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春の明るい鬱屈と海

いろいろともたもたすることが多い日々。
くたくたになって暗い部屋い帰宅すると、なにかを察したねこが
するりと身を横たえてくれる。
暗い室内、夜目にもまぶしい輝く白いおなかを優雅にさらす。
裸のマハにそっくりやん……と、そっと頬を寄せるわけです。
呆然としたこころもちで、陶然と目を閉じる。
ふわふわやわやわ、そしてあたたかさ。ありがとう。いつもありがとう。

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(ささ)

でもなんだか私の抱えるマイナスや鬱屈を、
ちこに吸い取らせる様で申し訳ない。

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(ふーん)(←たぶん無関心)
心配かけてごめんね。やさしくしてくれてありがとう。


土曜日、午前中に用事を済ませた後、思いきって電車に乗る。
私はいつもどこにいても大抵楽しくなってしまう
(たぶんお得な)ところがあって、どこにいっても
また来たいなあと思うのですが、
実際に再訪することは、なかなかむつかしくもあります。

でもなんだかすごくこの日は行きたかった。
いろいろ考えると、むつかしくなってしまうのだけれど、
無理してでも行きたくなってしまったので、
素直に(自分に)従って無理することにしました。

横須賀線はなかなかの混雑具合。うららかな春。
鎌倉でごっそり人がおりてゆく。
年中人気の鎌倉だもの、花のころはさらなり。
こっそりうなずく私は、鎌倉では降りずに逗子へ。

バスターミナルの列が思いのほか長くて、
慣れない街なので戸惑っていると、品のよいマダムに声をかけられる。
『葉山にいらっしゃるのならこちらでよろしいのよ』
ありがたく会釈して、バスに乗りこむ。

マリーナの絢爛たるヨットの並びに嘆息、
おなじみのレッドロブスター、マーレ・ド・チャヤ、デニーズさえもオーシャンビュー。
春の海岸、わかめを干している隙間をぬって、
とことことバスで20分強。
神奈川県立近代美術館葉山館前のバス停で下車。
ほぼひと月ぶりの再訪。

現在は原田直次郎展をやっていました。
「近代洋画・もうひとつの正統 原田直次郎展」
公式サイト

昔鴎外がらみですこしだけ調べたことがあるなあ、と、
興味はあったけれど立ち寄らず。本日は初志貫徹。

とことことすたすた、海岸へ向かいます。
鬱屈しているときは、きっと新しいなにかにむきあう余力がないから。
いくら情報に触れても、吸収できずにスルーしてしまいかねないから。

海岸を歩くのはとても気持ちいい。砂の感触。
足が埋まらないように、濡れないように、
波打ち際で洗われる石や貝がらをなるたけ近くで見たいし、
けれどスニーカーが濡れるのは絶対に嫌。
ただひたすら、足元に集中する。心地いい潮風、ひっきりなしの波の音。
波ってこんなに、ひっきりなしに寄せるものだったっけ?

カラフルなバケツや網を持った小さな子どもと、
そっと見守るおとなたち。
テントのなかやリゾートチェアで、誰かが奏でるウクレレの音はとぎれとぎれ。
磯遊び、砂遊び、はつらつとしたわんこたち。
「ママーこっちみてー」
聞こえてくる切れ切れの声。
ぼおっとしながら歩く。歩く歩く歩く。
すこし遠出になったけど、江ノ電沿いの砂浜にしなくてよかったかもと思う。
行ったわけでもないけれど、きっとこっちの方がのんびりしている。

春の歌をそおっと口ずさむ。
恥ずかしいので、誰にも聞かれないように小声で。



海の歌も、そっとそっと。
なにも考えなくてもすらすら出てくるのは、どうしたって80年代メモリーズ。



(あんまり春の海っぽくはないけれど)



斉藤さんの『真田丸』すごすぎでうれしい。



むかしセブ島に旅行した時、ずっと聴いていた曲。
なので、個人的に海のイメージ。

海に流れ込みそうで、なかなか届かない水の流れをじっと見た。
勢いよく流れてきた小さな流れが、河口で一気に拡散したために、
ひとつひとつの流れの勢いが弱くなって、
砂が堆積してしまってながれがとまる。
地層の見本のように、砂の模様が描かれてゆく。
6分だてくらいのクリームを、泡だて器で持ち上げた時の
優しいかさなり、そしてまたほかに水が行く。
その模様を延々と見ていた。まったく飽きずに。
受容と拡散、そして浸透ってこういうことなのかしら、
なんて勝手なことを思いながら。

ぽつぽつと遠くに浮かぶヨットの帆。
砂浜でストレッチをして、サーフボードをもって駆け出す人たち。
待ちきれないようなその姿。

ボードの上に立って海面を進むひと。
SUP(スタンドアップパドルボート)というのだそうです。
面白そう。
ゆるゆると進むように見えるけれど
実際には大変なんだろうなあ。でもちょっとやってみたい。
海と空と自分だけの空間ってどんなかんじだろう。

わたしは何しろどんくさいくて、体力のなさに不安がいつもあるので、
スポーツをなにかしたいなあと思っています。
私が(スポーツに)望む要素はこんなかんじ。

・個人競技(ヒトのペースについてゆけないし、プレッシャーに弱い)
・誰とも争わずにすむ
・全身を(割合)まんべんなく使う
・激しすぎない、ストレッチ要素の多い

これいいかもしれないなあ。憧れの眼で眺める。
こんなどんくさいおばちゃん(身体能力ではおばあちゃん気味)でも
だいじょうぶかしら。

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※明るい日向では、スマホの液晶が全く見えなくてあてずっぽうで撮った写真。
ひどいけれど、海の色はまさしくこのままのやさしさうつくしさ。

そんなことをたのしく考えながら岩場の上の芝生エリアに腰を下ろす。
人影はぽつんぽつんと。それがなによりありがたい。

テントのなかでゴロゴロするひと、
お弁当やクーラーボックスからビアーをたのしげに取り出すひと、
一口を待つお行儀のいいわんこさんたち、
それを狙って急降下するトビ
(私は食べ物を持っていないので狙われません。トビすごいなあ)
短パンからすんなり伸びた小鹿のような足を
ばたつかせながら、寝転がって図書館の本を読む小学生たち(男女混合)。
思い思いの休日。なにここは天国なの!!
ね、ねこはいないけれど(小声)


そしてなるほど、わんこはこういうことを一緒に
楽しめる存在なのね、としみじみ思う。
そんな天国みたいな光景を、芝生の上でぼーっと眺める。
春。海。私はいとおしい猫のことを思って目をつぶる。

日々の絶え間ない摩擦と消耗で、全身に帯びていた静電気が
引き寄せていた灰塵が、少しずつはがれてゆくような気がする。

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(この写真は、同じ場所ですが3月の夕方です)

2時間ほどもぼおっとしていました。
時折なんちゃってヨガ、みたいな変な動きをする中年女ひとり。
風に吹かれながら、こわばった体を思うように動かしてみる。

御用邸前の海岸を端っこまであるくときに、聞こえてきた会話。

「そういえば○○さん、ここで美智子さまに会ったんだってー」
「おおー、さすがー御用邸じゃん! 」
私もこころのなかでまるっと同意。

「なんかさ、オーラ半端なかったってよ! 」
こころのなかでそっとばくしょう。しずかにばくしょう。

葉山しおさい公園まで行ってひとまず今日のお散歩はおしまい。
小学生が遊んでいたサッカーボールが、ころころと流れてきて
私にぶつかって止まった。
ボールを取りに来た少年がはきはきと言う。
『失礼しました、大丈夫ですか? 』

ううむ、なんというしっかりしたお子さんでしょうか。
21世紀の子どもってこうなの、それとも葉山のお子さんがすごいの、
あるいは彼がスペシャルだったのか。

バスで京急新逗子駅まで行って、そこから黄金町へ行って
『ロブスター』を観ました。
映画を観るような元気が出てよかったと、自分で自分に思います。

そんなに遠くないのに、まったく別の場所に来たような感覚。
海はいいなあ、砂浜はいいなあ、ひとが少ないなんて最高だわ、
(楽しげな休日のファミリーやカップルさんに場所待ちされると
なんだか申し訳なく落ちつかないオヒトリサマ)

しんどくなったらまた来よう。特効薬のような場所。
しんどくなくても、意識してでも、ときどき来よう。
きっとメンテナンスになるはず。ステイヘルシーは私自身にもいえること。

そんな休日満喫の記録。

by chico_book | 2016-04-11 00:38 | 日々 | Comments(8)

Commented by 828summer at 2016-04-11 05:16
チコボンさん

どうも。
曖昧な記憶ですが、人に与えるそれぞれの自然のパワー、海vs山で違っていて、海は浄化の方のだったような。対比の山のがぴったりな言葉思い出せないのですが、きっとそっちは養う、与えるような何かでしょうが…。

よかったですね。海に癒されて…。
STAY HEALTHY! チコボンさんが書かれてると、正しくその通りと思いますよ。チコボンさん言葉、マーブルとそれは、わたしの中でも定着して、ちょっと置き換える言葉ないです。基本BY MYSELF 時に猫に友に本に映画に自然に、チコボンさんも、他のひとたちも、わたしも生きていくのですね。
人生らしいね、それが!

まじめなコメントになっちゃったな~。

海があっていいな。
海なし県人には憧れ。わたしたち多分みんな海を見ると、わーっっ!って、思わず声が出るし、身を乗り出しますよ。

海、バンザイ!です。


ではね(^^)/
Commented by pinochiko at 2016-04-11 07:14
本当に天国のような場所と空気ですね。
「失礼しました。大丈夫ですか?」って言える子どもがいるなんて、
この世とは思えないですよ。
もしくは村上春樹の小説の中みたい。

ね、ちこちゃんと一緒に行けたらどんなに素敵でしょうね。
猫とピクニック、が私の夢でもあります。
Commented by にゃおにゃん at 2016-04-11 17:23 x
いいね!海は癒されるわ。
そして聖子ちゃんの制服は今聴いても名曲だと思います♪
週末は茶道→書道→ヨガの後実家へ戻り、さくらを猫吸いしてきました。今回は2回もお布団に泊まりに来てくれたのよ。だんだん心を許してきたらしい(笑)
真田丸見てないのですが、私は遠慮して行かなかった渋谷でのお初香に雅人さまがいらっしゃっていて高得点の記録を拝見しました。真田家14代当主もご同席だったと聞いて、あ、行けば良かったなぁ。と悔やんだりしてみました。たまにゲストでいらっしゃるみたいなのでいずれお会いできるでしょう。
東京に住んでいた頃が浮世話のように聞こえる平和なゆったり時間を楽しんでいます。(日本語おかしいかもですが、まぁ、そんな感じwww)
Commented by Linda at 2016-04-11 20:42 x
私も水辺が大好きです。ほっとします。
週末プールへ久っしぶりに行ってみたら、サウナも腰湯も
すべりだいも泳ぐのも楽しくてもう一度行きました。

ちこぼんさんも予定に組み込んじゃって
しんどくなる前に海へ行って充電してくださいね。

ちこにゃんは全て受け止めてくれるヴィーナスみたい♡
Commented by chico_book at 2016-04-12 23:55
828summerさま!!
わーい、コメントありがとうございます。
私もそちらの桜の記事を楽しみに拝見しています(感謝)
高い山に囲まれた奥行きのある土地のさまざま、
とても興味深いです。

育った街に小さい漁港と海水浴場があったので
どうにもこうにも海のそばが好きなようです。
その点でも横浜は住んでいて楽しい街なのですが、
砂浜を散歩して
「ああこれだ!! 
わたしが好きな海は、横浜港じゃなくて 
(同じように砂浜でも、にぎやかな江ノ島でもなく)
こっちだ!! ウオータア!! 」
と、強く強く思いました。
私も、ちらっとでも海が見えると
『あ、海!! 』
って、はしゃいでしまいます。ふふ。
こうして自分でも記事にしたことで
「そうだ、海行かないと!! 」
と、自分でも意識しやすくなりまして、
それはきっといいことです。

なんでも、自分で自分をケアする要素は多い方がいいですよねきっと、
わたしも、828summerさまの記事で、うなずくことほんとに多いです。
(コメントを考えているうちに入れそびれたりしてますが)
キープでなくて、ステイと言うのがなんだかいいな、
と思っています。

最近ちょっと本を読めていないのが悩みどころです。
時間をガッツリ確保できないんですよねー。
Commented by chico_book at 2016-04-13 00:13
pinochikoさまこんばんは!
私も正直びっくりしました。
いま思い出しても、
実はあの時知らないうちに異界か何かに
足を踏み入れていて、
気づかず戻ってきたんじゃないか、とか
思ってしまいます。ほんとに浮世離れしていた。

カメラ持っていなかったのが
逆によかったのかもしれません。
気が散らなかったというか。
確かめるためにまた行こう、と、
いまからわくわくしています。

ほんとだ! 春樹っぽい!! 
葉山というロケーションがまた、
小さな入り江と迫る低い山と、
感じのいい人たちで、本当にそんな感じです。

ひっそりした声ので、服装と髪型のセンスのいい、
実は(ぬいだら)(意外に←重要)肉感的な美女が、
散歩しながらしゃれた言い回しの会話をしてそう!!
そしてそれが全然嫌味でないという。
干してあるわかめと両立する!!

ね。わたしがこんなに心地いいのに、
ちこはいつものお部屋で
お留守番、そう思うと胸が痛みました。
なにしろわんこさんたちは
うれしそうでうれしそうでうれしそうだったから。
でもにゃんこは基本的におうちがいちばん、
だからなあ、なんて思っちゃいます。
一緒にのんびりできるのならいいのだけど
(たまにそういうにゃんこさんもいるみたいですね)

Commented by chico_book at 2016-04-13 00:46
にゃおにゃんさま
わーわー、さくらちゃんの繊細な間合いの
つめ方にうっとりしてしまいました。
ほんとにかわいい。
かわいいだけでなく魅力的ですよね。
ピュアなのに試合巧者なひとたち。
ちなみにちこはいま、
ねここたつのなかでふかふかしあわせそうです。

そちらの海は、
すこしトーンがやさしいかんじなのかな、
と(勝手に)思っています。
パステルと言うのとは違う、
けぶるような色あいなのかな、と勝手に。

それにしてもにゃおにゃん様の充実ライフ!!
(ちゃんとさくらちゃんまででフルコース)
聞いているだけでわくわくしてしまう!!
たのしいな、
聞かせてくださってありがとうございます。

わたしも、さまざまに手を尽くして
『ココロの平穏/静かな充実』
に真摯に向き合おう、と、改めて思いました。
それにしても堺さんほんっとーに多才な方……。
Commented by chico_book at 2016-04-13 01:05
Lindaさん

うふふ、わたしもLindaさんの湖や川の
写真を思い出しましたよー。白鳥もこみで。

場所によって海も、全然違って興味深いです。
とにかくものすごく気持ちよかったのです。
いま反芻していても、
とても楽しい気持ちになります。

プールのお話もたのしそうだわー。
わくわくしながらすべり台にのぼったり、
腰湯をしながらリラックスする
気持ちになっちゃいます
(勝手に追体験←ただの妄想)

アイスランドで入った温泉プールを思い出しました。
完全地元の人向けのちっちゃくて深いプールから
必死で見上げた青い空、とか。
いろんなルートでアクセスできるのも、
より親しくなれるような気がします。

Momoさんの、お散歩に真剣で律儀なところ
すごく好きです。

おたがい、いとしいねこと、
ほっとする(出来る)場所でゆったりする時間を
たいせつにしましょう♪
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