しずかな雨しずかな秋

20年以上前の秋。

慣れない会社員生活に四苦八苦していた私は、
休日や退社後に、同期の友人とCDやさんめぐりをするのをとても楽しみにしていました。
タワレコもヴァージンも、HMVもみんなみんな威勢のよかった90年代。

ジャズドラムをたしなんでいた彼女に、いろいろ教えてもらいながら、
すこしずつジャズやボッサを聴いて過ごした。
新しいことを、ぽつぽつと知ってゆくたのしさ。

お互いの部屋で過ごすことも多かった(恋人か!←違)
彼女の部屋の窓からは、少し離れた場所に川が見えて、
それがとても好きだった。
わたしの部屋からも川は見えたけれど、にぎやかな国道と
ビルや高速道路の隙間からのぞくそれとはまるで別物の、
静かで河口近い悠然とした流れは、彼女そのもののようにおちついて見えた。
近くに古くて大きな神社があることも、その場所の素晴らしいことのひとつだった。

彼女が学生のころから住んでいるという、
こぢんまりしたとても居心地のいい部屋には
厳選された書物やCDや、素っ気ないけれど
味わい深いアイテムがそっと置かれていて、
いまだに油断すると『塚』が出来てしまう私の部屋とは大違い。
お邪魔するたびにわくわくそわそわしていた。
きっと今でもそうなんだろうなあと思う、
そうして日々を過ごしているのだろうなあと思う。
いまとなっては、彼女と会うことはなかなかむつかしいのだけれど、
そう思うだけで胸のどこかがほっとする。

思い立って30分もあれば顔を合わせてお茶を飲むことができた。
当時、福岡の地下鉄はシンプルだったから。
不安定な時代に、そんな友人がいたこと、
そういうふうに過ごしたことをほんとうに宝物のように思う。

テレビを持たない彼女が、朝聴いているFMの
ヘビーローテーション曲だった、きっと好きだよ、
と、教えてくれたのがこれ。




「ああ 知らないことが もっとあるような気がしてるから いつか聞かせて」

20代で、この曲に会えてよかった。
ひとにむきあうことに、まだまだ勇気と元気のある時期に
聴くことができてよかった。

貧乏なのにバイトもろくろくしなかった学生時代の反動で、
月に一枚CD買っていい、と自分を赦すことにした時期。
そしてそのことに舞い上がっていた。
単行本も、月に3000円までは出していいという、
自分甘やかしに、陶然としていた時代。
(書籍に関しては、そのあと
ぐだぐだ総崩れ→敢えての大暴れ→見直し緊縮財政→反動で見境なし、など、
購入基準についてはめまぐるしく変遷。
現在はわりあい落ちついています。
もうこれは、ひたすら置き場所と時間がないから…)

テレビや雑誌への感度はあまり高くなかったので(これはいまでもかな)
店頭のレコメンドに魅かれて、視聴してみることにしました。
既に充分すぎるほど、トップミュージシャンだった。
ああ、なんだかよく名前見かけるひとだわね、とは思いましたが。
岡崎京子は読んでいたからなんとなくイメージはあったかな。


いまにして思うと、どうやってスルーしていたのか不思議なほど。
情報遮断? 
いやいやインターネットのなかった時代ならでは、可能だったのかもしれない。
そういえばワタクシ、星野源さんのこともよくわかっていません。
(秀忠公はいいね! 最高やね!! と思っていますが)

それでも、対価を払う、ある意味賭けのようなこころもちで、
お財布を開いて、ねえねえこれきっとあたりだよね、
とワクワクしたこと、胸弾ませて家に帰ってパッケージを開けたこと、
そういうかたちで彼(ら)に出会えて、夢中になって、
それからとてもとても幸福な体験をすることができたことは
いまでも『有難い』ことだと思う。

秋が深まってゆくこの季節に、いつも懐かしく思い出す、
秋にまつわる、若さにまつわる、もろもろのこと。
表参道のいちょう並木なんて全然イメージできなかったけど。

ネットで評判の、リオパラリンピック関連で
『トーキョーは夜の7時』
の動画をようやく観たので、勢い余って自分語り昔語り。
※リンクはこちら。NHKのサイトです。

オリンピックの間、なんとなくヘビロテしていたのはこちら。



福岡でバンド活動をしていた知人が
『最初から抜群にすごかった』
と言う林檎ちゃん。
百道浜も室見川もない街で、わたしもなんとか生きている。



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by chico_book | 2016-09-22 11:22 | 日々 | Comments(2)

Commented by pinochiko at 2016-09-22 12:01
百道浜と室見川。胸にズキュンときました。
お金がなく、若さだけで生きていた福岡在住時代、懐かしくて涙が出そうです。
百道浜にあるドームでバイトをしていて、同僚が室見川沿いのアパートに住んでいたのです。
彼女のアパートに集まって、みんなで料理作ったりしたなぁ。
カフェでのバイトだったのでみんなすごく食に興味があったのでした。
みんなどうしているかしらねぇ?

そんな素敵な彼女もどうしているでしょうね?
そういう出会いがその時にあったこと、そして今も大事に胸の中に思いが残っていること、
幸運ですねぇ。

小沢健二さんのLIFEは、大学4年の時ヘビロテして聞いてました。
夏休み、帰省してほとんど人がいなくなった寮で、大音量で聞きました。
今でも、僕らが食べに出る理由を聞くと、胸騒ぎがしますね。

星野源さんは、うそ太郎のイメージですね、私にとっては(笑)
あ、これもLIFEだな!
Commented by chico_book at 2016-09-23 01:42
コメントありがとうございます。

文中の川は、実は多々良川と御笠川なのです。
この川の名まえの味わい深さも、当時は
気づいていなかったなあ。
なので実は、百道浜とは真逆なのですが林檎ちゃんにあやかりたくて(照)
でも唐人町や西新や姪浜にも友人がいて、
ママチャリでちゃりちゃり出かけていきました。
百道浜の博物館も図書館も、ミニシアターも
大好きでした。
ひらたい街だからこそできたよね、なんて
横浜に住んでいると思います。

文中の彼女、実は短期間ですが
長野に住んでいたことがありまして、
なのでpinochikoさんからコメントいただけて
ますますうれしい(ぽっ)

若い時期のあれやこれや、
けっこう自分を支えているものだなあと思います。
いや若い時期に限らないかな。
結局明日のわたしはいまのわたしより
いちにち年老いているわけだし。

小沢健二さんのLIFE、本当に胸騒ぎがします。
あと宇多田さんのデビューアルバムも。
世の中にどれだけたくさんの人がそんな思いでいるのか。
ポップスターってすごいなあ、たいへんだなあ、
でもありがとう、と、いつも思います。
(靖幸ちゃんも! も!!)
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