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ひさしぶりの海、再会、そして散歩

3/27までなのでそろそろとお出かけ。今年はじめての美術館へのおでかけ。

『ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし』
神奈川県立近代美術館 葉山分館にて。
公式サイト

都内にはフェルメールとカラヴァッジォという、
たいへん魅力的な展示が来ていて、ちょっと心揺れたけれども、
去年の夏、上野ではじめてであった彼女に再会することにしました。
図録のことも保留にしちゃったし。

そして神奈川県立近代美術館 葉山分館ははじめての場所。
鶴岡八幡宮そばの鎌倉館(1/31閉館しました)には
行ったことがあるのだけれど。
お宮のそばにひっそりとたたずむ、
建物と池と蓮とのバランスが見事な場所でした。寂。

JR横須賀線でとことこ。
土曜のお昼過ぎ、ゆったりした車内。
もうすこししたら春の行楽シーズンでおおにぎわいになるのかも。
鎌倉で降りてランチ、とか(ブルーベルに行きたいなあ)
おいしいパン食べたいな、とか(ひさびさキビヤベーカリーとか)
いろんな思いを抱えつつも逗子まっすぐへ。
車で通ったこと、横須賀行の電車に乗ったことはあるけれど
実は降りるのははじめて。はじめてずくし。

駅前のロータリーと街並みは、少しのどかなかんじ。
海岸まわりという、実に魅力的な名前の路線バスに乗りこみます。
入り組んだ細い道を、バスは(あたりまえだけど)慣れた様子ですいすい進む。

こぢんまりしているけれどかんじのいいお店がつづく。
昔からの住宅といかにも漁村っぽい魚料理のお店といっしょに、
おいしそうなパン屋や珈琲豆屋や
なにを売っているのかわからないような雑貨屋さんや、
あれこれが程よくまじりあう。

その中を走り抜けるランのひとサイクルのひと
長々としたボードを抱えてあるくひと、
ああ、確かになんとも風通しのよい街だわ。

低い山のせまる海沿いの細い道。
私にとってはなんとなく郷愁を誘う風景。
東側に海のある、ちいさい漁港がぽつぽつと連なる
田舎で育ったからだと思う。
もちろんこんな素敵な場所ではなく、
のどかなみかん山とたんぼがぽくぽく続いているだけの、
本当になにもない場所でしたが。
(講演会で朝吹真理子様に『ヒトよりも猿が多い場所』といわれてしまうほど!! 
真理子様!!言い過ぎです! でもゆるしちゃう!!)

それでも近年はトライアスロンとかいろいろな企画があるみたい。
なにより新しい動きがあるのはよいことです。

ようやく美術館へたどり着く。

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美術館の入り口からふりかえった光景。山のせまり方がなんだかやさしい。
半島の反対側、横須賀の荒々しさとはずいぶん違う気がするのは
あちらが『軍港』で、ここが『リゾート地』という偏見のせいかしら。

建物もすばらしかったです。
明るく静かでひろびろとしている。聞こえてくる波の音。
上野の、息づかいの濃厚な夏の森とはまるで違う春の海。
砂浜で波音を聞くのは、去年の夏以来だと思う。
山下公園とはやはり全然違いますね。

光と海の近さ、白を基調に落ち着いてすがすがしいかんじは
横須賀美術館と少し似ています。
2回目ということ、ひとが少ないということでゆったりしっかり鑑賞。
もうね、『日曜美術館』ばりにゆったり見ることが
できましてありがたやありがたや。

シャルフベックが充実した創作生活を求めて転居したのは、
首都ヘルシンキから北へ60キロほどの、たヒュヴィンカーという街。
彼女は15年もの間、その街からほぼ出ることなく創作に没頭します。
それは引きこもりというよりは、それまでに受けた様々な影響、
吸収したあらゆることを自分の中で熟成し、自分自身の表現を深める日々。
(作品はどんどん発表しているので、引きこもりという表現は不適切かもしれません)

小泉さんが一時期住んでいたという「水辺の街」というのは
三浦半島のどこかのようです。
(『小雨日記』の写真やインタビューなどから推測)
そのときの心情を、小泉さんは
『いろんなものから距離をとって、自分と向き合う時間と空間が必要だった。
でもちょっと早すぎたかな』
と語っておられました。
(現在は都内に戻られているようです)

そんな話をゆるゆると連想しながら観ることができました。
こんなふうに風とおしのよい、すこしひっそりした
小声で親密な話を(あるいは自分自身とも)
したくなるような場所だったのかななんて。
小泉さんは小雨ちゃんと、そんな時間を過ごしたのかもしれません。
写真で見る限り、むっくりした体形で
『アザラシちゃん』
なんて呼ばれていた小雨ちゃん。
年をとった大きなめすねこ、ここでも!!
・・・・・・なんてファンは勝手な妄想をしてしまいます。

この展示が葉山に来てくれてよかった。
都会の喧騒を離れて、
小声でしっかりと自分自身にむきあうかんじが
すんなり体に伝わるこの場所の展示で、本当によかった。
もちろん、上野の森の濃く息苦しい緑のなかで
観ることができたのもよかったし、
葉山の海で観ることができたのもよかった。

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海に降りる散策路より。
右側に見切れているのが美術館のレストラン。
(お客さんがいらっしゃったのでこのアングルで)

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ものすごい注意喚起度の高い看板。
トビって『BLACK KITE』っていうんだ…!! か、かっこいい!(中二)

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瀬戸内(の西のはしっこ)育ちのワタクシとしては
こういう静かな波打ち際海こそ、
ああ、これこれ、海ってこうだよね、と思います。
(遠くに、島こそ見えないけれど)

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凄味があるのにからっとしている松の樹皮。

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凛とした椿の美しさ。
明るい陽射しのなかでのこの色合いは、いまの季節ならでは。

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海岸へ続く小道。
実はこういう光景を見るたびに
このまんがの中のシーンを思い出します。
主人公の少年が
『その峠の上から海が見える』
といわれて、駆け出すシーン。
はじめて見る海は、山から見下ろすもので、
きらきら輝くけれど遠く小さいものに過ぎなかったけれど。
それでも、その時の(主人公の)期待がまっすぐによみがえる。

アリオン (1) (中公文庫―コミック版)

安彦 良和 / 中央公論社



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うーん静かでいいですねえ。
凧揚げをする親子連れとか、お散歩わんこさんとか、
静かににぎわっていました。さみしくなりすぎない浜辺。

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隣接のしおさい公園の塀を下から。
石積みで、こういうまるみは珍しいのではないかと思います。
(そうでもないかな??)

葉山しおさい公園』、今回は時間が合わなかったけれど、あらためて来たいなあ。
おいしいパン屋さんでなにか用意して来るのもいいかもしれない。
危険すぎるプランかもしれませんが(トビ対策どうすればいいのやら)

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色のあせ具合とかいろいろ完璧。
それにしても(それなりに)気にしているつもりなのに
どうしてこうも右下がりなんだ…(しょぼん)。

使いみちのない風景 (中公文庫)

村上 春樹 / 中央公論社


↑ 見つけたときは、ちょっとこの表紙っぽいかな、なんて思いましたがそんなでもなかったですね(小声)

お屋敷とこじゃれショップとコージ-なかんじのおうちが
モザイクのように並ぶ小道をとことこ歩く。
家のなかからチェロの音が響いてきたり、
最近ではめっきり見かけなくなった犬小屋と柴わんこが見え隠れする庭先。

なるほど、これはお散歩たのしい場所ですね。

ジェイコブズの4原則、なんて思い出します。。
宮脇檀さんの著書で知ったような遠い記憶。

参考)ウィキペディア ジェイン・ジェイコブズの項目より引用***


都市の街路や地区で,溢れんばかりの多様性を生成するためには,4つの条件が必要不可欠である。

1. 地区,そして,地区内部の可能な限り多くの場所において,主要な用途が2つ以上,望ましくは3つ以上存在しなければならない。そして,人々が異なる時間帯に外に出たり,異なる目的である場所にとどまったりすると同時に,人々が多くの施設を共通に利用できることを保証していなければならない。

2. 街区のほとんどが,短くなければならない。つまり,街路が頻繁に利用され,角を曲がる機会が頻繁に生じていなければならない。

3. 地区は,年代や状態の異なる様々な建物が混ざり合っていなければならない。古い建物が適切な割合で存在することで,建物がもたらす経済的な収益が多様でなければならない。この混ざり合いは,非常にきめ細かくなされていなければならない。

4. 目的がなんであるにせよ,人々が十分に高密度に集積していなければならない。これには,居住のために人々が高密度に集積していることも含まれる。 (中略)

この4つの条件は,どれかひとつが欠けても有効に機能しない。都市的多様性が生成するためには,4つの条件すべてが必要である。

— 著:ジェイン・ジェイコブズ、訳:中村仁 "The Death and Life of Great American Cities"(Random House, 1961, and Vintage, 1992, pp.150-151)


***引用ここまで

そこかしこに素敵な自転車やバイクや車。
ビンテージ度高い。ピカピカの新車でないところがまたよし。
そして居並ぶサーフボードやウエットスーツ。
でもお金持ち系ぱりっぱりだけでなく、ほどよい馴染み感とのマーブル。
(たとえばもちろん楽しいけれど、松濤のお屋敷街の散歩は緊張します)
(ほどよい緊張感がまたよし、というエリアでもありますね)

海辺のお散歩で、思い出すのは10月のオランダ。

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(当時のケータイで撮影したので)
ちいさすぎてわかりにくい写真だけれど、スへフェニンゲンの海岸。
北海に面した代表的なリゾート地だそうです。
シーズンオフの海辺のリゾートの、ちょっと痩せたやつれたような風情が好きです。
そういえばイタリアのリミニに行った時も、9月の終わりでした。

砂にじぶんの足が埋まる、その感触に集中しながら、
風力発電の羽根を眺めながら砂浜のはしからはしまでじっくり歩く。
この海から世界に乗り出していった人たちのことを思いながら。

ひたすら歩く私のそばを、
サーフボードを抱えて海に走ってゆくひとや、
ゆっくり追い越してゆくいかつい4輪とか、
高い位置にある舗装路を通りすぎるモペットに連想するのは『アメリ』。


(エンディングの動画です)

でも一番びっくりしたのは 「馬に追い越されたこと」 でしたっけ。
砂浜に残る、大きなひづめのあとをながめながらてくてく歩く。歩く歩く歩く。
結局どこでも散歩が好きなのかも。

※スヘフェニンゲンのWEBカメラのサイトがありました!! → 
現在の気温は6℃だそうです。

御用邸の前にたたずみ神奈川県警の方に
はきはきあいさつしていただいて、すこしたじろぎながらもお返事を。

帰りは京急高速バスでYCATへ。
想像できない経路、
でも確実に知っている場所に帰るのは旅の醍醐味。

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こちらがバス停です(なんで英語なのだろう…)乗りこむのは10人前後。
『帰りはこれが一番楽だよなぁ』
というおじいさまおばあさまに(はじめて乗るのに)ココロのなかで同意。
葉山からYCATまで片道600円。鉄道と比較しても50円ほどしか変わりません。
なんともありがたや。

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足元にはなんだかかわいいプランター。

プリンやさんマーロゥの前(いつもは横浜そごうでおなじみ)を経由して
逗葉新道から横横へ、うとうとしていて気づけば首都高。
金沢、本牧を経由して、おなじみの桜木町から横浜駅はすぐ。
一時間ほどバスの旅。

そごうの紀伊国屋書店で
キョンキョンさん特集雑誌(残り三冊でした!あぶない!!)と
にゃんこの新書を購入して、いそいそと帰宅。
待ちきれずにそわそわページをめくります。
でもくたびれて0時過ぎにはベッドへ。
(本人比では比較的早い就寝時間です)

たのしく充実した一日でした。やっぱり海はいいなぁ。
そして散歩はいいなあ。旅はいいなあ。

by chico_book | 2016-03-06 16:10 | イベント | Comments(4)

Commented by にゃおにゃん at 2016-03-07 11:15 x
引っ越しして、早速実家にご飯甘えに行き、さくらといちゃいちゃしてパワー充電しました。どうやらいつもいると分かった様子。前回お正月に帰省した時は私が帰って2日目あたりから私の布団に寝ていたそう。
キビヤ食べたいなぁ。美味しいクロワッサン。
元のおうちに戻ったらテレビはなく、AppleTVをつなげてます。本を読む機会増えるからとても参考にさせていただきます♪
出逢えて良かったわ〜ホント、生ちこぼんさん。
Commented by chico_book at 2016-03-08 01:26
にゃおにゃん様お疲れ様ですー!!
よかったよかった。そしてさくらちゃんさすがです。
不思議ですよね。なんでかつたわりますよね、ちゃんと。
こちらの気構えのようなものも伝わるのかもしれません。
(病院行かなくちゃ、と、思っただけで
かくれちゃう、なんて話も聞きます)
さくらちゃんもゆったり幸せですね、きっと。

そのうちまたきっと、お会いできると信じています。
おいしいパンの話とかもいいですね。
うちの近所の
(ほんとになにもないところにぽつんとある)
おいしいパン屋さんの話なんかもぜひ。

有名店ではないのですが、食べログなどには
『こんななにもないところになぜこんな本格的なお店が』
という文脈で評されていて、おかしいです。
ものすごい名店と言う訳ではありませんが、
普段使いするには充分魅力的なお店で、
私はうれしく思っています。
週4日営業(しかも日曜休み)なので
なかなかタイミングが合わないんですけど、
まあそれもあじわいのうちかな、なんて。
Commented by Linda at 2016-03-08 05:36 x
行きと帰りに違うルートって楽しさ倍増ですよね。
飛行機もお得値段でそうできたらいいのに。

ヒュヴィンカー(Hyvinkää)市のサイトでヘレンのモニュメントを見つけました。
作品名からとった、ドアという名だそうです。
http://www.hyvinkaa.fi/kaupunki-ja-hallinto/hyvinkaatietoa/historia/kuvataidenhistoria/helene-schjerfbeck/

街の全体像までは掴めませんでしたが
トップページのイラストがとてもフィンランドデザイン的でかわいいです。
http://www.hyvinkaa.fi/

BLACK KITE!とびに比べてなんと鋭い名前。
ゲイラカイトでしたっけ、洋物の凧。ふふ
Commented by chico_book at 2016-03-10 00:01
Lindaさんコメントありがとうございます!
そうそう、ほんとにたのしかったです。
JRか京急か、どっちに(鉄道)しようかな、
なんて思っていたのですが、高速リムジンバス。
ゆったりしていて乗り心地が良くて、車窓のながめもたのしくて
遠足気分でとっても楽しかったです。また行きたいなあ。
(どこに行ってもこんなことばかり言ってる気がしますが)

一応、展示での表記にならって『ヒュヴィンカー』としたのですが
いかがでしょうか。
日本語に表記するのはなかなかむつかしかったりもしますよね。
(上記の、オランダのスヘフェニンゲンも
『ヘフェ』→『ケベ』と表記されていたりもします(がくっ))

ご紹介ありがとうございます。
やはりまた、画風が全く違っていてやっぱり興味が深いです。
(実際展覧会でも、時期によって全く違いました)
英語表記にすれば(少しは)わかるかなあと思って、
さがしてみたのですがうまく変換できなくて、
結局まぁったくわかりません(笑)
でも写真綺麗だし、イラストもたのしいからいいや。
イラスト盛りだくさんでとっても楽しそう。
イラストを見る感じでは、ビーチリゾートもありそうだし、
写真では、スキー(クロスカントリー?)やボードもあって、
もりだくさんだなあ。素敵。
私も充電したいなあ、と、ぼんやり思ってしまいました。
ひたすらぼぉっとするだけになりそうだけど(でもたのしそう)

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