんご自身の設計事務所
ファウナ・プラス・デザイン』のサイトにある、以下のコラムなども参考になると思いますす。
※参考リンク:犬と暮らす家とは?

フォトエッセイである本書とは少し雰囲気が違うようですが、こんな著書も。
ちょっとお高い本ではありますが、おもしろそう。

ペットと暮らす住まいのデザイン

廣瀬 慶二 / 丸善出版




「猫の家 The Cats' House 」公式サイト


ちなみに、ちこにゃんがおしりにしいているのは『保冷剤』。あついもんねぇ。
(ふだんはタオルなどで巻いてあります)
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眠りに落ちる少し前、ベッドの中で、何度も何度も愛でるように繰り返し手に取る本。
そんなわたしに、よりそうふわふわのおなか。しあわせ。
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by chico_book | 2014-08-12 01:44 | ねこ | Comments(0)

真夏にはエキゾチックな美女が似合う

天気が荒れそうだったので、土曜のうちに横浜市内の映画館
シネマ・ジャック&ベティ』にいくことにしました。
なんと朝09:45からの回。平日の出勤時間と変わらないので、ちょっと気合が必要ですが、
なんとかがんばりました。そして頑張った甲斐があった!

『マダム・イン・ニューヨーク』
※結構予告で内容がわかっちゃいます。個人的には『ややわかりすぎかも?』と思うくらい。
わかっていても面白い作品なので大丈夫だとも思いますが、念のため。



公式サイトはこちら
原題は"English Vinglish"です。邦題もわかりやすくてよいと思う。

もともとこちらの予告を観て、予定リストに入れていたので
(都内ではすでに公開中ですが、ジャック&ベティ@横浜ではもう少し先の9/13から)
すこし迷いながらの選択ですが、いやぁ観てよかったです。

『めぐり逢わせのお弁当』



と言う訳で実は予告も観ていない、ほぼ何の情報もないままの鑑賞。
予告動画を紹介しておきながら言うのも変ですが、
この映画に関しては予告で結構語られているので、逆によかったと思います。

英語のわからないはじめての海外旅行あるある、とか、
見事に鮮やかなサリー姿の数々、とか、とにかく圧倒的なヒロインの美貌も含めて、
色づかいの鮮やかさ艶やかさ、息づかいやテンポの軽やかささわやかさ、
とにかく素敵で愉しい映画でした。
NYの学校仲間とか、家族との関係とか、いろいろべたと言えばべたなんだけど、気になりません。
まあいいじゃん、こんなに楽しい映画なら!! 
最近、こういうたのしい映画を観ていなかったので本当にほわほわとうれしい気持ちになりました。

小さなすれ違いやいさかいが積み重なってダメージになってゆくのとおなじように、
ささやかな成功やよろこびが、ただそれだけが自分を助けることができるということ。
それは他のなににもできないということ。
主人公・シャシが日常の中で、家族から得られなかった
「尊重」されることは、何より彼女が自分に対して持っていなかった気持ち。
そして大切なのは「LOVE AND RESPECT」だということ。
恋の嵐や熱情が終わった後、生活という毎日の中で
自分を支え、家族という名の他人に向きあう支柱になる気持ちの礎。

『愛と敬意以外は求めない』といえばこちら。ずいぶん文脈が違うこともあり、感慨深い。
※再掲です
『トーチソング・トリロジー』

トーチソング・トリロジー ENTERTAINMENT COLLECTION GOLD [DVD]

紀伊國屋書店



小さなことの積み重ねが刻まれることにより、
ひとは如何様にもなれることを丁寧に描いた作品。
派手な作品ではありませんが、ときどき読み返したくなります。

『Black!』

Black! (上) (祥伝社コミックス文庫 (26))

原田 梨花 / 祥伝社




海外あるある@英語関連で思い出したこと。、
『日本語でcoolとかgreatっていうのはなんていうんだ? 』
と、アイスランドで聞かれたときに
『うーん「ステキ」かな? 』
と答えてしまった事を思い出す。
帰りの飛行機の中で、もしかして女子っぽすぎたかも、と、
手遅れながらも思い返したっけ。
※相手は男性でした。でも
「Oh,STEAK!! I love STEAK!」
と、盛り上がっていたので、まあいっか、なんて思ったり。

それにしてもインドの女性のあの奥行きのある美しさには
もううっとりしてしまいます。
サリーの凛としていながら絢爛たる美しさ。
日本のお着物でも、はたしてあの感じは出るのでしょうか。
私は一枚も持っていないので、正直ちょっとわかりませんが。

インド系の美女というと、まずなんといってもジュンパ・ラヒリ。
小説家の方をこの文脈で紹介するのは大変申し訳ないのですが、
(興味のある方は検索してみてください。
google先生は『ジュンパ・ラヒリ 美人』とか言い出しております。気が合うなあ。
でも「美女」のほうがぴったりくるかも)
はじめて見たときに
「うそでしょ?」
と思ったほどの美女。現在ローマ在住だそうですが、こんな美女をイタリアに!!
えらいこっちゃ! 街を歩けないのではないかしら、と私が勝手に思い悩む始末。
作品のすばらしさは圧倒的です。
『停電の夜に』をはじめて読んだ時の突き刺さるような痛みは忘れらません。

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

ジュンパ ラヒリ / 新潮社



もうおひとりは女優さん。毎週メロメロになっているのは
アメリカのリーガルドラマ『グッドワイフ』(現在BSプレミアムでシーズン4を放送中)で
法律事務所の有能調査員:カリンダ役のアーチー・パンジャビ。(公式サイト
カリンダまじかっこいー、と、バカまるだしのコメントしか出てきません。
メイキングで衣装あわせで
「ニーハイブーツ+レザー・タイト・ミニスカートが決まった時に、
カリンダのキャラクターも決まったの」
といってました。まじかっこいー。

個人的には、アメリカ在住のインド人と言えばいやおうもなくこのヒト。
ものすごく短いですが。

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by chico_book | 2014-08-11 02:40 | 映画 | Comments(0)

終わらなければいいと願う旅の気持ち

生来無精で怠け者なので、変化を好みません。そのくせ乗り物は大好き。
長距離フライトはしんどいよね、腰痛いし、なんて言いながらも、飛行機に乗った瞬間から
座席まわりの環境を整えて自分好みにアレンジしてしまう。
旅先のホテルでも、真っ先に荷物を並べて『自分の部屋』にしてしまいます。しないと落ち着かない。
一緒に旅したことのある友人に『まーた巣をつくってる! 』と言われたこともしばしば。
最近は一人旅ばかりなので懐かしい思い出。

もちろん体はしんどいし退屈ではあるのですが、それでもたとえば長距離便で
『当機は間もなく着陸態勢に入ります』
のアナウンスのころに感じる、ほんのりしたさみしさ。
いつまでも乗っていたいわけではないのに、早く旅の目的地に(あるいは戻る場所に)
到着したいに決まっているのに。なんだか不思議。
雲の上で、移動中という言い訳のある『態度保留』がそんなに好きだなんて、
自分の決断力のなさにすこし呆れてしまう。
それでも『地上のどこでもない場所』にいること、『地球上のどこにもいないこと』には胸がときめく。
国内線も含めると、それこそ何度も飛行機には乗っているのに
(しかし最近は雲の上でもネットがつながるようですね。オソロシイ)

さすがに今は候補にのぼりませんが、学生時代、本当にお金がなかったので、
九州から東京へ移動するのに高速バスを使ったことがありました。
一部で『キングオブ深夜バス』と呼ばれてる(らしい)東京(新宿)-福岡(天神)間の西鉄高速バス『はかた号』。
参考リンク:キングオブ深夜バス『はかた号』に乗ってみた!
ちなみにいま調べたら『1990年10月路線開設』にびっくり。開設直後に乗ってたのだわ! 
新し物好きと言うべきか貧乏と言うべきか。

何しろ、当時の福岡-羽田飛行機の往復はほぼ定価の5万円、
割引らしい割引は4.5万円にようやくなる程度の『往復割引』(充分高い)と、
出たとこ勝負・空席あるかどうかは運任せの『スカイメイト』しかない時代。
早割も格安航空会社も何もないところへ、往復2.7万円ただし往復30時間(当時)の高速バス。

当方お金はなくて時間だけはある学生。これは乗らずにはいられない。
しかも東京では新宿に到着、そこから『紀伊國屋書店本店』に直行する喜びときたら! 
もちろん基本的に『乗り物に乗ってること自体が大好き』という属性もあってのことですが。
東京で迎えてくれた友人と『ヨーロッパに行けるよね』などと笑いあったなあ。

ちなみに、当時朝ごはんとして(東京行きの場合)諏訪湖SAで
『クラコット・ツナポテトサラダの缶詰・オレンジジュース』
が提供されるのが、なんだかやけにかっこよく思えたものです。
そして、朝日の中、東に向かって中央道をひた走るバス。
こうしてみると、それほんとに平成の話なの、という気もしますが。

ひたすらにずうっとオレンジ色のライトに染まる、聞いたことのあるようなないような
地名が次々に流れてゆく夜の高速を、窓から眺めるときの気持ちを、時折私は思い出します。
割と脈絡もなく、不意うちのように思い出すことが多いので、落とし穴みたいだと思う。
自分で自分に掘ったものになっちゃうけど。

根拠のない、茫漠とした(行き先はわかっているのに
(何しろ高速を走っているとはいえ「路線バス」ですから))不安。
流れてゆく風景と、心に浮かぶとりとめのない気持ち。
それを追うでなく、見過ごすでなく、解き放たれたようななんとも不安なこころもちと、
その自由が持つある種の解放感。
その中で、残るものとながれてゆくもの。流れていったと思っていたのに、
気がつくとまた私の手の中にのこっているもの、とか、いろいろ。

この映画を見て、そんな気持ちを何故か思い出しました。単にヨーロッパに行きたくなったのかもしれないけれど。
大いなる沈黙へ -グランド・シャルトルーズ修道院



岩波ホールにて。堂々3時間弱(正確には2時間49分)のドキュメンタリー。
何しろ
”監督がたった一人で撮影・音楽なし・ナレーションなし・自然光のみ』戒律の厳しい修道院の日常をそのまま記録した映画”で、タイトルは『大いなる沈黙へ』(ダメ押し)”。

こ、これは…寝てしまうのではないかしらという不安と、それを上回る期待でそわそわと席に座ります。

※ちなみに、非常に混雑しています。私は15時からの上映回だったのですが、14:15には列ができていたので並びました。座れないひとがでるほどではなさそうです。
ただ、ふたり以上で並んで座るのはむつかしいかもしれません。
劇場の方によると、18時からの回が若干空いていることが多いらしい。ちょっと意外。
場所柄なのか、劇場の性格なのか、なかなかに興味深いですね。

結論から言うと、大変素晴らしかったです。
知らない世界のドキュメンタリー映画、ということで、もちろん好奇心から観に行ったのですが、
そんな簡単さや生半可さを静かに凌駕する、それが力強さや圧迫ではなく、静かにゆきわたってくる作品。
そしてそれが力を持って(圧を以て、というべきか)迫るのではなく
『ただ静かに存在する』ことの超越と自然と淡々とした強さ。

この映画を見ている間、私は確かに旅をしていました。
旅というよりは、生活していた、あるいは同化していた、なじんでいたという方が正確かもしれない。
ずっと私はその場所に、その空間にいたかった。解放されたくなかった。
長い静かなこの映画が、終わらなければいいのにと思っていた。
頭の片隅で、集中力のないことに
『この暑い日にちこは大丈夫かしら、休日くらいちこと一緒にいればよかったかも』
という思いがよぎったりもしたけれど、それでも。

信仰を持っていない私は、それでも祈りについて考えることはあります。
強い気持ちや希望、耳を傾けること、自らをささげること、
私が何者かになろうとすること、そのとどかなさ、
あるいは既に手中にしていたものの豊かさ、豊饒さ、
謝意や決意や反省や愛おしさやそれらのすべてが、
こころにぼんやり浮かんでは流れてゆく。

この映画に向き合うことによって、
いろんなものが澱のように沈んでゆく時間を持つことができて本当によかった。
瞑想のような追体験のような、コミットそのものを拒まれているのに、
漏れ出して伝わってしまう部分があるような、不思議な作品です。
9/13から横浜のジャック&ベティでも上映予定とのこと。
スケジュールは相変わらず厳しいのですが、いろいろ調整してもう一度観にいけるといいけど、どうかな。

・修道院の情報はこちらがわかりやすそう。フランス観光局のサイトです。

あ、ねこも登場しています。
素晴らしくいいタイミングで登場します。
最重要。
ものすごく印象的で素晴らしくかわいい。
まあねこはいつでもどこでもそうですけど!

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「……」
(当然すぎるのでしゃべる必要すらないおねこさま。濡らしタオルをかけられてご機嫌です)

※映画作中の猫とは関係ありませんが『フランスの至宝』ともいわれる『シャトルリュー』という品種の猫の名前の由来は、こちらの修道院だという説があるようです。

f0257756_2135596.jpg

・画像はWIKIよりお借りしました

頭部は丸いのですが、頬はたっぷり丸々としています。


世界の猫図鑑より引用。なんと魅力的な表現!

ちなみにこの日は映画のはしごをしました。一本目はこちら。
『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』



こちらも面白かったです。『カストラート』が大好きな私にとって、大変満足。
この手の映画は作品うんぬんよりももう音楽でりゃんはんくらいつけてしまいます。
こひばりちゃん(参考資料:森薫『エマ』)になって失神したい!! 
イルファリネッリ!!(もう粉々にして! という意味だったはず)



少し長い動画ですが、この3:55ころのこれです。是非ご堪能あれ♪
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by chico_book | 2014-08-06 02:20 | 映画 | Comments(0)


ねことか本とかまんがとか、と言いつつ映画にじわじわ圧される幸福


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