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ハマのマダムはカッコいい(あるいは妖精を見た話)

少しくたびれておりますがうちのやかん。柳宗理さんですね。

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それまではわりあい適当に『やかん』の形状をしているものを入手していたのですが、
数年前買いなおすきっかけがありまして、こちらにしました。ヨコタカこと横浜髙島屋で。

髙島屋でやかん、というのはちょっとだけ勇気が要りまして。
ええほんとちょっとだけなんですけど。
どれも同じと言えば同じだよね、やかん。基本お湯が沸かせればいいんだし、と思いつつ、
それではその基本から一歩二歩出たところはどうなのかな、と、
あちこちお店をまわってはふたを開けてはしめ、大きさや容量を確かめたり、
グリップをにぎってみたり、買いかえ前の品物の不満を洗い出してみたり。
結構真面目にやかんと向き合った日々。なつかしい。
ポイントとして、リストアップしたのはこのあたりかな。

・低身長なので、やかんの高さが重要
ガス台の高さにもよりますが、中身の容量が微妙に見えづらいことがある。
まったくもってたいしたことではないのですが、
なにしろ日常のことなのでこういう小っちゃなストレスはないに越したことはない。

・非力なので、重さも重要(加齢? )
何しろ重さと熱湯という危険なコンビネーション、足元にはすり寄るねこ。大変にキケン。

・開口部(といえばいいのか)の大きさ、中身の構造
ちょっとかわいいな、という動機で買ってみたやかんの、
洗いにくさや使いにくさに辟易した過去の経験に支えられております。

一回自分の中で基準が明確になると、見え方がクリアになって、
それによって身軽になる部分って大きいんだなあと思った経験です。

しかしこの時に、ああ、私の人生はストウブともクルーゼとも無縁なままだったのね、
とも実感しました。やかんで云々しているレベルの人間に、あの重さの鍋は無理。きっと。
いいんですけど、一回くらい親しんでみたかったなあとぼんやり思わなくもなく。
まあそういうこともあるというだけの話。

staub ココット ラウンド 18cm ブラック 40509-485(1101825)

staub (ストウブ)



18センチで2.75キロ。

LE CREUSET ココット・ロンド 18cm オレンジ

Le Creuset (ルクルーゼ)



こちらは2.4キロ。
3キロ以下ならまあ何とか扱えるかなあ。
若いころから馴染んでいれば、違和感なくそのまま一緒に年をとれたのかも。
そこも含めて、ご縁というか自然な流れのひとつかな。

と言う訳でさんざん悩んで歩いて検索して、ようやく決めたやかん。
新春キッチン商品キャンペーンだったかな、それを動機あるいは口実、
いわばジャンピングボードにして購入。
いそいそとカウンターに座って、販売員さんが在庫を確認するのを達成感とか疲労感とか
諸々にまみれてぼんやり腰かけていました。
ひとつきくらい、やかんなし時代を過ごしていたので、ああ、ようやく解決した、
という安堵感もあるかも。
目の前におかれた売り場の見本品をしげしげと眺め、ちょっとなでてみたり。
うん、やっぱりこれで正解。つや消しも好みだし、ハンドルも持ちやすいし。
これで正解。大丈夫。
ちょっと虚脱状態の中、何度も何度も自分に言い聞かせていました。するとそこに。

「ねえあなた」

え? なになに??
ふりかえるとそこには、毛皮のマダム。なんとダウンではなく毛皮!! 
一月とは言え、百貨店のなかはちゃんと暖房がきいているのに、
迫力ある毛皮(しかもフルレングス)、
見事な銀髪はなんとも優雅なウェーブ、
大きなレンズに紫のグラデーションの入った眼鏡をかけてらっしゃる。
テンプル(眼鏡のつるのことをこういうそうです)に百合かなにか、
エレガントな透かし彫りまで。
なんだか迷いなく、かつとほうもなく貫禄のあるマダムが立っているではありませんか! 
・・・・・・・椅子に座っていてよかった。完全にビビりまくるワタクシ。
しっぽがあれば、足の間にはいりまくりで、後ろに下がっていっております。
なになになに。私なにかしましたっけ?? 
もともと、知らない人に話しかけられることが少なくないのですが、
こんなタイミングははじめて。

「それお買いになるの? 」
「……はい」

一条ゆかり先生のまんがのキャラクターのような押し。圧倒されつつも何とかうなずきます。
すると、マダムにっこり。おお、まさに破顔一笑!!

「よいお買い物なさったわね。それすばらしい商品よ。
私も10年使っているけど、本当に美しいままなの。
すこしかすれが増してくるけど、それがまた美しいのよ。
あとね、これはじっさいに使わないとわからないことだけど」

マダム、声を潜められます。……なんでございましょう??

「お湯が沸いた時の音が素晴らしいのよ。大きい音なんだけど低音なのでうるさくないの」

ははあー。無言でコクコクうなずく私の肩を、マダムぽんぽん、と、優しく叩かれます。

「よいお買い物ですよ、ほんとうに」

コツコツと、ヒールの音高く去ってゆかれるマダム。
入れ違いで

「おまたせしました」

と、お店の方が戻ってこられました。すごいタイミング。
もしかして髙島屋キッチンウェア売り場の妖精とか……あるいは主とか?? 

なんだか出来過ぎな気がして、ときどき自分で振り返っては
「これ昔話じゃないよね。寓話とかでもないよね? 本当に、私の身の上に起きたことだよね?? 」
と、かみしめるエピソードではあります。

いまだに日々、やかんを見るたび使うたび、洗うたびにマダムのことを思い出します。
そして付け加えるなら、このやかんの『湯気の出方』がきれいで、持ち手が熱くなりにくく、
お湯を注いでいる途中の重心も扱いやすい、大変お気に入りです。
大切に使わないと、と、じぶんへの戒めにもなっています。
そして妖精からアイスランドを連想する、なんだかたのしい自分リンク。

柳 宗理 ステンレス ケトル つや消し 311130

柳宗理



アマゾンさんで見ると5000円・・・・・・・。
年越しで悩む金額かどうかがちょっとなんとも言えません。我ながら。
もうすこし高かったような気がしますけど、勘違いかなあ?
(ちょっと違う商品かもしれないし、値段が変わったのかもしれないし、
アマゾンさん価格かも)

以下、そんな横浜の記録をすこし。

横浜駅構内にて。

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「これで完璧!! 幸せそうに見える春ファッション厳選50」
の真逆ということでしょうか。なんとなく篠原ともえを思いだす。
篠原ともえ嬢(当時)のプロデュース力ってすごかったなあ。

夕暮れの横浜。

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素材がいいので、適当に撮影しても鼻の穴が膨らみます(満足)

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横浜美術館前。リラックスした休日の午後。
そんなにきているわけでもないのに、なんとなく懐かしく思えるのは福岡の百道浜あたり、
福岡市博物館辺りと印象が近いからかも。
港が近くて、広々として空が高い、明るい街。

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木へんに春。カメリアは、つぼみも美形。

by chico_book | 2015-03-08 10:45 | 日々 | Comments(4)

Commented by Linda at 2015-03-10 00:49 x
そのマダムの気品、もしかして…

猫柳俊子さんのご親族ではないでしょうか!?
Commented by chico_book at 2015-03-11 00:26
そうですね、気づかなかった…!! 
考えてみれば村上さんは西湘バイパス使用の神奈川県民なわけだし、猫柳俊子さんがヨコタカにいても全然不思議じゃない…! (それにしても、春樹さんの猫柳さんの推しっぷりが素敵すぎます。推しというより押し、といいたくなるほど)

マダムの迫力から行くと、お母様というより大おば様とかそういうかんじかも。実はしっぽが分かれているマダムウィローにゃんかもしれません。
いいないいな。ちこも是非、猫又になってずうっとずうっと楽しく元気でいてほしい、と、詮無くも愚かなことをついつい考えてしまいます。春ね(ごまかし)♪
もちろん本気ではないし、きちんと最後まで一緒に過ごしてあげられることがいちばんだとわかってはいるんですけど、軽口としては、ついつい。

ほかにも、横浜は山手のバス停で毛皮の上品なマダムに
『来月からこの路線バスの運営会社が移管されて、別会社に変更される。しかし新しいバス会社は下品(!!)なので私は好きではない。今のままがいいのに、ああ気が滅入る』
ということをたいへん上品に、しかしきっぱり、更にこんこんとご説明されたことがあります。
神妙な顔で御高説をたまわる私に、マダムは大変深刻な口調で
「ねぇあなた、おそろしいことだわねえ。観光客の方が多くて、週末ざわついているのはあきらめるにしても、○○交通はいやだわぁ」
とため息をつきつつ首をふっておられたのでした。
わ、わたしも地元民じゃないんだけどなあ、と。びくびくしながらバスよ来て来て、早く早く、でもこのマダムおもしろいなぁどうしよう、と、考えていたのを思い出します。クス。

にしても春樹さんノリノリですねえ。書籍化が待ち遠しいけれど、どんな内容かしら、と、そわそわしながらクリックするのも楽しみです。もうあと少しのおたのしみなんだけど。
※ところで下記事の返信コメ、あまりにも誤変換がひどくて申し訳ありませんでした。自分でもがっくりするひどさ(涙)
Commented by conatsu_cafe at 2015-03-12 10:26
横浜の贈答品は高島屋のバラの包み紙が重宝されるみたいで、
中は同じでもそごうでは違うらしい。最近はそんなこだわり、
あるのかな?でも妖精マダムのいうことわかる気がします。
カラーがあるんですよね、バス会社も。神奈川県中央よりには
勝手に間引き運転しちゃうよ、ブップーみたいなバス会社があって
みんなで憤慨した。わたしも若い頃はJR等の窓口対応の
おっさんとケンカしそうになったことありましたもん、と
遠い目をしながら茶をすすっております。。

ワオ!シルクスクリーン、いいですね!いきさつも含めて
思い出の一品ですね。
由来を聞くとよりロマンティックに思えます。やんちゃ買い、
ありますあります(笑)。
そんなとき、辛酸なめ本の「消費セラピー」を読むと
ちょっとホッとします。わたしなどまだまだおもしろくないなあと。
消費セラピーは一度読んで手放して、また古本で買い直したりしと、
迷走した一冊なんですけど。

ちこぼんさんのやかん、素敵ですね。一緒に年をとって
いけそうですね。
白洲雅子さんの「用の美」に通じてます。使ってこそ美しい。
ちこぼんさんがゆうさまの本棚で語っていた「明鏡止水」の
境地に憧れてます。
真央ちゃんは天女みたいですよね。

↓ちこちゃんのお姿を見に通ってしまいますよー。
ちこちゃん似のクッション、似てるー。かわいいー。
げっ歯のこころも楽しみにしています。
わたしも3円切手シート買いしちゃおうかなあ。。
Commented by chico_book at 2015-03-13 01:56
おおーそうなんですか!>髙島屋。ばらの包み紙の威力、小耳にはさんだことはありますが。そごうも髙島屋もない地方出身者なので、基本的な性質の違いのようなものがわかっていません。そごうは紀伊国屋書店と富澤商店入ってるので好きです←そごう関係ない。

髙島屋の方が年齢層が高いというか、裕福な感じの高齢者の方が多いように思います。贅沢というよりは裕福。収入と生活レベルが正比例して高め安定、みたいな。江國さんの小説にあるような、素でお金持ち、無駄遣いはしないけど基本いいものを使うのがふつう、とでもいえばいいのか。そごうの方がもう少し現役感というかコンシャスというか意識高い感じ(偏見です)。
そんな三世代ゴカゾクサマが、ヨコタカにて制服やランドセルをいそいそ購入(あるいはその相談を)している横を物見高く通りすぎております。こども向け商品売り場と同じフロアに『伊東屋』があるので、わたしがよくうろうろしているだけかもしれません。

勝手に間引き運転ってすごいなあ。もしかしたら、移管先はそのブップーな会社かも?? (市バスからかなみんなバス会社への移管です)
市バスも(『下品』とは思わないけど)なぜか来るバス来るバス運転手が全員『大門サングラス』をかけていたことがありました。シュールなコントみたいで、じわじわ来た。たしかに夏場で、朝日をもろに受けるルートだったんですけども、それにしても、なぜ大門? そしておそろいなの? という。おもしろーい。

猫クッション、よくよく見ると、口ものとほくろとか、はちわれのわれかたとかいろいろ違うんですが、雰囲気はものすごく似ていると思うんです!!(力説)特に瞳の色合いとかしゃべりだしそうな口もとから胸元にかけての白さとか!!
いまでも購入して会社に持って行こうかと思わなくもないのですが、逆にせつなくなりそうで手を出せません。目があったら仕事なんか放り出して帰っちゃいそう。でも欲しいー。
ちなみにアトリエキジというショップです→。http://www.kiji.me。たまらないかわいさ目白押し♪

浅田さんの動向も気になりまするが、ワールドももうそろそろですねえ。いまからそわそわしています。
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