待て、しかして希望せよ(ただし低温で)

怒涛の7巻。西炯子『姉の結婚』の新刊が5/9に出ました。

姉の結婚 7 (フラワーコミックスアルファ)

西 炯子 / 小学館



面白くなった…と言ってもいいかなぁ(及び腰)
とりあえず6巻で『迷走気味』と言いましたが、動きはありました。盛大に。
さまざまな問題が動いたり、解決したり、発展したり、解消したり。
5-6巻のじたじたぶりはじらされていたということでしょうか。単に作者の術中なのか。
むう。なんかくやしいな。実際私はそういう簡単な人間です。
存分に楽しめてるのでいいんですけども。

5巻の感想
6巻の感想はこちらからどうぞ。

※以下盛大なネタバレなので畳みます※





力が入っている、よい巻です。読みつづけてててよかった。
主人公たちが、それぞれに自分の目指す方向を取り戻してゆくさまがていねいに描かれています。
落ちついて自分の心に向き合い、素直に恋心を認めるヒロイン・ヨリのモノローグは静かな水面のよう。
なんと7巻にしてようやく素直に『好き』ということばがヒロインの口から出ました。
読んでる側としても、素直にうれしいこと。

そして、そのヨリを愛している既婚者・真木。彼が離婚を求めている妻に対して
「妻としてはともかく 僕は君を人間として信頼している」
と言うくだりが好きです。
恐らく彼は(離婚して一緒になりたいと切望している)最愛のヨリを、信頼はしていないだろうから。
それが恋は思案の外ということなのかもしれない。その人だけが正気を失わせる。
「俺はその人とだけ傷つけあうことができる」
とは5巻に登場した、彼の言葉ですが。

◎以下ちょっとはばかられる内容なので一部色を変えます◎
でも「俺の子かどうかわからないだろ、旦那とも月一で」と、うろたえた挙句とっさに口走ってしまう不倫相手の気持ちが……
わかってしまうあたりがしんどいわ。
この作品で一番ヒールの最低男なので、正直わかりたくはないのに!!実際文句ないヒドイ発言です。そこに異論はないのです。
ただ、避妊具使っていないのならまだしも使用していて、そのうえで不倫相手の人妻に
「(避妊具が)100パーセントじゃなかったってことね 夫とは『絶対にできない日』にしかしなかったのよ」
といきなり言われても、受け止めきれなくても同情の余地はあるような気もしなくもないけどどうかな、というかなんというか。
まあ、単なる器の小さい男の演出だとわかってはいるのですが。にしてもなんでおっさんの立場に立っているのか自分よ。泣ける

◎ここまで◎

しかしここに及んでも、夢幻堂先生を部屋に「入れること」を拒まないヨリには違和感。
結局行為そのものは拒絶はするのですが、うーん、ここはむしろ、最初からさらりとかわしぬくか、
行為に及んだ後に「違ったの」とする方がよかったように思います。
それとも私がおとなの機微を理解してないだけなのか(涙)

・・・なんてことをつい私などもつらつら思ってしまうので、
そして当然ながら、100人いれば100通りの感想があることを思うと、
こういう作品のむつかしさを痛感します。
みんながちょっとずつ違う角度で照らしまくって評するわけだし。

更に言うと、家族間の問題、父親との関係に対する処理・決着の仕方も
最大公約数的にすぎるというか、端折り感がないわけでない。
これは主人公3人(ヨリ、真木、真木の妻理恵)に共通するモチーフなので
ちょっと粗さが気になりました。

そして
「ほかの男のこどもを妊娠した妻を愛するが故に、その子供を自分の娘としてたいせつに育てた」
ヒロインの父親のエピソードをここまで大きく扱うのなら
「ほかの男のこどもを妊娠した(愛していない形だけの)妻と離婚して、
自分は(一度はあきらめていたのに、結婚後に再会した)
最愛の女性と結婚しようとしている」
真木の扱いにはむつかしさがあると思います。
もちろん「信頼」と「妊婦への思いやり」は充分に表現されているのですが、
それにしても難しい要素が入ってくると思う。
ましてや理恵は、仕事の面ではスーパーレディ、の、ヨリとは違って
生け花教室講師、という、バツイチシングルマザーにしてはいささか心もとないともいえる。
(もちろん、それは彼女自身が選んだ結果の境遇でもあるし、
真木自身が慰謝料や養育費についても真木は積極的に言及しているので、
きちんと配慮は描かれてはいるのですが)

一気に終幕に向かって盛り上がっているようですけども、まだ最終巻ではないので
次巻以降このあたりを丁寧に拾ってくれるといいなぁ。
子供を(理恵が離婚に踏み切る)トリガーに使うのなら、
生まれてきた後のこどもに対するケアも必要になってくると思う。

※やや個人的な補足※
親子関係云々については、人生の角度を変えるトリガー、あるいは踏ん切りをつけるきっかけとして
「こども」を使うという仕掛けそのものを、私があまり評価していないということに由来している部分が
大きいと思います。一般的には説得力のある。強力な展開だとは思う。
ただ、その絶対性(のようなもの)に違和感があるという残念な感性なのですな。
ひねくれててごめん。
やはり家族とか子供というのは、誰もがある意味当事者と言えるので、扱いがむつかしいですね。
もちろん公約数として、共感を呼ぶことができるおおきな要素でもある、ということも含めて。
もちろんひとの気持ちに正解はないし、全員が納得することもないと
わかっているのですが、それでも。

たとえばこちらもそうと言えるかな??

サプリ10 (Feelコミックス)

おかざき真里 / 祥伝社



あと前作のこちらも「こども」が大きく展開に作用しました。

娚の一生 1 (フラワーコミックスアルファ)

西 炯子 / 小学館



それもあって、少し別の展開を期待していた部分はあります。
ただ、あくまで本作の中でみると、
有効に作用しているとも思えるのが憎いところ。
こういった細かい違和感のつみかさねが、どうしてもややきびしめな感想になる所以。
もしかして私と西さんの、単なる相性の問題なのかもしれないし、
あるいは私の読解力の問題なのかもしれない。うーん。くやしい。なんだか釈然としない。
しかし画面の切り取り方や言葉の選び方は好きな部分も多いんですよね。
なので余計に気になってしまうのでしょう。

そう思うと『海街diary』に改めて感服。

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

吉田 秋生 / 小学館


比較するわけではありませんが、あれだけ王道(ある意味べた)な展開を、
新鮮かつていねいに描いてあるということのすごさ、底力を改めて実感。

あと小ネタを2点ほど。
・今回はヨリさんのお部屋がほとんど登場しなかったのがとても残念。
図書館司書で書評を書く彼女の部屋、あちこちに本がぶちまけられてる光景がとても好きなのです。
あとヨリの勤務先の県立図書館が21時閉館でちょっとうらやましい
(うちの近くの図書館は19時閉館、仕事帰りに寄るにはちょっと厳しい)

・6巻の感想でヨリの著述の仕事について全貌が見えないことを云々コメントしましたが、
今回「日本エッセイスト賞 銀賞」を受賞、という展開になりましたので追記。

この作品の落としどころがすごく気になってます。
5-6巻当たりの展開ははたして「まだるっこしさ」なのか「美しいタメ」だったのか
はやく知りたい←この段階で既にせっかち発言。
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by chico_book | 2014-05-14 02:43 | まんが | Comments(0)

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