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言葉を選び、物語を作り、受け止めること

無駄に長文を書くのがとにかく好き。
レターセットを買っては、便箋をとっとと使い切ってしまうので、
おそろいの封筒が余ってしまって山となしてしまいます(進行形)。
※なので、さいきんはなるたけセットの封筒は買いません。とほほ。
そんな(文章での)おしゃべり好きなワタクシですから、
ずいぶんまえから「ブログ」には興味がありましたが、
はじめることにはずいぶん長いことためらいました。

まず何を書こうか、独りよがりになるだけじゃないの、
特定の主義主張や目的があるニンゲンではないし、
それはつまり、私自身そのまんまってこと?
・・・そんなの発表しちゃって、いいのかな、という、ためらいとかたじろぎ。

とはいうものの、自分は(ヨソサマの)『個人のブログ』大好きな訳です。
ひとさまの記事や日記や意見や評価を
ふんふん、そうなんだ、とか、そうよね、とか、へえーっそんな見方もあるんだ? とか、
ついつい興味深く読みふけってしまいます。

当たり前のことですが、そこは人それぞれ、同じような趣味のひとでも
(私の場合、やはり映画とか本とかまんがとか旅の記事を読むのが多いと思う。
あ、ねこに関してはほぼオールオッケー、というか、はずれのねこブログって、まずない‼‼(断言)
ねこは、ほんとにみんなちがってみんないい!!)
見方や受け止め方、それを表現する切り取り方言葉の選び方、
まことに多様で千差万別、大変興味深い。
たとえば私とは評価のポイントとか、受け止め方が違うとしても、
そこもふくめて興味深い。

そういう場所を、この広大な電脳世界にすこしずつ見つけるようになります。
そしてそこからまたわずかずつでもニューロンのように
つながって伝わってゆく、電脳世界の有機的な面白さ。
まさにネットは広大だわ、と日々実感しているわけです。

そんな私がそれでもおずおずとこの場所を設けて、ほぼ一年半。
ちこのかわいらしさ素晴らしさへの揺るがぬ自信と、
そう言えば、結構いい写真がたくさんあるんだよね!
というアイスランド旅行記が大きな推進力です。
世の中に旅行記は数あれど、アイスランドはそんなには見かけない。
こーんなに素晴らしい場所なのに!! もったいないよ、という気持ち。
そんな感じのナニカがきっかけでした。

そしてそこに支えられるように記事を訥々とつづってみるうちに、
ポツンポツンと映画や展覧会や本やまんがや、諸々ジャンルを
広げるようになりました。
広げることができるようになりました、というかんじかな。

そんなふうにゆるゆるとですが、なんとか続けてこれています。
ほんとうにありがたいことです。
いつも読んでくださる方、そしてありがたくもコメントくださる
皆さんのおかげです。月並みな言い方ですが、本当にほんとうに励みになります。


そんな幸福をなぜ今かみしめているかというと、
日曜日に見たこの映画が大変に素晴らしかったからです。

『物語る私たち』予告編
※予告でもかなりがっつりしているので、
これから観る予定で、情報を控えたい方は注意してください。



監督は『死ぬまでにしたい10のこと』『スウィートヒアアフター』
などに出演したサラ・ポーリーという女優さん。
自らの家族にまつわる秘密を基にしたドキュメンタリー作品。
何を言ってもネタバレになる気もするし、どういった雰囲気の内容かは
もうこの予告を見ていただければ充分だとおもいます。

『真実は、いつもひとつ』というのは、
からだは子供、頭脳は大人(オトナといっても高校生だよね、
といつも思うのだけど「天才高校生」だからまあいっか)
な、某小学生探偵の決め台詞ですが、
事実はひとつでも、そこに見る物語はみなそれぞれ。
それぞれのなかにそれぞれの真実がある、

にしても、その物語を、当事者がこんな形で映画にするなんて!!
そしてひとりひとりが、あたたかさと力強さをもってそれぞれの物語を語る。
自分のなかの物語を、あたたかく確かめながら。
ものすごい作品です。力強さと優しさが一体となる。
そのうえで
『ドキュメンタリーとして『映画』で事実を語ること』
という、この映画そのものについてまで悠々と踏み込んでゆく。本当にすごい。

生き延びること、うけとめること、愛することひとを想うこと、
逃げることのできない、自分にかかわるものすべてとともに
人生をやっていくこと。
その困難さ、それを共有できる仲間(あるいは家族)のいることの
かけがえのなさ。さまざまな要素がていねいに描き出されてゆきます。
時間が解決する、とよく言われるけれど、
時間の経過は物事の見方を変える側面もあるけれど、
ゆっくりと浸食し、しみわたらせることもある。
日々繰り返されるほんのわずかな圧の積み重なりで、
取り返しがつかなくなるほど固く強張ってしまうこともある。
こわばったまま、生きてゆくこともできるけれど、
出来なくもないけれど、それは選択の問題。
結局、自分にむかいあうのは、自分だけしかできないこと。

自分の物語を自分のことばで語るという行為。
それは再構築であり、認識を深めるための唯一の方法。
なくてもやっていけるけど、かもしれないけれど、
自分に対して逃げずに向き合って、言葉を組みたてて
語るということの重要さ、困難さ、しちめんどうくささ、複雑さ。
人生を受け入れる覚悟とやさしさ、それを支える強さ。
それを皆、自分なりの方法で全うするひとたちが描かれます。
あらゆるすべてがそこにはあり、内側から輝くような明るさに満ちている。

素晴らしい作品です。
『死ぬまでにしたい10のこと』、観てないんだよね、
よく知らない女優さんが監督なのか、くらいにしか思ってなかったのを、
気分を変えてみることにした自分をほめてあげたい。マジで。

そんなわけで、というのもおこがましいけど、
私は私にできる語り口で、ココロにうかぶよしなしごとを、
臆さずためらわず、でも慎重さはわすれずに、
そして無理せず語りつづけていこうと、思いました。
そしてささやかながら、そんな場所を持っていることについて
しみじみとありがたく思った帰り道でした。

by chico_book | 2014-10-01 01:33 | 映画 | Comments(0)

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