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へとへとですがうれしくもあり

本当はこの連休には『イーダ』を、横浜ジャック&ベティにて鑑賞する予定でしたが、


※動画は再掲です

我慢できなくなったので『悪童日記』みてまいりました!!
映画『悪童日記』 公式サイトはこちら

すばらしかったー!!
戦争を描かずに、戦争を描くという抑制。戦争そのものではなく戦争下の生活を描くことで、
浮かび上がる輪郭と際立って深まる印象。

※日本のまんがだと、こちら。
原爆そのものを描かずに作品に落としきったこちらが素晴らしかった。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

こうの 史代 / 双葉社



同じ作者のこちらには戦時下の『日常生活』が徹底して描かれています。こちらも名作。

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

こうの 史代 / 双葉社



しかも非常に個人的なところに落とし込んで、少しずつ変わってゆく過程が、つぶさに描かれる。
すべての登場人物にそれぞれの立ち位置、言い分、いくばくかの正義があり、
そのうえで事態は容赦なく動いてゆく。圧巻。

過酷な環境を生き抜く、残酷で冷徹ながらも子供の純粋さを失わない怖ろしいアンファンテリブル。
それらをすべて共有するうつくしいふたご。
いまとなっては、ある種語りつくされたような設定なのに、
ものすごく圧倒される作品。すごい。すごすぎる。
途中で、ほぼ忘れていた物語のはしばしをすこしずつ思い出して、
息を殺すようにして見入ってしまいました。ああ、そうだ、こうだ、こういう話だった・・・。
その、ちびちびと迫る来る恐怖。

原作に忠実な映画だとは思うのですが、かなり要約がきいているというか、
アレンジは入っていると思います。なので、ある意味別物のはずなのに、
それでも『原作そのものの世界観』があるように思える
(でもこれは、再読してみたら印象が変わるかも??)
透明でうつくしいのに陰鬱な風景と抑制のきいた音楽、
聞きなれないハンガリー語(マジャール語というべきかも)の響き。
本当に、映画を見ている間中どこか知らない世界に連れて行かれておりました。
いやあ至福、なんとも言えない幸福。

なんだかんだで今年の映画のベストはドキュメンタリー系ばかりだったのですが
『ドストエフスキーと愛に生きる』
『大いなる沈黙へ -グランド・シャルトルーズ修道院』
『物語る私たち』
(次点で『マダムインニューヨーク』かなあ、ちょっと小品なのでこの位置)
ここでどっかん!! と、大当たりがきた感じ。ごりごりの物語世界。満喫です。
あんなにも残酷で冷徹な世界なのに、目が離せない風景・空気・光。

ああ…旅に行きたいなぁ。
アイスランドのことをつづっている間は、もう一度アイスランドに行きたいな、
あの、ぽつんと忘れ去られたような小さな島でぽつんとしたいなぁ、と
思っていたのですが、この映画を見たら、
延々と果てしなく続く大地に、広大な大地を見てみたいなあと思ってしまいました。
さーて、安心して原作読むぞー!!

それにしても上映館の少なさよ!!こういう時横浜は弱いですねえ。
でもジャック&ベティさんひとりで、ユーロスペースも岩波ホールもイメージフォーラムも、
それ以外のあれもこれも何もかも一手に引き受けてるくださってますから
証がいないとも思います。多謝。
いまのところ全国では5館、関東では新宿・日比谷・川崎のみ(涙)、
しかも川崎では08:35からと、21:25からの2回のみ。きびしい。

こちらをみたあと、はしごで『イーダ』を観ようかなともまよったのですが、
欲張らなくてよかった。これは無理せず、印象を大切にした方がいいタイプの作品です。
ちょっと印象が引きずられたと思う。

といいつつ、実際によくばっちゃったのはこちら。



最初は10/10のみ、1日限りの上映、のはずが好評の為1週間上映に延長。やった!!

映画館のシートに身を沈めて、イメージの洪水にぼうっと身を任せる。なんともぜいたくな。
意外と『悪童日記』と共通するイメージがあったのが興味深い。
生々しさ、生命の不穏さ。『悪童日記』が死を見据えるような冷徹なまなざしなら、
こちらは脈動する生命のゆらぎ。
そして以外すぎる共通点が、効果的に挿入されるプリミティブな『動画』とでもいうべきアニメーション。
絵が動く。ということのシンプルなまがまがしさ怖さ単純さ。

ビョークを見ていると、なんというか素直に『女王』ということばが浮かびます。
橋本治氏が昔
『卑弥呼にたいして変に人気があるのは、女王という単語だけで○○できるアレな××(伏字は筆者)連中のせいであって、
この場合女王はまがまがしい妖術を存分に操る強大な力を持った術士と思った方が適切である』
という内容の記述をしておられましたが、そっちの文脈の女王。イタコとか、憑代というよりは、本人そのものが強大な印象。
その意味でもすばらしかったです。はだしで踏み鳴らす振動。パーカッションの力強さ、ともに声をそろえ、はねまわるコーラスのパフォーマンス。鳴動する大地、共振するひとびと、それを共有する空間。最高。

土曜日に2本連続鑑賞しました。ちょっと無理めでしたが。
そのあとの2日間、ずっとずうっとやたらと眠くてなんにもできませんでした。
でもこんな力と熱量のある作品を、連続で見てしまったあとではしょうがないかもしれない。

by chico_book | 2014-10-13 22:15 | 映画 | Comments(0)

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