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春の嵐とみなと散歩

春と言えば嵐の季節、芽吹くものみな怖ろしい。


高校時代、先輩が好きだった曲。
まんがや小説の選択眼や批評のセンスが良くて、
憧れの先輩だったのでテープがすりきれるほど聴きました。

高校時代の友人と、卒業アルバムをひっぱり出して
しみじみと話し込む夜更け。
未来のあてどなさと時間の豊饒さに途方に暮れかけていた日々の記憶を
共有する友人と、こうしていま話すことのできるありがたさ。
不安で不穏な春の季節を共に過ごしてくれたひとが、
いまもこうしていてくれる僥倖。

お互いにどうにかこうにか時間の折り合いをつけて、
短期集中でしゃべりあかして別れ、それぞれの日常にランディング。
このコンパクトさと集中力をいまの私は気に入っている。
30年前には思いもしなかった。

30年後かどうかはわからないけれど、またそのうちがらりとステージが変わっても、
こんなふうに時間を共有できるといい。そういう自分であるといい。
彼女にとって私が、そういうことをして楽しい相手であるといい(祈)

晴れた土曜日、横浜散歩の記録。

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見事な青空。聞こえてくるのは、たのしげでのんびりした会話のさざなみ。
異国のことばも聞こえてくる。
(比較的)なじみのある英語も、軽快なスペイン語も、
うつくしい音階の中国語も。そういえばいまは春節まっただなか。
中国語のポスターもたくさん見かける。歓迎光臨、だったかな?

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稜線の傾斜を意識して設計されたビル群だそうです。

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『これくらいのひとの多さだと、歩きやすいね』
そうそう。
便利でアクセスのいい大都会なんだけど、どこかのんびりしている。
そしてなにより住んでるひとたちが地元大好き(私も大好き)

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ほんとうに見事なお天気でした。
それでも、空の青さはみごとなのに快晴ではなく不穏な雲のたなびきが
翌日(日曜日)の春一番を暗示していたのかも。

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香港とかシンガポールを思い出す。いや住んだ経験はありませんが。
ほんの数日滞在しただけですが。

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ヴァレンタイン前日だったせいかな、結婚式がとても多い。
あちこちから響いてくる鐘の音や拍手や歓声、花束のようなお嬢さんがた、
エスコート役のりりしいメンズや、正装の皆さまのすがたもたくさんたくさん。
なんとも春らしく華やかで、まだ浅い春、うまれたての陽光にとてもよく似合う。
おめでとうおめでとう。
地面にさりげなく、でもしっかり咲いている小さな花のような気持で、
私もそっと寿ぎを寄せる。

ふたりの人間が共に生きようと心を決めたこと、
これから何があるのかわからない長い道のりのこと、
あるいは本当に困難らしい困難もなく
「いつまでも幸せに幸せに末永く」続いてゆく、
そんなこともあるのかもしれないけど、
ただその決意をしたという事実が、あてもなく確信もないままに
その一歩をふみだしたことが、なんだか胸に響く。
ひとはそんなふうにふいっとこころを決めてしまうものなのだな、なんて。

そんな文章を江國さんがどこかで書いていたような記憶がある。
でもわたし自身の実感でもある。
もしやしっくりはまりすぎて、区別がつかなくなっているのかもしれないし、
私がアレンジしてしまっているかもしれないし、あるいは単純に思い違いかもしれない。
あいまいな記憶。

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そんなことを思ってしまうのは、この看板でこちらを連想してしまったからかも。
(にしても断言すごい)

泳ぐのに、安全でも適切でもありません

江國 香織 / ホーム社



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『意外と変わらないもんですねえ』
『そうね、年をとった自分って、
高校生のころに思っていたよりも、ずっと自分のままだった』
『いちばんごまかしきれないのが自分自身なんてねえ、怖い怖い』

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『だから自分のことを、そんなふうに否定しなくていいよって
言ってあげたいね、高校生の頃の自分に』
『でもねえ、わたしらの世代ってあれでしょ、
高度成長の流れで受験戦争で子供多かったじゃない?』
『うん』
『そのころって社会で有用な人間になるのが目標なのよ。
いかに立派な歯車として機能するか』
『鉄郎だ』
『そうそう、よいネジになることが良き市民の道なの』

銀河鉄道999 [DVD]

TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)



『家庭をまもり夫を支え親世代に尽くし、
子どもをいつくしむ正しい家庭婦人。
だから別に職業をもたなくても、家にいても社会の基盤に
貢献しているってことになる』
『あるいは『女性でも』世間様から尊敬される、
立派で穏当な職業に就くとかね。名誉男性的な』
『お医者さんとか教師とか』
『だから、世間様から外れることは駄目だったんだよ』
『それが唯一の生きる道だから、そのレールにきちんと乗ることのできる人間、
立派なネジとして社会に居場所を見出せる人間にすることが
親の愛情だったんだねえ』

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『それはそれで、世代的にしょうがない部分もあるんだよね』
『まずご飯を食べることができるのが大事で』
『そのあと”教育を受けたくても受けられないのがくやしい”って
いう渇望があって』
『それを達成したらこんどは
”ありのままで受け入れられたい”とか”条件ぬきの愛情がほしい”
と言う話になって』

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※わたしたちのぐだぐだと関係なく、いつもどおり毅然として優美なクイーンの塔。薄暮のころはさらなり。
この気持ちのはるか延長線上にあるなにかが、金閣寺を燃やしてしまったりするのかしらなんて。


『まあ、詰まるところ、手持ちの自分で勝負していくしかないしね』
『うん。ひとを恨まず自分を責めず、状況を呪わず後悔せず』

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「なんだ、かんたん」

『・・・それってねこですね』
『そうだね、ねこだわ』

ねこ好きたちの会話は結局いつもそんなところに落ち着きます。
それはそれで間違いなく幸福のひとつ。

そう、たとえばこれをみて

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『あ、なにか猫グッズが落ちてる! しろいねこちゃんだ!! 
もうもう、みんなねこだいすきなんだから(^^♪
かわいそうだからひろって、目立つところにおいてあげないと! 』

とにやついてしまうほどに。

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はい。そうです。誰かの使い捨てカイロです。あーびっくりした。
 

by chico_book | 2016-02-14 22:58 | Comments(6)

Commented by pinochiko at 2016-02-15 07:21
白い猫の隣の切り株がまず目に飛び込んできて、なんの違和感もなく、猫の体だね、と思いました。
あぁ、恐ろしい。

ひとはそんなふうにふいっとこころを決めてしまうものなのだな、
とは自分の人生を振り返っても思い当たることが多々ありますね。
その時はたいして真剣にも考えてなかったりするのですが、
後になるとそれが大きな分岐点だったりしてね。
あぁ、恐ろしい。
でもそうやって人生は進んでいくんだな。

海に落ちますの看板で思い出したことがあります。
留学中、太っていた私は部屋に「食べるな。太い。」と書いた紙を貼っていました。あはは。
Commented by にゃおにゃん at 2016-02-15 23:02 x
なんだか落ち着いてコメントできなかった引っ越し3週間を切った今日。明日から夫が仕事で帰っているので送るぞと荷物箱詰め第二段で割とスッキリしたお部屋になりました。
もともと家具はないのと、毎月変える夫の運びで、段ボール10箱くらいの小さなお引っ越しなんだけど。
みなとみらい〜元職場本社!
横浜って結婚式って似合いそう。なんだかオシャレだわ。
弟からさくらの毛づくろい動画がやってきてうっとり。一息ついてしっぽを振り、後ろ足をパーにしてムグムグ。離れているとこんなことさえ可愛らしい。
いいにゃあ、ちこにゃんと毎日一緒で♡
Commented by conatsu_cafe at 2016-02-16 16:38
もう、ねこにしか見えなかった。いつでもどこでもねこファーストに
なってました。たまらないですねー。

春の嵐、ヘルマンヘッセの本を読み直してみようかと思っています。
変わっていくようで自分の核みたいなものは終始変わらないのかな。
でも今年は、変化に対応できる力を付けたいなあとは思います。
抗うのではなくて。。

心の底から話せる女友達がいてくれたら生きていけると思います。
後はねこと健康とささやかな趣味とか。

「泳ぐのに、安心でも適切でもありません」。。
わかっているのに漕ぎ出してしまうことってあるのかもしれないですね。
人間って哀しいけどやっぱりおもしろいですよね。

にゃおにゃんさん、お疲れさまです。
いつかお会いできたらいいなあ...って思っていたのですが、
ハラシロ、ねこ好きで送別会などできたら、お時間があったら
いかがかなあ、なんて思ってしまいました。。
(すみません、自分にあまり自信がなくて積極的になれないもので。
しかもちこぼんさんのところで勝手に申し訳ないデス。。)
Commented by にゃおにゃん at 2016-02-16 20:30 x
えええ?嬉しいconatsu_cafeさん。ちこぼんさんボードお借りします。
叶うなら平日は働いてますので27日とか28日(確か特に予定してなかったので)とかお時間ありましたら横浜参ります!
Commented by chico_book at 2016-02-16 23:43
pinochikoさまこんばんは! コメントありがとうございます!!
我ながら間が抜けた勘違いだけれど、いやそれでも白猫っぽいわあ、と、
確信した写真なのですが、まさかの!! 切り株!!(爆笑)
 
……確かにじわじわ、しみわたるようににゃんに見えるようになりました。
かわいいではないですか!>切り株。ちょっと(あこがれの)さびちゃんぽい??
きじにゃんの保護色っぽさに通じるかも。
(たとえばのんちゃんは、竹のなかのかぐや姫のように光を放ちそうですね)
ほかにも、道路に落ちている小さめのレジ袋とか、
誰かがベンチの上に置いたバッグパックなんかも、
にゃんと見まごうております。視力が弱い(数少ない)利点のひとつ。
でも今日はうっかり(ちこの)しっぽを踏んで怒られちゃいました。ごめんよう。

『うみにおちます』という断定がなんだかおもしろくて、
しばらく反芻しながら歩きました。ふふ。
そして、ほんとに何かのちょっとしたはずみで、
ひとは知らずに柵によりかかって、
うっかり落ちてしまうのかもしれないわ、とかなんとか。
ほんとに、ふらふらとたどりついたような道筋だけれど、
でもそうやって進んでゆくのだな、とか、
まあどうあってもだいたいこのへんに来ていたのでしょう、
なんてことも思います。

いやいやいやいや、pinochikoさま(以前動画でちらっと拝見した感じでは)
大変すらりとしてらっしゃいましたよ!
貼り紙が効果的なんてかっこいい、意志の力を感じます。
それにしても『太る』ではなく『太い』というのがなんとも力強い…
(わたしもまねっこしてみようかな(弱腰))
Commented by chico_book at 2016-02-17 07:01
きゃーにゃおにゃんさま! (寝落ちしてしまっておそくなりました)
そうそう、春先、というお話でしたよね!!
さくらちゃんの動画、さぞかわいいだろうなあ・・・
悠然とした美女でゆったりあまえんぼ。完璧。
そんなさくらちゃんと、もうすぐ
『ずっと一緒、いつでも一緒』になりますね。ふふ。
毎日一緒にいる私も、ちこにつけられたひっかき傷すら
いとおしいです。
(いまもちりちり傷んでいますけど、自慢です)

そして御提案の件、すばらしい。のちほどメールしますね。
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