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空からテヴェレ川にさようなら

※イタリア帰国の日に停電が起きたという話のつづき。
今回ラストです。
その1 その2

運転手さん、腕をぐるぐる回してこっち来い、と、合図。
なんというたのもしさ。キャーかっこいい♪
こけつまろびつ、タクシーの前に。
ずっしり重いトランクを軽々と持ち上げ、積み込んでくださいます。
よろよろと後部シートに乗りこむと、隣にはバリっとしたスーツ姿の紳士。

『ぼ、ぼんじょるの』

ちょっとカルロス・ゴーンさん風のお顔立ちの、ポルトガルの方。
(12年も前のことなので、あくまでイメージ映像)
ありがたくも、相乗りさせていただくことになりました。
なんという紙一重。でも、とりあえず安心。
シートの上で安堵のあまりぐずぐずになりかけます。
ビジネスマンさんはむっちゃパリッとしてるのに、
バックパッカーすれすれの、よれよれ姿で乗りこむ(申し訳ない)

明るい陽ざしの中、ローマ市街を快調にぶっ飛ばすタクシー。
ものすごく道路がガラガラ。渋滞で有名なローマなのに!!
いま思い返しても不思議。
停電ということは、信号はどうだったんだろう…
まったく印象にありません。これも不思議。
綺麗な街並み、明るい陽ざし、
濃い緑のことはぼんやりと記憶にあるけれど。

とにかく車がいなかったこと、
タクシーが飛ばしに飛ばしていたこと、
運転手さんがずうっと、からだごと後部座席にむけて
(前を見てー!!、と、小声で絶叫)
しゃべり倒しだったこと。
運転手さんは英語がわからず、
私が英語以上にイタリア語がわからず、
イタリア語を解するポルトガルのビジネスマンさんが、
(だいたいわかるけど、全部ではないそうですが)
時折英語に変換して伝えてくださいます。

その中で、私がダイレクトに理解した
運転手さんの(唯一の)イタリア語は
『TUTTI ITALIA』(TUTTI=ALL)
だったこと。どうやら停電の範囲のことのようでした。
・・・・・・停電範囲はイタリア全土とは!! ようやく気づきます。
それはえらいこっちゃ。
ということは空港も停電なのかな。
たどたどしくたずねてみると、『maybe』とビジネスマンさん。
下唇を突き出して、首をふってみせる。なんともヨーロピアンなしぐさ。

でも私の心中では、もっとエラいことになってます。
『このタクシー代いくらなんだろう…』

タクシーを使うことを全く想定していなかったので、想像もつかない。
カードは、はたして使えるのかしら、と、今朝のホテルを思いかえす。
頼みの綱のガイドブックはトランクの中。とほほ。
旅の指さしイタリア語も、トランクの中。うわー。
もうあとは、駅と空港だけだから問題ないと思ったんだよねぇ。
朝、トランクから出して、手荷物にすればよかった(後悔)
停電はせいぜいホテル内だけだと思ってたんだよね。
つくづく生ぬるい。ああ。
ガイドブックで流し見した、いい加減な記憶によると
タクシー代はたしか(当時)40~50ユーロくらいだったはず。
相乗りだとどうなるのかな。
それともこのパターンって、海外旅行では
『とにかく白タクには気をつけましょう』
に該当するのかな。
でも他に選択肢なんてなかったし……。
飛びつきすぎたかな……。
いやいやでもでも・・・・・・。

そう、そのとき私のお財布には、
30ユーロくらいしか入っていませんでした。

もう帰るだけだから、現金は電車のチケット代と
(電車代は、当時9ユーロくらいだったはず)
空港でのお小遣いくらいでいいや、と考えて、
前日スーパーで散財してしまったのです。
旅慣れたヒトぶって、ユーロ使いきっちゃうよ、ヘイヘイ! 
とばかりに暴れ買い(と言っても、スーパーでですが)
したんですよねぇ。激しく後悔。

こわー。マジで怖い。……日本円ならあるんだけどだめだよね。
一応、駅に向かう途中で確認したところにあった
銀行の両替機もATMも『停電』でとまっていたのです。

最悪泣きついて(そして少しチップをはずんででも)
めんどくさいカード決済してもらうしかない。してくれるかなあ。
怒りだしたりしないかしら。

※検索したところ、2014年現在の情報ですが、
ローマ市内・空港間のタクシー料金は定額48ユーロ。
直通電車は年々上がって14ユーロ。
ただし、現在はシャトルバスが各社参入していて人気があるようです
(だいたい5-8ユーロ)
参考リンクはこちら:
フィウミチーノ空港からローマ市内へのアクセス

空港までは33キロ程度。30分もかからずに到着。
最高に気持ちいいドライブのはずなのに、
私は不安で踊りだしそうになってました。
言葉は通じないわよれよれだわ踊りだすわ、
これ以上不審な人物になりかけるのをかろうじてこらえる。
空港の建物が見えてきて、降車エリアに車がはいりかけた時、
運転手さんがようやくいいました。
「じゃあ、ひとり25ユーロね」
・・・よかったぁ!! 本当によかった。
前日、電車のチケットをあらかじめ購入しようかどうか
迷ったんだけど、買わないでほんとによかった・・・!!
そこで9ユーロ使ってたら、足りませんでした。
ほんとにぎりぎり。
※それにしても大変良心的な運転手さんだと思います。
イタリアありがとう。グラツィエミッレミッレ。

さくっと現金でお支払。
スマートな笑顔をのこして、ビジネスマンさんは
すごい勢いで走っていきました。
すたこらさっさと、言いたくなるイキオイ。
ほっとした私は、
電気のついてない薄暗い建物にゆっくり入っていきます。

アリタリアのカウンターへ。香港便は予定通り。
香港でなんとか遊べないかな、と生ぬるく見込んで、
あえて選んだ香港経由ですが、空港を出て市街へ行くには
ちょっと余裕がありませんでした。とほほ。
(そのぶん空港でみっしり遊びました)

ちょっと魂が抜けかけた状態でチェックイン。
チェックインカウンターでは、職員さんが大わらわ。

なんと、ベルトコンベアーが動いていないのです!
停電だから!! ひゃぁ!  

と言う訳で、
トランクの重量を昔懐かしい『体重秤』でゴロゴロっと計量、
そのあと職員さんがひとつずつ抱えて奥に持ってゆくという、
見ているだけで(そして思い出しただけで)
汗が噴き出てきそうな光景。

そして、チェックインの手続き。
私とならんでチェックインするのは、ツアーの添乗員さん。
日本のパスポートをどっさり出していました。
添乗員さんつきのツアーでも南回りとかあるのね、
この方も朝から大変だったんだろうなあと、ぼんやり思う。
こんなトラブル、解決する係だもんね。ほんとおつかれさま。

ところが、パスポートを回収するときに、
添乗員さんが間違えて私の分をもっていきそうになったのです。
(そしてツアー参加者の方のパスポートが私のもとに)
あ、あぶない!
もちろんすぐにかえしてもらい、問題なかったのですが、
ひやっとしました。安心して気が抜けていただけに。
たしかにパスポート、表紙だけでは区別つきませんけど!!

スパイ映画とか事件とかで、パスポートのすりかえなんて
「ないわー」
と思ってましたが、意外とこういう、単純なことかもしれません。

飛行機は満席。もしかして振替えとかあったのかも。
ちゃんと間に合って、席もあってよかった。

いつもたいてい個人旅行だけど、
個人旅行は最後の最後までドキドキします。
職員さんの努力も(おそらく)あって、ほぼ定刻に離陸しました。
カードも使えないし、手持ちが5ユーロもなかったので、
お水を一本購入が、せいいっぱい。だいじにちびちびのみます。
名残惜しく、ペットボトルのラベルの
『ミネラーレ』の表記を眺めながら。

と言う訳で
『残していてもしょうがない、とは言え、
お金をぎりぎりにしすぎない』

という、
旅の教訓が(またひとつ)増えた、夏の終わりの旅の思い出でした。
夏がはじまる前に記録。特に旅の予定のない夏ですが。
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by chico_book | 2015-06-07 11:06 | | Comments(0)

なかなかアリヴェデルチ出来ないローマ

こちらのつづきです。

朝ごはんのレストラン会場は地下で、そんなに天井が
高いわけでもないのですが、なんとも優雅なアーチ形。
私はこの空間が大好きでした。
ちいさいホテルなので、広すぎないし、ひとも多すぎない。
その場所が、なんだか混乱しています。
いつもよりひとがおおくてざわざわしている。

ここで、カメリエーレさんから、
停電継続中であることを説明していただく。
ものすごく申し訳なさそうに

「あたたかいものが用意できないんだ」

とのこと。

でも、だいたいいつもならんでいるのは、
ハムとチーズとヨーグルトとジャム、
珈琲に紅茶にジュース、ミルク、シリアル。
そんなに雰囲気変わらないわ、と、その時は思いました。

「でもゆでたまごもないし、トースターが使えないからで、
あたたかいパンが出せない。それに」

ものすごくシリアスな表情で。

「カプチーノが出せないんだよ。ジャポネーゼは大好きでしょ」

いやいや全然問題ありません。あったかい紅茶はちゃんとあるし。
この当時はコーヒーをまったく飲まなかったので
全然問題なし。
プンパニッケルもシリアルもあたためなくても
充分おいしいです。
満足満足、でも手早くごちそうさま。さあ、気合い。

えっちらおっちら最上階まで登って、
みちみちに重たいトランクをさげて
よろよろと階段を降ります。フロントは一階。

そして予想はしてましたが、フロントもやっぱり大混乱。
ひとでごった返しています。
あらら、今日はチェックアウトのひとがそんなに多いの?
と思いきや、
なんとなんと、停電のため
カードリーダーが作動せず、
クレジットカードの精算を全部手書きで対応
といういきさつなのでした。なんてこと。

私もおとなしく順番に並びます。
ドイツの方がとても多い。
やっぱりバカンスはうつくしい南の国なのかな。
極東から、わざわざ南回りできたジャポネーゼに
言われるのも心外でしょうが。

イタリア紀行(上) (岩波文庫 赤405-9)

ゲーテ / 岩波書店



みんなスクエアなリュックに国旗をつけていて背が高い。
背の低い私は、まわりを囲まれると不安になるほど。
みんなそれぞれ、いろいろやりとりしながらなので、
すすまない精算の列。
大丈夫かな。この段階でかなり不安。
わたし問題なくチェックアウトできるかな。
それと飛行機は大丈夫かしら。

いよいよ私の番が来ました。
現金があれば話が早いんだろうけど、
とりあえず、精いっぱいにこにこクレジットカードを差し出す。
オッケィ、と、おじさんは(たぶん慣れない)
日本語の名まえのアルファベットを、一文字ずつ書きうつす。
手書き。ていねいにアルファベットを読み上げながら。

アルファベットで表記した名前のことを、
日本人は『ローマ字読み』って言うよ、
と、チェックインの時にお話ししたら
すっごく受けたことをぼんやり思い出しつつ、
わたしはじいっとおじさんを見つめる。
「できた! 確認して! 」
と、素晴らしい笑顔をいただいて、少し訂正したりのやりとり。
「これで大丈夫。じゃあね、元気で。気をつけて帰ってね」
ありがとう。アリベデルチ!!
まっすぐにテルミナ駅に向かいます。
とにかく空港までたどり着かないと。
この段階で、たしか9時前。

果たしてテルミナ駅も、同様の大混乱でした。
駅前・チンクエチェント広場に、既に人がこぼれている。
土曜の午後の渋谷駅、には少し及ばないかも?
それでも大変な混乱。

えいやえいやと駅の構内に入ると、
電気がつかず、電車が動かず、券売機も稼働せず、
つまりたいへんひっそりしている。
ただひたすらひとがたくさんうろうろしていてざわめきだけが
濃い霧みたいに空間に充ちている。
ひとの声がわんわん反響する空間。
・・・・・・どゆこと??
そうです。そうだよ。気づいてなかった。
電車が動かないんだよ! だって停電だもの! 
電車だもの!!

そこに至るまで気づかなかったのです。
とんでもない間抜け。
9月の終わり、ローマの朝、つよい陽ざしの中で
どっと変な汗が背中に出ます。なんてこと。

とぼとぼと、構内から外に出る。なんとか人をよけながら。
昨日買い込んだおみやげで重たくなったトランク、
そのお土産を購入したテルミナ駅内のスーパーを、
途方に暮れてちょっと恨めしく眺めなたりして。
まいったなあ。なんとかして、とにかく空港に行かないと(2回目)
バスとかなにか、振替輸送とかあるのかな…?

地べたに座りこむひと多数。
ふとみると、入り口出てすぐの地面に、とぐろを巻いて
からまりあってるアジア系3人組。シチリア州の旗みたいになってる。

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バックパッカー風だけどこざっぱり。
Tシャツがまあたらしいかんじの、男子ふたりと女子ひとり。
「どうすべ」
「あつくなってきたねぇ」
「体いたいんだけど」
!! 日本語だ!

こういう時は、迷ったら負けだと、勇気を出して声をかけることに。
「あの、日本の方ですか」
「ああ、はい」
「これ、やっぱり停電だから電車動かないんでしょうか」
「そうみたいですよ」
「どちらまで」
「昨夜のおまつりで朝まで遊んでて、
今日はこれからミラノに電車で移動の予定だったんですけど、
どうしようもなくて。
いま、現地の友人が車で迎えに来るのを待ってるんです」

旅先で、こういうささいな会話が本当にありがたい。
なんにも現状変わってないけど。

「私はきょう帰国で、フィウミチーノに行かなくちゃなんなくて」
3人いっせいに「ああーーーー」と残念な表情になる。
「振替え輸送とか何かないかなあと、
探さなくちゃと思っているんですけど」
「そうですね…僕らもわからない。
日本だったら、確実に対応するけどどうかなあ」
「ありがとうございます。ちょっと探してみますね。よい旅を」
「そちらもよい旅を」
ほんと、どうすべ。そう思いながら人の波をくぐります。
いまこうして書いていてもはらはらしてしまう。
12年も前の、自分のことなのに。

エアポート、とか、フィウミチーノ、とか何かそういう掲示ないかなあ、
ときょろきょろしていると、聞こえてきた声。

「エアポート! フィウミチーノ!!」

そう、まさにそれ。 ・・・って、え!!??
声の方向を見ると、タクシーの運転手さんが叫んでいます。
きょろきょろっとして、さっさとドアを開けて
車に乗りこむ運転手さん。
空港いきってこと? だよね?? 
乗り合い? 乗り合いタクシーってことなの?? 
ちょちょちょちょっとまった!!

「すっくーじ!! エアポート! 
TAKE ME PLEASE(とかなんとかてきとう)」


この旅で一番気合の入ったイタリア語(最初のひとことだけですが)
ローマで、イタリア語をイタリア人に向かってどなるなんて!
カジュアルイタリアンの『ぼんじょるのーぷれーご攻撃』とは違うぜ!
なんて、陶酔する余裕もなく。

※ちなみにこのほかの、
『イタリア人にイタリア語を素で(重要)発言した』
のは、ボルゲーゼ美術館のコインロッカーのカギを、
トイレの洗面台に流してしまったときに対応してくださった職員さんに
伝えた『Grazie mille!!』です。

もうすこし、つづいてしまいます。
もう一回くらいになりそう。
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by chico_book | 2015-06-06 21:21 | | Comments(0)

永遠の都、大停電の夜と朝

6月は、私がアイスランドを旅した季節。
いまもあの場所は、あんなにもうつくしいのかな、
と、思い出してひとり深呼吸をします。
背筋を伸ばして、梅雨の合間だけですが、高い空を見上げて。
ほんとうにありがとう氷島。ほんとに行ってよかった。
なんという宝物。
そして空港で出会ったドイツ人ファミリーさんは本当にやさしかったなあ、
などと、しみじみと思いかえす季節。
またことしも無事にめぐってきたことが、素直にうれしい。
ほんとうに旅はいつもどこでも楽しい。
たのしいけどラクではなくて、それなりに大変だったりもします。
でもそこもふくめてオールオッケイ。

そんなわけで、別の旅の思い出をちょろっと記してみます。
2003年イタリアの旅。
遅い夏休みとして、9月後半に
フィレンツェ・サンマリノ・ローマをうろうろしました。
実は、このときがはじめてのヨーロッパ。
往復6万円香港経由、まさかの南回り。

アイスランドではコンサートの翌日に帰国でしたが、
このときも、お祭りの日の翌日が帰国日でした。
夏休み枠で旅行するとありがちなのかもしれません。
ゆく夏を惜しむ『白夜祭』が開催されていたのです。

La festa della NOTTE BIANCA”。
※リンク先はイタリア版WIKI先生。
なんと私が訪問したこの年・2003年が初開催だったようです。
その後も、順調なイベントのようでうれしい。なんとなく。

にぎやかに夜通しお祭り騒ぎがつづくつづく。
ローマっ子たちの歓声が、
波音のようにいつまでもいつまでも聞こえる夜。
でもワタクシはとっととホテルにこもって、
お部屋を満喫しつつ、
たのしいたのしいパッキング大会(地味)。

旅の終わりに、テルミニ駅にあったスーパーマーケットで
グリーントマトのジャムとか、リゾット用のお米とか、
重くて珍しいものをたくさん買い込みました。
それをわくわくにまにま、出したりしまったり。
あーでもないこーでもないと、たのしくつめつめしておりました。
機内で眠ればいいや、と余裕の夜更かし気味。

ちなみにお宿はこちら。
Hotel Villa delle Rose
名前がなんとも優雅なこと。
※リンクはトリップアドバイザーのサイトです
(公式HPは、なぜかうまく開かなかったので遠慮しました)

たしか一泊90ユーロ(当時)、こぢんまりした三ツ星ホテル。
以下の条件でさがした結果です。
たしかホテルのHPから直接予約したんじゃないかな。

・一泊100ユーロ以下
・豪華さはいらないので(そもそも無理だし)
こぢんまりこざっぱりしていてほしい。
・バックパッキングなノリは無理
・出来れば古い建物

古い貴族の館を改装して作られたということで、
最上階だった部屋は(といっても3階もしくは5階建てだったと思う)
体育館かと見まごうほど天井が高うございました。
おまけに何かの間違いではないかというほど広かった。
ひとり旅なのに。
その高い天井へ、ジェイコブズラダーよろしく
すっきりまっすぐにのびる、高いアーチ窓。
それを覆う鎧戸と重々しく垂れ下がるカーテン!! 
なんといううつくしさ。当然うっとりしました。しまくりました。
カリソメとはいえ、そこが自分の部屋だなんて!存分に味わい尽くす幸福。

しかし実はその、優雅極まりない鎧戸もカーテンも、
重いわ届かないわ回らないわ
(高すぎて手が届かないので、カーテンを扱う金具や
鎧戸を開閉するための蝶番に似たなにか(名称不明)が
ついていたのですがこれが固い重い動かない)
で、
まったくもって使いづらいという事実を知ることが出来たのでした。
……知は力なり、ってことかな、もしかして。

これってたとえば
『ルイ・ヴィトンのトランクはめちゃくちゃ重たいつくりだけど、
自分で持つことが前提になっていないので問題ない』
というのと同じような話なのかな。
(伝聞情報です。ヴィトンのトランクなんて持ったことないのでわからない)
「窓開け係」がいることを前提にした仕様なのでしょうか。
それはそれで夢想の広がるお話。

ともかく、すばらしく素敵なホテルでした。
こんもりと緑に覆われた小さな中庭、
ホテルのフロント前のサロンは、
天井画と優雅な細工の壁と柱が鎮座。
ソファーでゆったりと、ローマ市内の地図や
おなじみ『ローマの休日』のアン王女がベスパを
運転している写真入りの、レンタルバイクのチラシを眺めたりしました。
(大型ホテルの優雅さも捨てがたいけど)
このサイズ独特のひっそり感、B&Bほど距離が近くない
バランスがとてもよかった。

テルミニ駅の周辺は、
(大都市の中心となる駅の周りが得てしてそうであるように)
治安の面でやや微妙な評価を下されがちなエリアです。
実際、駅前の広場にはスリが多いから気をつけるようにと、
さんざん言われていました(2003年当時)
ただ、このホテルは、駅から350メートルという近さですが、
にぎやかな側の反対側。
少し落ちついた、ちいさいホテルや商店がぽつぽつとあるエリア。
テルミニ駅近と言うのは、バス路線が頭に入っていない
身としてはとても楽でした。

ほんのりお外のざわつきを、重くて開かない窓の向こうに感じながら
優雅なお部屋に早々と引上げ、高い高い天井と
ねこ足のバスタブを満喫する夜。
やはり途方もない幸福感に包まれていたなあ。

お外のみんなは元気だわね、と、ほほえましく思いながらも
ようやくパッキングを終わらせ、それではひと眠りしますか、
というところ。

飛行機はお昼前にローマ発。
歩いて5分のテルミニ駅から空港までは電車で20分。
8時半頃に出れば余裕を見ても9時半までには空港に着くよね、と言う算段。
2時間以上余裕があれば、まあ大丈夫かな。
目覚ましをセットして、
機内持ち込みの本をえらんで、にまにまとベッドにはいる活字中毒者。
さよならローマ、おやすみなさいイタリア、たのしかったよー、
と、いたって満ち足りたこころもちで、
やはり興奮しててあまり寝付けずにおりました。

ところが。突然『ブンッ』というような、大きな音が。
振動とともに、電気が消えました。部屋中の。
同じタイミングで、外でも「オーゥ」という、
ため息のような驚きのような声がした。
て・・停電??

高さのあるベッドを降りて、ハイジのようにぺたぺた歩く。
手探りで壁にある照明のスイッチを押す。
何も起きないまま。

うわーこれ停電だ! 

なんとか窓に近寄ってみるも、重たい鎧戸はやはり開かず。
しょうがないので、重い鎧戸ごしに外の様子を伺おうとする。
まさにフランクフルトのハイジ気分。
そしてハイジよろしく、なにもわからない。
でもたしかに、さっきまで鎧戸ごしにとどいていた街灯りがなくなっている。
外では騒ぐ人たちの声。イタリア語だし、
なにをいってるか、まるでわかりません。

とにかく、このホテルだけの問題でないのなら、
まあしょうがないよね、と、
私はとっとと眠ることにしました。

※当時の記事を調べたら、午前3時半頃に発生したとのこと。

とりあえず寝ましょう。それしかないわ、真っ暗だし、
と、ベッドに入りました。

実はこれ、イタリア全土・5600万人に影響を及ぼした
『2003年イタリア大停電』だったんです。

(以下抜粋)
首都ローマでは、9月28日はちょうど白夜祭(La festa della nottebianca)で町中に繰り出した150万人の若者達で、 中心街は夜明けまでにぎわっていた。しかし、皮肉にも白夜の最中の午前3時半に突然ブラックアウトし、 それから夜明けまでの数時間、家に帰りそびれた50万人は、真っ暗闇の白夜を路上で過ごさざるを得なかった。 だが、待ちかねた朝はおろか、昼も過ぎ、夕方の5時になってやっと電気が戻る有様で、 13時間半の大停電は、戦後最長という不名誉な記録を残した。
(中略)
計算根拠は明らかではないが、冷蔵庫の中の物が融け出したり、牛乳がいたんだりの食品の被害が、 一家庭当たり平均20ユーロ、一般商店の被害総額はおよそ1億ユーロとConfucommercio(イタリア商業連盟)は発表している。

(中略)
大停電は何故起きたのか?

隣国スイスのドイツ語圏の山中で、折からの嵐により古い大きなモミの樹が倒れて高圧電線に接触した。 それが災難の始まりであったと言う。

(抜粋ここまで)
参照記事:原発なき先進国イタリアの悩み(その2)

もちろんその時の私は、そんなことまーったく知らず、
さよならまた来るねイタリア、むにゃむにゃ、と幸せなきもちでうとうとしておりました。

さて、7時に起きてまずは朝ごはん。
ところがエレベーターが動いていない。うわー。
朝ごはんの会場は地下一階。なんてこった。
えっちらおっちら階段を降りることにしました。

◎つづきます
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by chico_book | 2015-06-04 01:39 | | Comments(2)