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希望を持ったまま立ちどまりつづけること

候補のなかにはいってはいましたが、
そんなに優先順位が高かったわけではありませんでした。
ほかの映画を観ようとしましたが間に合わず、
プランBとして(時間がちょうどよかったので)こちらを観ることにしました。

『ルーム』 ※公式サイト



理不尽な形で人生を奪われた家族の物語。
素晴らしかった。まだこころが震えています。

監督は『FRANK-フランク-』のレニー・アブラハムソンであることを、
鑑賞後に知ったのですが、とても納得。
(『FRANK-フランク-』の感想はこちら

どちらも、世界が変わることの恐怖、世界を変えることの勇気、
そしてそうして歩く人へのいたわりと励ましのこもった
やさしいけれど甘くない作品です。

主人公は5歳の少年とその母親。
長い髪、愛らしい表情、子どもらしい饒舌さで、
身の回りのあらゆるものに話しかけるところから物語がはじまります。
しかしそこは、実は7年におよぶ監禁生活の場所。
17才で誘拐された少女はやがて母親になり、
そこで生まれたこどもは、
外の世界を知らないまま5歳の誕生日を迎えました。

丁寧につづられるのは絶望のなかでも存在する、
ささやかな日常と、しかしそこにのしかかる
ゆるぎなく圧倒的な絶望。
そのなかで、母親は少年に希望を託すのです。

じぶんを信じることですら、ときには困難であるし、
他人ではなおさら。
家族であってもそれは例外ではありません。

他人の人生を消費すること、自分の人生と同じように、
ほかのひとの人生も尊重すること。

私には、この作品の登場人物と同じような
経験はないけれど、それでも(誤解を恐れずに言えば)
ヒトはみなサバイバーなのだと思う。
いつも思う。強く思う。

世界はいつも美しくて残酷だし、すべては流れてゆくから、
一瞬後にはすべて過去となる。
とどめ置くことのできないこの世界を、よろけながらもあるいてゆくこと。

それは自分で選んだものではなく、何か大きな力によって
与えられたもので、それゆえにキリスト教では自殺は大罪なのかも、
とかんがえてしまいました。

内容はまったく違うのですが、こちらを連想しました。



圧倒的な地獄をぬけて、平穏なはずの日常に
戻ってから、また新たなサバイブがはじまるというのが
人生(の連続)と言うことに由来した連想なのかもしれません。

素晴らしい作品でした。
(わたしのように)迷っているかたはぜひ。


登場人物がたいへん少ないのですが、
とにかく全員がとても素晴らしかったのです。
その中でも、母親役ブリー・ラーソンと、
少年役のジェイコブ・トンプレイくんは圧巻でした。

それにしても『天才スピヴェット』でも思いましたが、
ハリウッドの子役に求める水準は本当にすごいわー。



強く信じること、絶望のなかで希望を失わないこと。
絶対的に信じることのできるものを持つこと、
そこには宗教観が絡んでいるのかしら、
と、うっかり思ってしまったせいか、
はしごして観たこちらにはやや乗り切れず。

『スポットライト 世紀のスクープ』 ※公式サイト



社会派告発映画としては大変面白いのですが、
『神父』
が、社会においてどういう存在なのか
ということをふむふむ考えながら
観ることになったので、個人的には
予習が必要だったのかもしれません。
固有名詞が多くてちょっと振り落とされたかな。

それでも、
真実に向き合うジャーナリストの在り方、
痛みを受けた人間への寄り添いかた、
自分の過去のあやまちへ向きあうこと、
それぞれのルーツや家族の問題、
チームとしての仕事のすすめかた、
そしてなにより不屈の思いを持ち続ける、
立ちどまり方踏みしめ方
地道さ丁寧さが大変素晴らしい作品でした。

場所がボストン、と言うことに意味があったのかな、
と言うのも気になるところ。
実話に基づいているのがもちろん第一の理由でしょうが、
ボストンと言う町の立ち位置はどうなのかな。
そういえば、やたらアメリカリーガルドラマの舞台に
なっている印象があります。
(先日終わったばかりの世界選手権の舞台でもありました)



会場席からの動画です。ありがたくお借りします。
ほんとうに大きく見える、リンク全体に空間が広がるのが
こんなふうに見えるのね、と胸が熱くなりました。

和音で手を振り下ろすところで、てのひらから香気がたちのぼり、
奔流となってこぼれだすのが見えます(妄想)

それにしても、人生の苦闘、人間の回復と宗教というテーマは
私にとって70年代から80年代の少女漫画が描き、追究してくれたものです。
(個人的にリアルタイムではなく、遅れて接することにはなりましたが)
よい時代によいものに触れることができたことを、あらためて感謝します。

総特集 三原順 少女マンガ界のはみだしっ子

三原 順 / 河出書房新社



トーマの心臓 (小学館叢書)

萩尾 望都 / 小学館


by chico_book | 2016-04-24 13:04 | 映画 | Comments(0)

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