饒舌と静謐の圧倒

ぼおるぺん古事記 三: 海の巻

こうの 史代 / 平凡社



『夕凪の街 桜の国』
で、平成の時代からふりかえるかたちで、まっすぐに原爆と言うテーマを扱い、

『この世界の片隅で』
で、第二次大戦中の市民生活を舞台にした物語を
力強く練り上げた こうの史代さんが、
古事記を題材にされたと言うことに、最初はとてもおどろきました。
でも読んでみてよかった。
上記のような、ともすれば重くならざるをえない物語を、
明るさと強さとやさしさをそれこそ錦のようにつむいだ
こうのさんの力量が、ここでも存分に発揮されています。

登場人物の多さ、複雑さ、現代の目から見るとわかりにくい神話ならではの冗長さ、
そしてときにつじつまのあわなさ。
それらすべてを、ありのままに、アレンジすることなく素直に作品にしています。
音の遊びと古語の語感の豊かさ、それが絵と融合して、
自在に画面からほとばしる様は、まさに『ものがたり』の原点を見るような思いです。
たぶん。物語の原点とか、ようしらんけど。
もともと 絵を描くこと、画面を構成して漫画と言う融合体を作り上げることに
非常な情熱を持っているこうのさんならではの、すばらしい作品です。

この話をこういう風に表現するのが楽しい! と言うのが、
あらゆるページから飛び出してきます。
絵とオノマトペの豊かさやさしさが、
日本の滴るように豊穣な自然の美しさと相まって、
相乗効果の更に上に重なってきます。圧巻。
まさに国の『まほろば』。
すごいなぁ。まんがにはまだこういう表現があるんだ、と思った作品。

春になったら苺を摘みに (新潮文庫)

梨木 香歩 / 新潮社



読書好きな真面目な少女向け、と言う印象が強くて、
実はなんとなく苦手だった梨木香歩。

でもこれはよかったです。
ファンシーなタイトルとはうらはらに、作者のイギリス留学時代の下宿先の女主人
ウェスト夫人を中心に、世界情勢やさまざまな登場人物を絡めた作品。
同じイギリスを舞台にして、
リ〇ボウ先生とかが、アカデミックおハイソ方面でうにうに(えらそうに)している間に、
お茶を飲みながら静かに平和と秩序に向かい合うご婦人方もいるのだなあと思う。
※リ〇ボウ先生ファンの方すみません。
まあこれはこれで、ストイックと言うか宗教の教義的というか、
多分一般よりはやや真面目方向にバイアスかかった話だと思うんだけど。
そうおもうと、大学教授がアカデミック方面にいるのは全く当然のことではあるのですが。

ただこの静謐さはすばらしいです。その静謐さの中に、身を沈めてみたくなる。
(多分すぐいたたまれなくなるけど)
というわけで
「読書好きな真面目な少女向け」
と言う印象と言うか偏見は、あながち間違ってはいないんだけど。
どうしたのかな。
たまたま?
あるいは経年変化で(笑)私の趣向が変わってきたのかな?

日本でもこういう話は成立するのかな。どうだろ。
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by chico_book | 2013-05-06 22:58 | | Comments(0)

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