かっこわるいふられかた

西炯子『姉の結婚』8巻(完結)の感想のつづきです。前回はここ。
タイトルは大江千里くん(ついついくんづけしてしまう)より。
本文及び、『姉の結婚』の内容とは関係ありません。まぎらわしくてすみません。
どうしてもこの作品について考えていると、脳内で大江千里と岡村靖幸がながれてしまう。


相変わらず盛大にネタバレだわ長いわなので畳みます。





『結婚しよう』と言う恋人・涼に
『それより一緒に暮らそう』と、かえす美也さん。秀逸。これが80年代に描かれているだけに。

『おとなになっても ものを考えない人にはわかりません 
実はものを考えない方が物事はスムーズに進みます 
それじゃつまらないなあと思っているのが、涼さんの彼女なんですね』

サードガール 1 (キングシリーズ)

西村 しのぶ / 小池書院



こういう凛々しさは、まさに西村しのぶのヒロイン!

そういう「遊び」、遊びで言葉が悪ければ「躊躇」ができる余裕が、
世の中全体にあったということなのかもしれません。
あるいは保守化とかそういうことなのかも。

それと、この巻でふたりの間におこる障害。これがいかにもとってつけたようで、浅い。
浅ければ浅いだけ、ヨリの不安定さが際立つ、そういう演出かもしれないけれど、だとすればやはり
そのあとのヨリについてもうすこし深みがほしいです。うーん。なんか文句ばっかり言ってるかな。
『砂とアイリス』といい、単に私自身がじわじわメインターゲットからはずれているというだけかもしれない。
そんな不安を抱きつつ、長々と語ってしまいます。

このフックに使われたキャラもかわいそう。こんなふうに使い捨てにされるのは惜しい。
最初からずっと出ているキャラなので、もっと転がしようはあるし、その方が深みが出るはず。
少なくとも唐突感は避けられたと思う。
真木の元妻がヨリとそっくりのエピソードとか、もっといろいろネタは転がっていたのに、
ああ何故ここで駆け足なのか。ちょっと投げ散らした感あり。
映画のプロモからみかしら、とか切ないことを、ついつい思ってしまうではないですか。

こじらせ女子、ということばがじわじわ浸透しているようですが、世の中の女子ってそんなに
『こじれてない』ことが前提なのでしょうか。
素直になればなんでもうまくいくはずなのに、そうなれない私、なの? 
そんなに「素直」ってあるべき姿なの? と、こじれた姿勢をためらわずに全開にしてみたりする。

手元にないので詳細があいまいなのですが、
以前西さんの作品の解説を竹宮恵子先生がお書きになりました。
それがものすごいダメ出しで!! 全力で苦言を呈しておられてました。
解説と言うことは、漫画文庫かなあ。20世紀の終わりころの話です。
当時、古本屋のお向かいに住んでいて、そこで見かけたのです。

うろ覚えなのですが、

「読者をなめてはいけません。筆が走って作品が荒れています。
手抜きの作品は、必ず読む側に伝わります」
「もっと作品に真摯に向き合いなさい」

といった内容だったはず。圧倒されてそっと本を棚に戻しました。
竹宮先生!! なんて熱くて深くてでっかい愛! 
(西さんにとって竹宮先生は師匠筋にあたる方だそうです)

ヒロインの、仕事では優秀でありながら相手の期待をくみとって(おそらく無意識に)併せてしまう、
と言う部分に、何となく作者本人をかさねてしまいます。
創作と、作者を重ねてしまうというのは大変失礼な読み方だとは思うのだけど、
自伝やエッセイでそこはかとなく伝わってくる、西さんの自己肯定感の低さと、
ついついリンクしています。
これだけ息の長い作家さんで、ヒット作にもめぐまれているのに、なぜ!!??
でもそういうのって、自分自身ではどうしようもなかったりすることがあるから、
そういうことなのかもしれない(勝手に決めつけてますけど)
 
しかし二作続いたヒット作が同じタイプのヒロインだと、なおさらに(涙)

同じ時期に完結した西さんの『なかじまなかじま』に登場する映画監督は
『マイナーのカリスマとして、一部熱い支持者がいるがメジャーにはなれない』
という設定。
西さん、まさかとは思うけど、これ、違いますよね? あなたもう大変なメジャーどころですよ!
どうか、一昔前のドラマみたいな切れ味のぬるい詰めの甘い
(でもちいさいけどリアルなエピソードのあるある感で共感と願望を
がっつりつかむような)作品ではなくって、
もう一歩、掘り進んでいただきたい。ファンの勝手な思いですが。

でもそうなると、たいていの場合「世間的な女のシアワセ」とかそういう方向とは一致しないんだよね。
そのあたりの折り合いのつけ方は、たしかに一昔前よりはむつかしいと思います。
西さんの立ち位置が『メジャー』に近づいていることもふくめて。
でも、だからこそ、そこをなんとか。と、やっぱり勝手なファン。

ちなみに新連載は今月末発売でスタートだとのこと。
そのために駆け足だったんじゃないかと思ってしまう。ほんとに不安になっちゃう。

◎以下個人的な雑感など。まとまりきらなかった補足はこちら。

まずやはり、最後までヨリが真木のどこに魅かれるのかが、いまひとつ伝わりきらなかった。
真木自身に、魅力がないわけではありません。ヨリから見た真木の魅力が伝わらなかった。
ハイスペックと『すべてうけいれて』愛してくれることの外に。
だからこそ、ヨリが真木の闇・負・ネガティブな部分をどう受け止めるのか、
どうシェアしていけるのかという不安が残ってしまうかもしれません。

壁ドン、があっという間に消費され、さらにはあごくいとか床ドン(床ドンは)とか
にぎやかしい世の中ですが、みんなそんなに『強引に迫られたい』の? 
だめよーだめだめ、って、あれはガチねただったの???

そういえば、私は『ほだされ愛』という概念がよくわかりません。
もしかしてこのあたりにヒントがあるのかな。
ベルばらのオスカルアンドレには感情移入できません。ベルばらじたいは大好きですが。
(カップルと言う意味では、断然アントワネットさまとフェルゼンです。
ヴァレンヌ逃亡のルートは、マジノラインと併せて、いつかたどってみたい道。
しかし30こえてから、ルイ16世がじわじわ来るようになりました)

確かよしながふみさんが、ほだされ愛猛プッシュで
『どんなにアンドレがけなげで一途か』を、熱く語ってらっしゃいましたっけ。
私はむしろ「お、お嬢様になんてことを!この罰当たり!! 」という気分になってしまう。
もう台無し。アンドレのおばあちゃんマロングラッセ視点と言うことでしょうか。。

そもそも、相手が押せ押せであるかどうかに関係なく、自分が
『色恋沙汰から引退したプチ老後生活を主体的に選んだ』
ヒロインの話だと思ったんだよね、最初。うーん。うーん。

そういえばこちらはすごかった。

何しろ『さえないぽっちゃり女子』であるヒロイン・すぎなに猛然と迫る恋人・広川くん
(イケメンエリート年下わんこ系)。
しかしすぎなはそんな彼を(結果的に)裏切ってチャラ男である日置と浮気してしまします。

そこまでは、まあまんがだしね、と思えるのですが、
すぎなと広川くんが仲直りをしようとするシーンで

「今度は君が僕を誘うんだ」

とヒロインを挑発する恋人。圧巻です。広川くんそんな人じゃないのに!!
でも、その人がここまで言うようなことを、彼女はしたんだ。
そこまで追いつめてしまったんだと、あっけにとられるシーンでした。

人が人を信じられなくなる時、それでも信じようとあがく痛々しさってこういうものだと思う。

…すぎなレボリューション (1) (ワイドKCキス)

小池田 マヤ / 講談社




※11/24追記記事を書きました。日にちを置いて、思いなおしたことなど→こちら。
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by chico_book | 2014-11-17 01:26 | まんが | Comments(0)

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