おらぞくぞくすっぞ

千年万年りんごの子(2) (KCx(ITAN))

田中 相 / 講談社



ふらっと本屋で見つけました。
一巻を読んで、続きを楽しみにしていたので、こういう見つけ方はうれしい。
とてもうれしい。

一巻を見た段階では、これから先どうなるかはまだわからないなあ、
とりあえずすごくよさそうだけど、風呂敷たためない作者は本当に多いもんなぁ、
ま、期待しつつ様子見ですね。と思っていたので、わくわくしながら読む。
(えらそうですね。すみません)

昭和中期の青森、りんご農家が舞台。
都会育ちで天涯孤独の青年・雪之丞が主人公。
逃げ込むように結婚(入り婿)した青森で、少しずつ人生を築きはじめてゆくが、
ふとしたきっかけで『土着信仰の神』に妻を差し出すことになる。。。と言う物語。

労働力としての夫を必要としていた妻・朝日と、
育ての親から独立したかった夫・雪之丞がはじめた結婚生活。
とつとつと、それでもすこしずつ指先から手をつないでゆくように
深まってゆくふたり。
その矢先、唐突に妻を失う(あるいは奪われる)夫。 一巻はここまで。

自然が本来持っている理不尽さ、異界の美しさと怖さ、
そこに翻弄され/抗い戦おうとする人間を
シンプルな絵で丁寧に描いた良作です。良作だと思う。

「愛する妻を守るため、夫は神と闘う!」
と言うのがamazonさんの紹介文だけど、
その愛は、激情ではなく、もしかすると妻への恋情と言うよりは、
あるいはやっと見つけた安心できる場所そのものへの執着なのかもしれない。

お見合いで、初対面も同然で結婚したふたりが、
困難に直面して、それでも手を離さない、離すことが出来ないと、
その自分たちの気持ちに戸惑いつつ自覚してゆく過程が描かれたのが二巻。
ゆっくりしたペースの、ゆっくりさ加減が逆によいです。
まだるっこしくなく、ちょうどよいかんじ。
スケールが大きそうな物語ですが、巻数重ねずにきりっとまとめてくれそうな気がする。

絵のことはよくわかりませんが、
派手な画面効果や演出もないのに、
それでも異界そのもののおどろおどろしさや雪の冷たさ、
はりつめた空気や輝くりんごの赤や、なにより
『もはや人でなく』
『異界の存在』
になったヒロイン・朝日が、異様な透明感を持って描かれているのには驚きです。

この作者さんは絵の力を信じているんだと思う。
あくまでシンプルな、そして詩情に充ちた紙面は
小宇宙とはこういうことか、と言う気持ちになります。
まあ、私は東北地方にロマンチックバイアスの思い込みをやや持っているんですけど(笑)。
だってりんご園といったら、オーチャードースロープで歓喜の白路ですよ、ええ。

初期短編集『地上はポケットの中の庭』でもそうだったのだけど、
この人の描く「老人」が好きです。
なんと言うか、無理なく効果的、と言えばいいのか。

地上はポケットの中の庭 (KCx ITAN)

田中 相 / 講談社



あとなにかと犬とねこが出てくるところもポイント高い。
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by chico_book | 2013-05-24 01:59 | まんが | Comments(0)

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