ようやくなんとか、さよならアイスランド

走って走って搭乗口にたどりつく。こういう時、あまり大きくない空港は本当にありがたい。
そろそろ人もまばらになりはじめたところに、まさに滑り込みセーフ。
気持ちはとっくにへなへなと倒れこみそうな状態で、なんとか機内に乗り込んで、座席へ。
窓側なので、通路側のひとの前を何とか通してもらう。隣はアジア系の青年。

行きは、金髪スキンヘッドに、スコルピオンとかスカルとかのいかついTattooばりばり、
むっきむきの肩と腕、をそれを見せつけるようなタンクトップのおにいさんだった
ので、
ずいぶん違います。こちらも安心。でももう、きっと安心しきった私は眠るだけ。
シートに座ってベルト締めて、かばんを前の座席の下におさめる。ひと安心。
ペットボトルのお水を買いたかったけど、そんな余裕も当然なかった。
まあ、それがロンドン-成田なら辛いけど、レイキャビク-ロンドンは3時間くらいだから、
そこまで辛くないでしょう。成田-台北くらいの気持ちでいればいいかな?
ホテルのおじさんがサンドイッチくれたから、お腹空いてないし、機内でお茶くくらいはでるだろうし。

一旦しまったかばん、でも一瞬後には思いなおしてカバンからごそごそ文庫本を取り出す始末。
活字中毒者は、本を手にしてないと不安になるのです。
読まないだろうけど、手元には置いておこうという気持ち。ライナスの毛布?
確か文庫版の『雨天・炎天』だったかな。べたですね。旅先には旅の本。

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

村上 春樹 / 新潮社



と、そこに。
「あの、日本の方ですか」
おお! 突然、隣の青年が話しかけてきました!!
「はい、あなたも? 」
ぱあっと、笑うお兄さん。
「ああ、よかったー! 僕、海外旅行はじめてなんですよ。それで不安で不安で」
はじめてでアイスランドとは。なかなかやりますね。
「いや、ちがうんです。代打で学会に出席することになって、それが決まったの10日くらい前で。
念のためとっときなさいって言われたパスポートも、申請しっぱなしで引き取りに行ってなかったくらいで」
うわー、それは大変だ。ということは学生さん? すごいですね、学会でアイスランドとは。
「いや、ほんとびっくりしましたよー。もうずっと、誰とも英語ばっかりで。
そもそも僕、英語苦手なのに。この飛行機もロンドン行きだし」
え、でも、学会とか全部英語でしょ? 苦手ってことはないんじゃないの?
「ああ、それは専門的な単語で内容の目安がつくから楽なんです」
へえー、そういうものですか。なんかすごいね。私は、ひたすらぼーっとした旅でしたよ。

なんとなくこんなせりふを思い出す。
『ねえお姉さんたち、なにしてる人?』
『なにもしてないわ』

一緒に遭難したいひと(4) (ワイドKC Kiss)

西村 しのぶ / 講談社


もちろん、エイコちゃんみたいにかっこよくないけどね!

そんなことを(少なくとも私は)寝不足とか緊張とかとかで、
ぼーっとした頭で会話しているうちに、動き出す飛行機。
ほんとにぎりぎりでしたね。でももう安心だけど。

「ところで、あの、ちょっと相談なんですけど」
はい?
「通路の反対側のひとたち、学会で一緒だったんですけど」
ふうん? と、青年ごしにのぞいてみると、なんとまあ、さっきの
『飛行機はあなたを待つんでしょ(笑)』の、おじさんトリオではないですか!! 
ていうことは、あんなに走らなくても間に合ったのかな? 
いやまあ、いまとなってはいいんですけど。

そっかー。学会に参加されていたのか。
それであの、慣れた物腰、おちつきはらった態度だったのね。なるほどなるほど。
「僕、あいさつするべきでしょうか?」
かるくずっこける。
そ、それはわかんないなあ。あなたの所属している学会のコミュニティの性格とか、関係次第だろうし。
まあ一般的には顔見知りだったらした方がいいんだろうけど、とりあえず離陸中は無理なんじゃない?

「そうですか…そうですよね。よかった。僕あの人たち苦手なんです」
あらまあ。(奇遇ですね、私もよ)とは、声に出さない大人の配慮、のつもり。一応ね。
おじさんトリオは悠然とさざめき、おばさんと学生の組み合わせは何となくひそひそと会話、
その状態で離陸する飛行機。さよならアイスランド、の感慨にはあまりひたることも出来ず。
たぶんこれはあまり眠れないかもなあ、と思いつつも、まあいっか、このヒトおもしろそうだし、といったところ。
なにより旅先で心細い気分はとても、とてもとてもよくわかるので。

そんなふうに、ロンドンへの短いフライトははじまりました。まだこの段階では気付いていません。
VATの申告を空港でしていないことに!(する余裕も、到底なかったんだけども)

f0257756_0134223.jpg

ロンドンにつくまでは写真がないので、アイスランド回想写真。
ちいさく下の方にうつっている杭に、こっそり「危険」っぽいマークがついているのが、なんともいい味です。

f0257756_014020.jpg

いま見ても静けさがしみわたる。
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by chico_book | 2014-11-03 00:14 | | Comments(2)

Commented by Linda at 2014-11-04 03:49 x
ひぇー おじさん3人組との縁がなかなか切れないーっ。
となりの若者面白そうですね。
私、お隣の人とほどよくお話しするの好きです。
話しかけないでモードの人に当たるとちょっと寂しくなります。
Commented by chico_book at 2014-11-04 23:39
そうなんですよー。でも我ながらしつこいですね。おじさんたちはたぶん平常運転だろうし。ちょうど不安なときに、ドイツ人ご家族に優しくしてもらったタイミングだったので、よけいにきつく感じてしまったんだとは思うのですが。
これをつづっていて、いまさらながら、おじさんトリオと、隣の席でなくてよかった、と思いました。まあむこうはたぶん何にも気にしないだろうけど。

隣の学生さんは地方在住で、なんと関東に来たのも今回がはじめてで、羽田から成田って遠いんですねー、びっくりしました、と言ってたほどで、さぞ不安だったんだと思います。
でも本当にひとなつこいひとで「とりあえずにこにこしてれば大丈夫だから! 」と研究室のみんなに送り出された、と言っていました。なるほどねぇ、と納得してしまうほどのにこやかなひとでした。素直って美徳なんだわ、と感じた次第。そんな調子でほけほけと、ロンドンまでほぼずうっとしゃべってしまいました。行きの、ロンドン-成田も隣の人おもしろかったし、あらゆる意味であたりの旅でした。VAT以外(とほほ)

ロンドンにつくころには、ジャンプまんがの話をしたんじゃないかな。…ブリーチだかNARUTOだったと思いますが、さすがに判然としません(笑)
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