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やぶにらみの女帝

本日で終了してしまったのですが、
上野の西洋美術館で開催された
『グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家』
に行ってまいりました。

全然知識のないまま、なにか面白い展覧会あるかなあ…と、
ぼんやり探していた時に見つけました。
全然知らない人だなあ。
イタリアンバロックかあ、カラバッジォはローマで見たっけ、
懐かしいなあ、だいたいあんなかんじかな、
と言う程度のノリで前売りを購入。
バロックの雰囲気嫌いじゃないし、知らない画家だけど、
「迫力のある宗教画を見に来た」と思えば
そんなに外れることもないだろうという、ざっくりした予測。

たとえば私がこのブログをはじめたのは2013年。
その時点で既に、ブログというジャンル自体、
ブームではなく定着と言いたいけれど、
見ようによってはアウトオブデイトになりかけ。
しかも特にテーマを絞り込んだわけでもない
ノンジャンル・地味・長文系だなんて三重苦、
時代錯誤も甚だしい、やる意味ないよ、
日記なら家でノートに書けばいいじゃん、
黒船も来ちゃってるのに幕臣になる夢を
見てしまった新選組みたいだよ、なんてことを、
知人に言われたりしなくもなかったのです。

でも別に、趣味でやることだし、
絶対はじめたら楽しいだろうという確信はありました。
そのご意見は妥当だし、ありがたいけど、
とりあえずやってみればいいかな、と思ってはじめました。
とにかくやってみたかったんですよね。絶対。
いってしまえばそれだけ。
そんなこんなで、現在もとても楽しくつづけているわけです。

そのあたりの思いが、宗教改革後に
カトリックの復権をめざして
これでもか!! これでもか!!! 
すごいじゃんキリスト教の奇跡、
みてみてこんなにすごいんだよ!!
と、畳みかけるようなドラマティックさに充ちた
『バロック絵画』につうじる様な気がしてしまって、
まあなんというか、好きなんです。
熱意とか、好きなものを好きという確信とか。

ええい、いろんな意見があるかもしれないけど、
偶像崇拝と言われようが何だろうが、、
こういうのがやりたいの!! これでもか! どや!!
なかんじというか
(個人のざっくりした感想です。
バロックの定義も、宗教改革云々もあきらかに違ってますけど、
一面をピックアップして拡大解釈ということでお見逃しを)
単にわかりやすくきれいなものに惹かれているだけかもしれませんけども。

新緑あふれる5月の上野。
とりどりの制服、さまざまな方言が聞こえてくる。
元気な修学旅行生がたくさんたくさんいました。
みどりのまぶしさと学生さんたちの若さが、みごとにシンクロ。
展示をつまんなさそうにさっさと通りすぎて、
時間を持てあまして、入り口でおしゃべりしているのも
健全な若い傲慢さが透けて見えて、
いまの私にはそれすらかわいく思えてしまいます。
年取ったのね。

グエルチーノは通称で、意味は『やぶにらみ』。
本名は「ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ」。
実は私もこどものころに斜視の手術を受けているので、
ちょっとだけシンクロ。

点数は44点。国立西洋美術館の展示としては少なめでした。
しかし宗教絵画の大作が多く、ゆったりとした展示品に
ゆっくりじっくり向き合うことができてよかった。
レンブラント展なんて、細かいデッサンも数多くて
200点近くあったんじゃないかな。
(終わりの方は息切れしました)

壁紙の色も濃色で、大きな作品とがっつりした額縁が
たいへんよく引き立ちます。
もともと教会に飾られていたものなど、
聖堂に見立てた展示でこころおちつきます。
国立西洋美術館の特別展は、地下階からスタート。
そのあと階段を上って降りて、
いまどこにいるのかわからなくなります。
(これはいつもそうなんだけど)

ひろい空間に悠然と配された大作、
静かに向き合う時間、
反芻しながらゆっくりゆっくり歩く。
ただの方向音痴なのだけど、
迷宮に迷い込んだようで嫌いではない。
移動中、通路の窓からは上野の森の濃い緑と、
明るい光とさわやかな風。
いろいろ完璧すぎて、帰りたくなくなるほど。

混雑具合までもがちょうどよかったです。
もちろんこれは、
たまたまの要素が大きいのですが。
不安になるほど少ないわけでなく、
鑑賞しつらいほど多くもない。
行きつ戻りつしても、迷惑にならない。
パーフェクトでした。
みんな鳥獣戯画と大英博物館に行っちゃったのかな。

2012年に、グエルチーノの出身地である
イタリア・チェントは大地震に見舞われました。
グエルチーノの作品を多数収蔵している
チェント市立絵画館はじめ、様々な施設が被災。
現在も閉館中で復旧のめども立っていないのだとか。
今回の展示は、その震災復興事業の一環であるのだそうです。
おなじように地震被災国であること、そして
上野の国立西洋美術館がもともとグエルチーノの作品を
(もしかするとアジアでは唯一かもしれないのだそう)
所蔵していたという縁により、実現したと聞きました。

ところで宗教画でわんこはよく登場しますが、
にゃんは珍しいような気がします。
『祈る聖カルロ・ボッロメーオとふたりの天使』
という絵に、ひっそりとキジにゃんがうずくまっているのに大興奮。

展示ナンバー03だったので、絶対カード買うぞ!! と、
息巻いていたのですが、
残念ながらカードはありませんでした。トホホ。

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むしろ展示会としてはわんこ推しかもしれない。
ショップの紙袋に押されたスタンプは、、
『放蕩息子の帰還』
で、おかえり! おかえり!! と一緒に寿ぐ素直なわんこと、
『聖母マリア被昇天』
でドヤ全開の白い鳩のスタンプ。

このアイデアはいいですね。
経費が効果的に節約できるのではないかと思います。

やぶにらみの女帝_f0257756_1941471.jpg


こちらが
『聖母被昇天』(ポストカードの一部)。
星をちりばめて白い鳩に導かれる、自信に充ちたマリア様。
本来は、チェント市のサンティッシモ・ロザリオ聖堂の天井画だそうです。
天井画を間近でしげしげとみることができるのは
得難い体験ですが、そのいきさつを思うと胸が痛む。

倒壊を防ぐための梁を巡らせた建物から、
チェント市民が作品を運び出す写真なども展示してあり、
その思いに胸が熱くなりました。
イタリアの小さな街は長年の憧れです。
いつかゆっくり回りたいなあ。
『遠い太鼓』
の影響ではありますけど。ワイン飲めないけど。

遠い太鼓

村上 春樹 / 講談社



それから事前情報であきらめていた鳥獣戯画展の情報を確認。
私は訪問した日は、
最終入館・16:30、閉館17:00なのに、
16:10の段階で『待ち時間180分』……。

(17時までに待ち列に並んでいただいた方は全員ご覧いただけます、
とのことでしたが)ひゃー。

(私が訪問したのは今日ではありませんが)
たとえば本日(5/31(日)、会期は6/7(日)まで)だとこんなかんじ。

鳥獣戯画展」混雑状況お知らせ ‏@chojugiga_ueno
現在の待ち時間:入場まで(屋外)約150分待ちです。会場内には鳥獣戯画全4巻のうち甲巻を観覧するための待ち列があり、約180分待ちです。鳥獣戯画甲巻以外の展示は、入場後並ばずにご覧いただけます。鳥獣戯画の乙・丙・丁巻も会場内での待ち時間はありません。(11:55現在)


というわけで、入館せずに手前のショップでおみやげだけ購入。

やぶにらみの女帝_f0257756_19455683.jpg


(あれこれこまごま、手を出してます)
さりげなく応挙のわんこも。応挙とか芦雪をみると、
江戸のわんこ絵は、どうにもこうにももふもふのころころで
かわいすぎる。
実は、隣でカードを選んでいたお兄さんが
『ああ、だめだ、俺この犬見たら買わずにいられないんだっ!!』
と言い放ったのにつられました(笑)

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仁王立ちの雀がいい。
実はグエルチーノ展にも
『聖母子と雀』
という作品がありましたが、
その絵の小鳥は雀ではなくごしきひわ、という説もあるとか。
(画像がうまく借りられなかったので載せませんが、
マリア様の表情が穏やかでよい作品です)

そういえばドナ・タートの『黄金の足枷』はまだかなぁ、
と思い出したり(まだのようです)

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モザイクすきにはたまらない紙袋。博物館らしい。
さすがみんな大好きとーはく。

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バロックのドラマティックな光と影(風味)。
お天気が良かったので、シーツをはがしてお洗濯。
毛布も洗おうかな、と振り返ったところ、
すかさずじんどるにゃん。

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気温が上がってくると、心なしか物憂げな表情が増えます。
さりげなくティッシュの箱を枕にしている。

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じつはちこも、そこはかとなくグエルチーノ気味。
真理子先生の小説で、若い愛人がおっちゃんに
「そや。その斜視っぽい目つきがたまらんのや」
と、言われるシーンがありました(何の作品だったか不明ですが)
それをいつも連想します。。
つまり気づけばおっちゃんの立ち位置(涙)
しかも若い愛人を侍らすおっちゃん…。

やぶにらみの女帝_f0257756_195001.jpg


どちらかというと円熟たっぷりの美女。
まあいっか。実際たまらんかわいいな、と毎日思ってるし。
なんでもいっか。

by chico_book | 2015-05-31 20:07 | イベント | Comments(0)

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