千葉で憂愁を知る
実は1月に千葉に行ってまいりました。はじめての千葉県千葉市。
幕張メッセでモーターショーを見たのと、柏・松戸近辺には縁があったのと、
成田空港には行ったことがあるので、千葉県はいったことがありますが、千葉市はまったくはじめて。
ちなみにうちの最寄り駅からはJRで片道80分・1210円。遠い。なんて遠い。
『快速エアポート成田』に乗るのですが成田空港といえば、海外に直結してる簡単人間なので、
それだけで軽く腰がひける(実際電車の中には、大きなトランクを持った人が多かった)
しかし私の職場には水戸方面から横浜まで、まいにち2時間半かけて通勤してくる人がいる。
こわい。首都圏怖い。
とは言え、歩いても余裕で出勤できる人もやたらといるあたりが、やはり神奈川、ビバ地方都市。
フットワークの良さは大切です。特に帰宅困難対策が言われるこの頃では。
もちろんそうでなくても、職住近接はできるならできたほうがよい。ぜったいによい。
そんなふうに(主観ですが)遠く感じる千葉なので、さんざん悩み倒しましたが、
まあどうしてもいきたくなったのでいってまいりました。
(ウソ)……写真を撮らずにはおれませなんだ。
ていうかあまりにもあれなネタに全力で乗っかる千葉の底力。
これはスタオベせざるを得ない。寄らなかったけど。
こちらに行ってきました(一部切れててごめんなさい)
大正から昭和中期にかけて『新浮世絵』のジャンルで活躍した版画家・川瀬巴水の展覧会。
生誕130周年記念ということで、実は巡回展が予定されており、
なんと3/19から横浜髙島屋にもやってきます。
二ヶ月後には地元にやってくる展覧会に(往復の時間と交通費を費やして)
行くべきかどうか…実はすごく悩みましたが、行ってよかったです。とてもよかった。
版画ということでバリエーションも多く、時代も(比較的)新しいうえに、
商業的な展開もにぎやかな作家だったということで、とにかく作品の点数が多い! 多い!!
堂々280点ですよ!!!
しかも『旅の画人』の面目躍如、日本中のあらゆる場所様々な季節が彩り豊かに
雄弁に展開されてます。あざやか! つややか!
夏の風景は草いきれや蝉の声、じっとりと汗ばむ不快感とか、日陰に入った瞬間視界が暗くなる感じとか、
リアルに体感してしまいますます。1月なのに。なにこのものすごい情報量。
横なぐりに降りしきる雪をみていると、かじかんで指の先までじんと熱くしびれるよう。
雪の積もった明るい朝の風景からは、少しずつとけて滴ってゆく透明な水滴が
見えるような、そしてその静かな水音が聞こえてくるような気もします。
そんな力量の作家の作品が、ほぼ(作家人生)全体にわたって並べられているのです。
これは大変だ。圧倒される。途中から丹田に力を入れて向かい合いました。
結構疲れましたが、とても面白かったです。遠かったけど、行ってよかった。
風景とか空間はこの再現力なのに、人間は『写実』から離れるのが日本画の不思議なところ。
※今回の巴水の展示で、人物がクローズアップされているものはありませんでした。
風景の中に流し込まれているだけですので、ここでは一般論として書いています※
浮世絵の人物画は(人物画って言っていいのやら)西洋絵画のまつげの
一本一本まで精緻に書き込む手法とはまるで違いますよね。
はい、これが人物のフォーマットです、という感じで書かれている。
そのくせこだわるところは徹底的に落としこむ。
ほほのふっくらしたラインとか耳たぶのやわらかそうなところとか
『びいどろをふく女』の指先、関節の曲げ方とか。
どう考えても「ちょ、そこ、『萌え』はいってるでしょ』と言いたくなる
力量とか熱量が、透けて見える。
このあたりアニメキャラや『まんが絵』の人物からリアルな心情を読みとることのできる
国民性(だか何だかわからないけど、何か)と結び付けて考えたいのですが、
ちょっと強引かしら、などなど考えてみる。
版画作品ということで、色違いのバリエーションや試し刷りと様々なバージョンがあり、
彫師・摺師、そして原版を総合的に管理する版元と、たくさんの人間との共同作業と
いうのがまた、漫画やアニメ好きには何とも興味深いシステム。
私は何故だか版画というものにものすごく魅かれるのですが、たぶん
『やってみるまで仕上がりに確証が持てない』
というあたりに、何かツボがあるのかもしれません。
そのくせ複製が可能なところとか。複製できてもちょっとずつ違うところとか。
ちなみに戦後は『美しい日本の風景を描いた版画』として進駐軍に大変に売れまくったという巴水。
さもありなん。静かな抒情性はなにより雄弁です。
人の気配も薄いのに、なんでこんな『心情』が伝わるのか、あるいは勝手にこちらが読み取ってしまうのか。
ちなみに故・スティーブ・ジョブズ氏が熱心なコレクターだったということでも有名な方だそうです。
これは知りませんでしたが、わかる気がする。
静謐でこちらの邪魔をしなさそうなたたずまい。
恐らくフランス語ネイティブと思われるうら若いお嬢さんに、
同じ年頃の(推定)日本人のお嬢さんが一生懸命に説明してました。
お友達なのか、ガイドさんなのかはわからないけど、
二人で熱心に話し合っておられました。
こういうのの説明はむつかしいだろうなあ…と、胸の中で
(でもがんばれ! 私にはとてもできないけどガンバッテクダサイ! )
とかそんなかんじのエールを送ったのですが
『トレ、トレメランコリ』
と、一生懸命伝えていた、そのフレーズだけは聞き取れました。
なんだか胸が熱くなってしまう。言い得て妙。まさしくトレメランコリ。
※参考資料。雰囲気だけでもぜひ※
ばれんの摺り筋のあととか、光のぼやかし方、月明かりの雲へのにじみかたなど、
見れば見るほど興味深かったです。
巡回展、現在は大阪髙島屋で開催中(3/10まで)で、次は横浜髙島屋です。3/19-3/31。
※リンクは、巴水の版元だったで渡邉木版美術画舗のサイトです。
今回の巡回展にもいろいろ協力されてる様子。推定ですが。
期間が短いですが、何とかしていきたいなあ。
でもきっと、駅前の百貨店に280点は来ないんじゃないかと思うので、
やっぱり無理しても行ってよかった。
千葉市美術館だって広い広いフロアを二階分ほぼフルフルに使っていましたから。
ここ数年『浮世絵』に心魅かれがちなのは、神奈川に来て以来、
こういう風景を身近に感じるようになったという簡単な理由かもしれません。
あるいは単に、最近展覧会によく通うようになったとか、
浮世絵の展示が増えたとか、いろんな理由が混ざっているのかも。
富士山てずるいと思う。綺麗なだけでなく、高さも日本一なうえにロケーションも抜群、
近場の海から見てもよし、映り込む湖もあり、
素でも美しいのに季節や時間帯でこれだけ表情を変えるなんて。
さらには遠く離れた関東南部から見てもよしなんてずるすぎる!!
ちなみに千葉市美術館は、川崎銀行千葉支店として昭和2年に建てられた
『ネオ・ルネッサンス様式』の建物だそうです。こちらが一階の『さや堂ホール』。
『さや』が何を意味するのかは不明。
ワードアートでちゃちゃっと描いたようなキャラがいますね。
HPなども確認したんだけど、特に紹介もなさそう。
本来ゆるキャラってこういう感じだったのではないかと。
適当なやっつけ感、でもそこそこかわいい、みたいな。
そんなに気合い入れて、みんながみんなマーケティングとかしなくてもいいじゃんっていう。
夢と魔法の国を有する千葉県に言われると(妄想)なんだか染みわたるお言葉(捏造してます)
美術館なんだから。ベレー帽と絵筆があればいいでしょ。
だいたいこんな感じでしょ、みたいな。
そう思うと「く〇モン」はちょっとゆるくないんだよね。
きっちりあてに行って、成果を出している感じがする、
そして遠出だったのでかえりもおそくなり、ムスかわいい表情を見せてくれる姫。
『ちょっとコンパクト』という言葉がなんだかツボにはまる。ごめんねえ。
ちなみに現在もこういうかわいいむくれ顔をしてます。そして全力でくっついている。
夢のような季節も、あと少しかもしれませんが(涙)
現に朝は、ひとりでさっさと起きるようになりました。
日が昇るのも早くなったもんね。。。ちょっとさみしいけど(小声)。
by chico_book | 2014-03-09 01:20 | イベント | Comments(0)